21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

文字の大きさ
14 / 120
第2章 騎士学校

第14話 20代目の剣聖

しおりを挟む
 校長室に二人で戻りシャウラが扉をノックする。
「どうぞ」
 中から校長の声が聞こえる。

 扉を開けると校長の机の前に白色で縁が青色の裾が長い外套を着た人の後ろ姿がある。その人がこちらを振り返る。肩まで伸びたブラウンの髪、その顔は精幹な顔つきで顎には無精ひげが生え、30代前半に思える外見。そして外套の胸にはアルファルドの手紙に入っていたような剣の形をした徽章が付けられている。

 その男は俺を見て
「この子が校長の言っていた子?」
 と校長に話しかける。
「そう、アルファルドの弟子だ」

 一方のシャウラはその白い外套の男を見るなり直立不動になり、緊張した面持ちをしている。
 俺はシャウラに小声で話しかける。
「あれだれ?」
「…剣聖様」
「へぇぇあれが」
 すると校長が声を掛ける。
「そんなところにいないで早く入ってきなさい」

 シャウラは固まって動かないので俺だけ校長室に入る。
 校長はシャウラに話しかける。
「あー君は教室に帰っていいよ。ありがとう」

 シャウラは膝を曲げず硬い動きのまま校長室の前から去っていった。
 シャウラそ見届けて、校長室の扉を閉め振り返ると、目の前に剣聖がいた。

 なんだこいつ!?

 咄嗟に横に飛びくるりと回転し片膝をついて着地する。

 パチパチパチ
 剣聖といわれた男はそれを見て拍手をしている。
「いい反応だ、さすがアルファルドの弟子だ」
 何の気配も感じなかった…もし奴が俺を斬るつもりであれば…
 俺は剣聖といわれた男をギロリと睨みつける。

「そんな怖い顔しないでよー前剣聖のお弟子さん」
 校長の声が響く。
「こら!レグルス揶揄からかうな」
「すいません。ついつい」
 立ち上がるとレグルスという名の男は俺に右手を差し出してきて
「俺は第20代剣聖、レグルス・フェルトだ。よろしく」
 と爽やかな笑顔をみせている。
 さっきの気配を殺して接近されたことに腹を立てていたため、俺は握手には応じず、ぶっきらぼうに名前だけを伝える。
「ラグウェル・アルタイル」
「まだ怒ってるの?ごめんね君を試すようなことしちゃって、君があのアルファルドの弟子って聞いてどれほどのものか試したくなってね」
「…」
 レグルスはすっと真顔になり俺に耳打ちをする。
「君はまだまだ僕には及ばない、剣聖には程遠いかな」

 シャーンという音が校長室に響き俺は鞘から剣を抜き、剣身をレグルスの首元にピタリとつける。剣聖は瞬き一つせず悠然としている。
「君は僕を斬らない、そんなことぐらいはわかるよ」
「それはどうかな…」

「もし君が僕を斬るつもりだったら君の首が床に転がっていただろうけどね」
 その男は極めて冷ややかな目で俺の事を見ている。
 俺は剣を鞘に戻どし右手を差し出す。

「やっと握手してくれるんだね、ラグウェル君」
 そういってレグルスも右手を出し握手をする。
「あ!用事あるの忘れてた!」
 そう言ってレグルスは校長室から慌てて出ていく。

 なんなんだあいつ…俺はほんのりと手が汗ばんでいることに気が付いた。

 校長が話し出す。
「すまんのぉあいつのいたずら好きには困ったものだ」
「いえ…」
「しかしあいつの強さは本物だ、君もそれを感じたんじゃないか?」

 確かにあいつにはアルファルドとはまた違うものを感じた。

「あいつと戦える日が待ち遠しいです」
「そうだな近い将来必ずレグルスがお前の前に立ちふさがるだろうな」

 校長の机の上には真新しい青い制服が置かれている。
「そうそうこれが本題だった」
 そういって校長は机の制服を俺に渡す。
「着てみて」
「はい」
 俺はボロ布でできた外套と鎖帷子を脱ぎ、真新しい制服に袖を通す。
 詰襟の制服は首元が苦しい、俺はそのため上のボタンを外す。
「ダメダメ、全部しなきゃ」
 校長に促され、俺は嫌々一番上のボタンを留める。

「あと住むところだけど、寮に一部屋空きがあるからそこに決めたから」
「ありがとうございます」
「それじゃ君の教室に案内する」
 2人で校長室を出て校長の後を歩いていく。中庭の見える廊下を通っていき校長が戸の前で止まりガラッと戸を開ける。

 手招きをして、黒い髪を短く刈りこんだみメガネの痩せ型の男が出てくる。
 校長は俺の顔をみて、出てきた人物の紹介を始める。
「彼はこのクラス担当のロンド」
 校長はロンドに説明を始める。
「彼がさっき説明した編入生のラグウェル」
「あー彼が……よろしくお願いしますねラグウェル」
「こちらこそよろしく」
 ロンドに促され教室に入ると教室は階段状になりどこからでも教壇が見えるようになっている。

 席を見渡すと端にはアタリア、そしてど真ん中にシャウラが腰をかけていた。

 ◇◆◇

 レグルスは校長室から平然とした様子で退室した。そして数歩歩くと急に膝が笑い出し片膝をつき、数秒後にはすぐに立ちあがり廊下を速足で歩く。

 外に待たせてある馬車に乗ろうとすると運転手が話しかけてくる。
「凄く嬉しそうですね」
「そうか?」
 レグルスは馬車に乗り、右手を見る。その手は微かに震えており、レグルスは1人呟いた。

「嬉しい?違うな。俺は怖くてたまらないんだ。あの少年と近い将来戦うことになるのが……」


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...