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第14話 吊り橋効果
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「アレクシアちゃんってまだ死にたくないよね?」
犬の威嚇するような声を聞いて、クレアさんは比較的冷静に私に問い掛けてくる。
「そ、そりゃ死にたい人なんていませんよ……」
街で得られた徳は1500程、つまりここで死ぬと2000の徳を失う。
5時間が無駄になるし……
道の脇からガルルルルと白い牙を剥いたオオカミが数匹が目の前に現れ、行き先の道を塞ぐ。後ろを振り返ると後ろにもオオカミが数匹いらっしゃっており、あとに戻ることもできない。
絶対絶命というのはこういう時に表現することなんだろう……
事も無げにクレアさんが私に告げる。
「僕が囮になるからアレクシアちゃんは逃げていいよ。僕は死んだって別にいいしね」
「駄目ですよ! また教育係が変わるのは嫌です! 」
「あーそっか……1日で2回も変わることになるもんね」
「そうですよ!! 」
オオカミはなんやかんやで前後に合わせて10匹はいる。武器も何もない私達に勝てる相手じゃない。
「クレアさん……戦って勝てない相手への対処方法って知ってますか?」
私がクレアさんに話しかけるとうんと頷く。
「僕は左に……」
「私は右に行きます」
「じゃあ合図は僕が」
「はい、任せます……」
ガルルルと1匹のオオカミがバネが縮んだかのような低い姿勢から一気に襲いかかってくる。
「今よ! 」
クレアさんの合図で私は道の右側の森へ走って逃げる。
こういう時は固まって逃げるよりもバラバラで逃げたほうがいい、オオカミも分散されるしどちらかが生き残る確率も高くなるはず。
追ってきている音が耳に入るが明らかにその音は減っている。これはゲームなんだからどこかであのオオカミ達も諦めるはず……
そんなことを考えていた瞬間、私の体は宙を舞う。
「え?」
暗がりで木の根っこか何かに足を引っ掛けたのだろう……地面に着地した私はゴロゴロと体が回転し木に体が当たって停止をする。
足を挫いたと視界に表示され、移動速度70%低下という説明書きが現れる。
終わった……クレアさんは逃げ切れたのかな……私のアレクシアの人生はここで終わりました。まあ始めて5時間だったし、まだまだやり直しができる。
これで徳100万とか積んでたら暫く寝込むだろうな。まあ今日はこのままログアウトして明日からまたやり直そう……
ガルルルという複数のオオカミの声が背後から聞こえる。私は木を背にしてオオカミの方を向く。
4匹程のオオカミが私を追ってきていたようで、そのうちの一匹が私に飛びかかろうとしたとき……
ヒュンと風を切る音が聞こえ、ギャンとオオカミが鳴くのと同時にオオカミの頭から矢羽が生え、そのまま地面に横たわる。
そしてカチャカチャと鉄と鉄がぶつかる音が聞こえ、オオカミ達はその音がする方を向く。私もその音がする方を向くと甲冑を纏った人が剣を抜いて走ってきているのが見えた。
そして一匹のオオカミがその甲冑姿の人に飛び掛かる。手に持っていた剣で飛びかかってきたオオカミを一突きにすると剣についた血を払う。後の2匹はそのままウーと低い唸り声をだしてその人を警戒している。
近くにやって来たその人の容姿は眉にかかるほどの長さの金髪で凛々しさと幼さが同居したような顔で高校生ぐらいの年齢に見えるが、その表情は牙を向くオオカミを前にしても全く怯まずに頼もしく見える。
ドキン……
え?……今、私……
胸が高鳴る感覚を覚える……ちょっとまて私、この子にドキってした? 今? 駄目だ駄目! 外見は男なんだ……もしNPCだったら男に胸がときめいたようなもの! それだけは有ってはならないこと。
なんか聞いたことある。吊り橋でドキドキするのを恋と錯覚することがあるって……確か吊り橋効果とかなんとか……だからこの胸の高鳴りは恋じゃなくてオオカミに襲われそうになってドキドキしてるだけ!
