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第3章 鴉
第65話 休息
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…暇だ。
壁に帰還して3日が経った。
俺は暇を持て余し医務室の天井の模様をぼーっと眺めている。そうするとガチャっと扉が開く音がした。
さーっと引かれたカーテンが開く音がする。
黒い外套に少しだけ雪がついたリリカの姿があった。
リリカはぶっきらぼうに話し始める。
「遅くなってすまない。色々と報告しなければいけないことがあってな」
「いえ、着てくれるとは思ってなくて」
俺がそういうとムッとしたような表情をし
「お前は命の恩人だ。命の恩人見舞わないやつがいるか!」
「す、すいません…」
ハッした表情をみせたリリカは
「いや、こちらこそ気を使わせたな、手ぶらで見舞いというわけにもいかんからな」
リリカはそう言ってベッドの横にある椅子に座り、手に持っていた紙袋りんごを取り出して皮をナイフで丁寧に剥き始めた。
「今日、補給物資が来たからな」
手際よくりんごの皮を剥き、4等分しベッドの横にある床頭台に置いてあった皿にりんごを乗せる。
「どうぞ」
りんごが乗った皿を俺に手渡し、椅子に戻る。
「ありがとうございます」
俺は4等分されたりんごの一つを手で掴み口の中に放り込む。
りんごの甘い果汁が口の中に広がっていく。
「美味しいです。ありがとうごいます!」
「ふふ、そんなに喜んでもらえるとはな、持ってきて甲斐があったな。まだあるからな」
そういって紙袋を床頭台の上に置く。
リリカは真剣な表情をみせ話し始める
「今回の件、騎士団本部に書簡を送った。壁が突破される危機的な状況に陥る可能性があると」
「増員ですか?」
「ああ…しかし中央は祖人について知らないものも多い。私の進言は恐らく通らない」
「え…」
「それはいつものことだ。我々はこの限られた人員でやるしかない」
リリカは悔しさを滲ませるわけでもなく、あっさりとした表情でそのまま立ち上がり
「それじゃ私は仕事が残っているのでな」
くるりと背を向け
「しっかり休めよ」
そう言って医務室から出ていった。
副長のあの感じ…もう諦めているというような感じだったな…今までに何度も騎士団本部に意見をしては突っぱねられてきたんだろう…
――3日後
「どうじゃ?」
白衣を着た白髪の老人が話しかけてくる。
「もう全然平気です」
俺はそう言ってベッドからおりて立ち上がると、トントンと軽く飛び跳ねてみせる。
「もう大丈夫そうじゃな」
俺は声を弾ませ
「だったらもう!」
「うむ。もう寝てる必要もないじゃろう」
「やったーーー!」
「なんじゃそんなに寝ておるのがいやか?」
「天井の模様はもう見飽きました」
そう言って俺は、側にあった黒い革の服を纏い、黒い毛皮の付いた外套を羽織る。
「ありがとうございました!」
「うむ…無理はするなとは言わん。また怪我をしたら治してやるからのぉ」
「はい!」
医務室を後にして、真っ先に副長の部屋に向かう。
その途中アルクが遠くから歩いてきているのが見える。
「おっ!やっと復帰か」
「ええ、この1週間地獄でした」
「あはは、まあゆっくり寝てたほうが良かったと思えるぐらいこき使ってやっから」
「お願いします!」
「副長のとこに行くのか?」
「はい。報告に」
「じゃあ、終わったら食堂にこい」
俺は頷くとアルクと別れ副長のもとに向かう。
木製のドアをノックすると中から返事がある。
ガチャとドアを開くと机に向かうリリカの姿がある。
書類から目を離し、こちらを向いて話しかけてくる。
「今日から復帰か」
「はい、よろしくおねがいします!りんごありがとうございました」
リリカは笑顔を見せ、立ち上がり
「それじゃ一緒に食堂に行くか」
部屋を後にした。
食堂の扉の前でリリカは立ち止まり
「お前が扉を開けろ」
軽く頷き、観音開きの扉を開く。
以前に見たときは広い食堂に整然と椅子と長机がおかれていたが、俺が扉を開くと歓声が上がる。
「え?」
俺は困惑し後ろを向きリリカの顔を見る。
「お前は私達を救った英雄だからな。快気祝いだよ」
「ありがとうございます」
俺は照れながらアルクに案内され席につく。
アルクが声を張り上げる。
「こいつは新入りながら、祖人との決闘に大怪我をおいながらも勝ち、副長とバルジの命を救ったまさに鴉の英雄だ!新入りいやラグウェルを讃えて今日は飲もう!!」
「さあ、立ち上がって」
アルクに促され立ち上がる。
食堂にいる100人前後の人間の視線が一斉に俺に集まっているのがわかる。
「なんと言えば…」
「え?きこえねーぞー」
嫌味のないヤジが聞こえる。
治ったばかりの腹に力を入れ、渾身の大声を出す
「わざわざ俺のために、こんな機会を作ってありがとうございます!!でも俺がもっと強ければこんな怪我なんてせずに副長もバルジさんも危険な目にあわせることがなかったと思います…俺はもっともっとここで強くなります!!」
一瞬の静寂が場を包む。
パチパチパチ
リリカが手を叩いているが見えた。その瞬間割れんばかりの拍手に包まれ、再びアルクが声を張り上げる。
「それじゃ副長、乾杯の音頭を」
リリカが木のジョッキを持って立ち上がり
「ラグウェルの全快とその未来を祝し、そして我々ウィンタール防衛部隊の明るい前途を願って」
言い終わると食堂にいる全員がジョッキを持ち上げる。そしてリリカが
「乾杯」
「乾杯!!」
