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豊満なタイガーアイ
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タイガーアイは鉄分を含む岩石の隙間に産する鉱物です。発がん性を持つ青石綿が酸化分解して錆びた黄褐色になり、石英に置き換わってできるんだとか。
我が家には現在、五匹の愛猫がいますが、その中で一番最初にやってきたのは『姫』という猫でした。典型的なキジトラで、タイガーアイを思わせる色合いをしています。肉球は黒一色です。
色はタイガーアイだけれど、タイガー、つまり虎のような野性は母猫の胎内に置き忘れてきたような子で、ふくよかな体型とおっとりした性格の持ち主です。「蝶よ花よと可愛がるんだ」という私の意気込みから『姫』という名前になりました。
もともとは私が勤務していた薬局の常連さんが「あんた、猫飼わない?」と声をかけてきたのです。
「俺の友達が里親探してるんだけどさ、最後の一匹がなかなか決まらないんだ」
「オス? メス?」
「知らない。動物病院も連れて行ってないっていうし」
いやいや、おかしいべや。里親探してるくせにオスかメスかも把握してないってどういうことさ。と、北海道弁丸出しで突っ込み、常連さんにせめて写真を撮ってきてとお願いしました。
後日、常連さんが持ってきた写真にはソファの手すりにちょこんと座る姫の姿があったのです。
そのとき、本当に自分でもなぜかわかりませんが「この子はすぐに引き取らなきゃいけない」という気がしました。
実はそのとき、数ヶ月先に結婚を控えていた私は北海道から群馬県に引っ越す予定でした。それで当時はまだ恋人だった夫に「私の嫁入り道具は猫でよろしいか」とたずねると、猫好きの彼も快諾してくれたのでした。
さて、我が家にお迎えしてみると、子猫はメスであることがわかりました。同時に猫風邪をひいていることも判明。すぐに引き取るべきだと感じたのは、虫の知らせだったのでしょうか。風邪が治ってすっかり懐いた頃には、子猫もすっかり大きくなっていました。
そんな姫の一番の特徴は『必ずお返事をする』ということ。名前を呼ぶたびに、いちいち「にゃあ」とか「にゃおん」と一声鳴いてくれます。
その後産まれた息子が夜泣きをするときは、足元をオロオロうろつき、『鳴かないで』といわんばかりに心配そうな声で「にゃお」「にゃん」「にゃう」と繰り返し鳴いているのです。泣いているからと言ってお前まで鳴かなくてもよろしいと思いつつ、育児に挫けそうな心を懸命に励ましてくれている気がしてこちらが泣けてきました。猫がいるからここに居続けられる。そんな気さえするのです。
夫と暮らし始めたばかりの頃、姫は夫にまったく懐きませんでした。猫がやって来ると知った彼は毎晩のように「ようし、ようし。今日は何をしてたん? いい子だねぇ」とナデナデするイメージトレーニングを積んでいたそうですが、現実は姿を見ればサッと逃げられる始末。
とうとう、彼は猫缶という最終兵器(費用は夫のポケットマネーから捻出)を用いて距離を縮め、今ではお腹の上で寛いでくれるほどの信用を得たのでした。
そして猫缶をもらうという快楽を知った姫は、避妊手術の影響もあって、どんどん気ままなボディへと。今では見事にぼってりしたお腹で、上から見たシルエットはもうタワシです。私としては健康によくないので、もう少し痩せてほしいところです。体重、きちんと量ってみないとなぁ。
そうそう、体重と言えば、ある麻酔科医と談笑していたときのこと。
ダイエットしたいと話したところ、彼は「でも、あなた◯◯kgでしょ? それくらいが丁度いいよ」と見ただけで体重をぴたり当ててしまったことがあります。彼は「体重がわかってしまうのは職業病みたいなものだよ」と笑っていましたが、あの先生はうちの姫の体重も見抜けるのでしょうか。いつか再会できたらきいてみたいところです。
我が家には現在、五匹の愛猫がいますが、その中で一番最初にやってきたのは『姫』という猫でした。典型的なキジトラで、タイガーアイを思わせる色合いをしています。肉球は黒一色です。
色はタイガーアイだけれど、タイガー、つまり虎のような野性は母猫の胎内に置き忘れてきたような子で、ふくよかな体型とおっとりした性格の持ち主です。「蝶よ花よと可愛がるんだ」という私の意気込みから『姫』という名前になりました。
もともとは私が勤務していた薬局の常連さんが「あんた、猫飼わない?」と声をかけてきたのです。
「俺の友達が里親探してるんだけどさ、最後の一匹がなかなか決まらないんだ」
「オス? メス?」
「知らない。動物病院も連れて行ってないっていうし」
いやいや、おかしいべや。里親探してるくせにオスかメスかも把握してないってどういうことさ。と、北海道弁丸出しで突っ込み、常連さんにせめて写真を撮ってきてとお願いしました。
後日、常連さんが持ってきた写真にはソファの手すりにちょこんと座る姫の姿があったのです。
そのとき、本当に自分でもなぜかわかりませんが「この子はすぐに引き取らなきゃいけない」という気がしました。
実はそのとき、数ヶ月先に結婚を控えていた私は北海道から群馬県に引っ越す予定でした。それで当時はまだ恋人だった夫に「私の嫁入り道具は猫でよろしいか」とたずねると、猫好きの彼も快諾してくれたのでした。
さて、我が家にお迎えしてみると、子猫はメスであることがわかりました。同時に猫風邪をひいていることも判明。すぐに引き取るべきだと感じたのは、虫の知らせだったのでしょうか。風邪が治ってすっかり懐いた頃には、子猫もすっかり大きくなっていました。
そんな姫の一番の特徴は『必ずお返事をする』ということ。名前を呼ぶたびに、いちいち「にゃあ」とか「にゃおん」と一声鳴いてくれます。
その後産まれた息子が夜泣きをするときは、足元をオロオロうろつき、『鳴かないで』といわんばかりに心配そうな声で「にゃお」「にゃん」「にゃう」と繰り返し鳴いているのです。泣いているからと言ってお前まで鳴かなくてもよろしいと思いつつ、育児に挫けそうな心を懸命に励ましてくれている気がしてこちらが泣けてきました。猫がいるからここに居続けられる。そんな気さえするのです。
夫と暮らし始めたばかりの頃、姫は夫にまったく懐きませんでした。猫がやって来ると知った彼は毎晩のように「ようし、ようし。今日は何をしてたん? いい子だねぇ」とナデナデするイメージトレーニングを積んでいたそうですが、現実は姿を見ればサッと逃げられる始末。
とうとう、彼は猫缶という最終兵器(費用は夫のポケットマネーから捻出)を用いて距離を縮め、今ではお腹の上で寛いでくれるほどの信用を得たのでした。
そして猫缶をもらうという快楽を知った姫は、避妊手術の影響もあって、どんどん気ままなボディへと。今では見事にぼってりしたお腹で、上から見たシルエットはもうタワシです。私としては健康によくないので、もう少し痩せてほしいところです。体重、きちんと量ってみないとなぁ。
そうそう、体重と言えば、ある麻酔科医と談笑していたときのこと。
ダイエットしたいと話したところ、彼は「でも、あなた◯◯kgでしょ? それくらいが丁度いいよ」と見ただけで体重をぴたり当ててしまったことがあります。彼は「体重がわかってしまうのは職業病みたいなものだよ」と笑っていましたが、あの先生はうちの姫の体重も見抜けるのでしょうか。いつか再会できたらきいてみたいところです。
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