私が彼から視線をずらした瞬間、オオカミが飛びかかってくる。それを剣でスパーンと斬り伏せ、もう1匹のオオカミは後ずさりをしてそのまま夜の闇の中に消えていった。
「ふー」
オオカミが去ったのを確認してその人は一息を着く。そして振り返ってはにかんだような笑顔で私に話しかけてくる。
「お怪我はありませんか? 聖女様」
「……は、はい……」
私は頬が熱くなる感覚を覚え顔を伏せながら、ドキンドキンと高鳴る鼓動を感じながら答えた。
犬の威嚇するような声を聞いて、クレアさんは比較的冷静に私に問い掛けてくる。
「そ、そりゃ死にたい人なんていませんよ……」
街で得られた徳は1500程、つまりここで死ぬと2000の徳を失う。
5時間が無駄になるし……
道の脇からガルルルルと白い牙を剥いたオオカミが数匹が目の前に現れ、行き先の道を塞ぐ。後ろを振り返ると後ろにもオオカミが数匹いらっしゃっており、あとに戻ることもできない。
絶対絶命というのはこういう時に表現することなんだろう……
事も無げにクレアさんが私に告げる。
「僕が囮になるからアレクシアちゃんは逃げていいよ。僕は死んだって別にいいしね」
「駄目ですよ! また教育係が変わるのは嫌です! 」
「あーそっか……1日で2回も変わることになるもんね」
「そうですよ!! 」
オオカミはなんやかんやで前後に合わせて10匹はいる。武器も何もない私達に勝てる相手じゃない。
「クレアさん……戦って勝てない相手への対処方法って知ってますか?」
私がクレアさんに話しかけるとうんと頷く。
「僕は左に……」
「私は右に行きます」
「じゃあ合図は僕が」
「はい、任せます……」
ガルルルと1匹のオオカミがバネが縮んだかのような低い姿勢から一気に襲いかかってくる。
「今よ! 」
クレアさんの合図で私は道の右側の森へ走って逃げる。
こういう時は固まって逃げるよりもバラバラで逃げたほうがいい、オオカミも分散されるしどちらかが生き残る確率も高くなるはず。
追ってきている音が耳に入るが明らかにその音は減っている。これはゲームなんだからどこかであのオオカミ達も諦めるはず……
そんなことを考えていた瞬間、私の体は宙を舞う。
「え?」
暗がりで木の根っこか何かに足を引っ掛けたのだろう……地面に着地した私はゴロゴロと体が回転し木に体が当たって停止をする。
足を挫いたと視界に表示され、移動速度70%低下という説明書きが現れる。
終わった……クレアさんは逃げ切れたのかな……私のアレクシアの人生はここで終わりました。まあ始めて5時間だったし、まだまだやり直しができる。
これで徳100万とか積んでたら暫く寝込むだろうな。まあ今日はこのままログアウトして明日からまたやり直そう……
ガルルルという複数のオオカミの声が背後から聞こえる。私は木を背にしてオオカミの方を向く。
4匹程のオオカミが私を追ってきていたようで、そのうちの一匹が私に飛びかかろうとしたとき……
ヒュンと風を切る音が聞こえ、ギャンとオオカミが鳴くのと同時にオオカミの頭から矢羽が生え、そのまま地面に横たわる。
そしてカチャカチャと鉄と鉄がぶつかる音が聞こえ、オオカミ達はその音がする方を向く。私もその音がする方を向くと甲冑を纏った人が剣を抜いて走ってきているのが見えた。
そして一匹のオオカミがその甲冑姿の人に飛び掛かる。手に持っていた剣で飛びかかってきたオオカミを一突きにすると剣についた血を払う。後の2匹はそのままウーと低い唸り声をだしてその人を警戒している。
近くにやって来たその人の容姿は眉にかかるほどの長さの金髪で凛々しさと幼さが同居したような顔で高校生ぐらいの年齢に見えるが、その表情は牙を向くオオカミを前にしても全く怯まずに頼もしく見える。
ドキン……
え?……今、私……
胸が高鳴る感覚を覚える……ちょっとまて私、この子にドキってした? 今? 駄目だ駄目! 外見は男なんだ……もしNPCだったら男に胸がときめいたようなもの! それだけは有ってはならないこと。
なんか聞いたことある。吊り橋でドキドキするのを恋と錯覚することがあるって……確か吊り橋効果とかなんとか……だからこの胸の高鳴りは恋じゃなくてオオカミに襲われそうになってドキドキしてるだけ!
私が彼から視線をずらした瞬間、オオカミが飛びかかってくる。それを剣でスパーンと斬り伏せ、もう1匹のオオカミは後ずさりをしてそのまま夜の闇の中に消えていった。
「ふー」
オオカミが去ったのを確認してその人は一息を着く。そして振り返ってはにかんだような笑顔で私に話しかけてくる。
「お怪我はありませんか? 聖女様」
「……は、はい……」
私は頬が熱くなる感覚を覚え顔を伏せながら、ドキンドキンと高鳴る鼓動を感じながら答えた。
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