21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第3章 鴉

第69話 地上へ

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 岩を積み上げて作られた壁である。その壁は手や足を掛けるに充分な突きで出た部分がある。剣にぶら下がっていた俺は、足をかけることができる部分を見つけ足を置き剣を壁から引き抜き鞘に収める。そして壁に張り付くような形になる。

 縄の方をみると、祖人たちは縄を使っておりていくのが見えるが、それにむかって下からは矢を放っている。縄で降りるのは危険だ…
 しかしこのままここに居るわけにも…

 いつの間にか風が止まり、夜空に星がみえていることに気がつく。その空に向かって祖人達が飛び出すのが見えた。

 そして大きな傘のような布が開きそこに吊るされるような形で祖人達はゆらゆらと揺れる木の葉のように下に降りていく。
 そうか…風がやんだから降下方法を切り替えたんだ…

 俺の目の前を傘を広げた祖人が降りていく。次から次へと…

 あれを使うしかない…か…

 体を壁ぎりぎりにひっつけて、思いっきり勢いをつけ壁を押す。俺の体は再び宙を舞う。

 届け!届け!無我夢中で右手を伸ばす。
 死にものぐるいで、舞い降りる布の端を掴む。布が下に引っ張られ、縄にぶら下がっていた祖人が目の前に現れる。

 そして俺はそのまま祖人の首を股で挟み、思っきり首を捻る。ゴキゴキという骨が砕ける音ととも降下していた祖人はそのまま動かなくなる。
 その祖人を股で挟み込んだまま、降下を続ける。
 地上では仲間たちが次から次へと押し寄せてくる祖人たちに為す術もなく、傷つき倒れていくのが見える。

 早く早く…

 よし!この高さなら!
 数分降下し、地上まで数メートルという高さまで降りてきた。

 眼下に祖人に囲まれた仲間の姿が見えた。
 傘からそのまま地上に向けて飛びだす。

 ものの数秒で足に衝撃を感じる、その衝撃で石畳の隙間に入っていた雪が舞い上がる。

 膝を瞬間的に曲げて衝撃を殺し、そのまま剣を抜き曲げた膝を伸ばして、弾むように飛び上がる。周囲を祖人に囲まれ、絶望しヘタリ込むように座りんだ鴉の仲間を助けるために。

 囲まれた男と目が合う。死を悟った者の目に希望の光が差し込んだように見えた。

 着地と同時に、背後から祖人を袈裟斬りする。それに気がついた周囲4、5人の祖人達が一斉に俺の方を向き、手に持った斧を振りかぶり飛び掛ってくる。

 相手の動きに合わせ右に左に動き、剣を振り喉や胸を斬られその場で血を吹き出しながら倒れる祖人達。

 そして俺は飛び上がり剣を振り下ろし目の前にいた最後の祖人を倒し、キョロキョロと周囲を伺う。次々と舞い降りてくる祖人たちは壁に沿って作られた石造りの建物の中に入っていく。

 座りこんだ仲間に手を差し伸べ物陰に隠れる
「いったい何が起こったんだ…非常事態の鐘がなったと思ったら祖人達が大勢やってきて…」
 憔悴したような表情でボソッ呟く。
「祖人が…大勢の祖人が壁を乗り越えてきました…俺が見たのはただそれだけです……」
「…なんだと…壁が突破されたのか…」
「はい…」
 その男は頭を抱え
「もうダメだ…壁は突破された…俺は俺は死にたくない!!!」
 男は突如、狂乱したような状態になり立ちあがり喚き散らす。

「だめです!早く身を隠して!」
 俺の言葉も届かず、そのまま走り出す。すると矢が1本背中に刺さった瞬間、ハリネズミの背中のように矢が背中一面に刺さり、バタリとその場に倒れ込んだ。


 身を屈めて、建物の方に走り出す。ヒュン、ヒュンと空気を斬る音が聞こえ矢が体をかすめて行く。
 どこに?副長たちはどこに!

 周囲を伺うがそれらしき姿はない。

 城の中庭の方から、声が聞こえてくる。
「立て直すぞ!ここが踏ん張りどころだ!!」
 その声は仲間たちを鼓舞する副長の声。

 中庭!!

 そうか祖人たちが入っていく建物は中庭に通じている…そして中庭を抜けると、地下道を開く門がある…

 ここを突破されると15万もの祖人がなだれ込んでくる…

 中庭に行くしかない!!

 中庭へのルートを思い描く。祖人たちは一直線に中庭に向かっている。ということは他のところからであれば…

 西の見張り塔へ走り出す。見張り塔とは呼ばれているが、ウィンタール側を監視するために作られている塔のため重要な拠点とは言えず、人もいない。

 この塔からなら屋根を伝って行けば中庭に行ける。

 途中祖人に遭遇することもなく、西の見張り塔の頂上に立つ。頂上から中庭の方をみると、揺れる炎の中、戦っている姿が見える。

 頂上から屋根に飛び移る。屋根の上をタタタタと軽快に走る。

 見えた!!

 走る先に祖人たちと必死に戦っている仲間の姿がみえた。

 そのまま剣を振りかぶりながら飛び込むようにジャンプし、数メートル落下しながら祖人を斬りつける。血を吹き出しながら倒れる祖人の向こう側にリリカの姿が見え
「すいません。遅くなりました」
 そう声を掛けると
「ああ、全くだ遅かったな」
 一瞬だけ笑顔をみせ、俺の首をかすめるように剣を突き立てる。俺が振り返ると斧を振りかぶった祖人の頭をリリカの剣が貫いていた。






















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