リリカの言葉に合わせて、全員がジョッキを掲げ、中に注がれた酒をみな飲む。
それからはかたっ苦しい挨拶などはなく、限られた物資の中でつくられた旨い料理と酒で宴会が始まった。
壁に帰還して3日が経った。
俺は暇を持て余し医務室の天井の模様をぼーっと眺めている。そうするとガチャっと扉が開く音がした。
さーっと引かれたカーテンが開く音がする。
黒い外套に少しだけ雪がついたリリカの姿があった。
リリカはぶっきらぼうに話し始める。
「遅くなってすまない。色々と報告しなければいけないことがあってな」
「いえ、着てくれるとは思ってなくて」
俺がそういうとムッとしたような表情をし
「お前は命の恩人だ。命の恩人見舞わないやつがいるか!」
「す、すいません…」
ハッした表情をみせたリリカは
「いや、こちらこそ気を使わせたな、手ぶらで見舞いというわけにもいかんからな」
リリカはそう言ってベッドの横にある椅子に座り、手に持っていた紙袋りんごを取り出して皮をナイフで丁寧に剥き始めた。
「今日、補給物資が来たからな」
手際よくりんごの皮を剥き、4等分しベッドの横にある床頭台に置いてあった皿にりんごを乗せる。
「どうぞ」
りんごが乗った皿を俺に手渡し、椅子に戻る。
「ありがとうございます」
俺は4等分されたりんごの一つを手で掴み口の中に放り込む。
りんごの甘い果汁が口の中に広がっていく。
「美味しいです。ありがとうごいます!」
「ふふ、そんなに喜んでもらえるとはな、持ってきて甲斐があったな。まだあるからな」
そういって紙袋を床頭台の上に置く。
リリカは真剣な表情をみせ話し始める
「今回の件、騎士団本部に書簡を送った。壁が突破される危機的な状況に陥る可能性があると」
「増員ですか?」
「ああ…しかし中央は祖人について知らないものも多い。私の進言は恐らく通らない」
「え…」
「それはいつものことだ。我々はこの限られた人員でやるしかない」
リリカは悔しさを滲ませるわけでもなく、あっさりとした表情でそのまま立ち上がり
「それじゃ私は仕事が残っているのでな」
くるりと背を向け
「しっかり休めよ」
そう言って医務室から出ていった。
副長のあの感じ…もう諦めているというような感じだったな…今までに何度も騎士団本部に意見をしては突っぱねられてきたんだろう…
――3日後
「どうじゃ?」
白衣を着た白髪の老人が話しかけてくる。
「もう全然平気です」
俺はそう言ってベッドからおりて立ち上がると、トントンと軽く飛び跳ねてみせる。
「もう大丈夫そうじゃな」
俺は声を弾ませ
「だったらもう!」
「うむ。もう寝てる必要もないじゃろう」
「やったーーー!」
「なんじゃそんなに寝ておるのがいやか?」
「天井の模様はもう見飽きました」
そう言って俺は、側にあった黒い革の服を纏い、黒い毛皮の付いた外套を羽織る。
「ありがとうございました!」
「うむ…無理はするなとは言わん。また怪我をしたら治してやるからのぉ」
「はい!」
医務室を後にして、真っ先に副長の部屋に向かう。
その途中アルクが遠くから歩いてきているのが見える。
「おっ!やっと復帰か」
「ええ、この1週間地獄でした」
「あはは、まあゆっくり寝てたほうが良かったと思えるぐらいこき使ってやっから」
「お願いします!」
「副長のとこに行くのか?」
「はい。報告に」
「じゃあ、終わったら食堂にこい」
俺は頷くとアルクと別れ副長のもとに向かう。
木製のドアをノックすると中から返事がある。
ガチャとドアを開くと机に向かうリリカの姿がある。
書類から目を離し、こちらを向いて話しかけてくる。
「今日から復帰か」
「はい、よろしくおねがいします!りんごありがとうございました」
リリカは笑顔を見せ、立ち上がり
「それじゃ一緒に食堂に行くか」
部屋を後にした。
食堂の扉の前でリリカは立ち止まり
「お前が扉を開けろ」
軽く頷き、観音開きの扉を開く。
以前に見たときは広い食堂に整然と椅子と長机がおかれていたが、俺が扉を開くと歓声が上がる。
「え?」
俺は困惑し後ろを向きリリカの顔を見る。
「お前は私達を救った英雄だからな。快気祝いだよ」
「ありがとうございます」
俺は照れながらアルクに案内され席につく。
アルクが声を張り上げる。
「こいつは新入りながら、祖人との決闘に大怪我をおいながらも勝ち、副長とバルジの命を救ったまさに鴉の英雄だ!新入りいやラグウェルを讃えて今日は飲もう!!」
「さあ、立ち上がって」
アルクに促され立ち上がる。
食堂にいる100人前後の人間の視線が一斉に俺に集まっているのがわかる。
「なんと言えば…」
「え?きこえねーぞー」
嫌味のないヤジが聞こえる。
治ったばかりの腹に力を入れ、渾身の大声を出す
「わざわざ俺のために、こんな機会を作ってありがとうございます!!でも俺がもっと強ければこんな怪我なんてせずに副長もバルジさんも危険な目にあわせることがなかったと思います…俺はもっともっとここで強くなります!!」
一瞬の静寂が場を包む。
パチパチパチ
リリカが手を叩いているが見えた。その瞬間割れんばかりの拍手に包まれ、再びアルクが声を張り上げる。
「それじゃ副長、乾杯の音頭を」
リリカが木のジョッキを持って立ち上がり
「ラグウェルの全快とその未来を祝し、そして我々ウィンタール防衛部隊の明るい前途を願って」
言い終わると食堂にいる全員がジョッキを持ち上げる。そしてリリカが
「乾杯」
「乾杯!!」
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