21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第3章 鴉

第70話 地下水脈

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 ドン、ドンという音とともに目の前の扉が揺れる。

 俺がやってきたころはまだ前線は中庭であったが、数に押され徐々に後退し数時間後には地下道に通じる通路まで後退を余儀なくされた。目の前にある扉…これが突破され、戦端が開かれればもう俺たちを守ってくれる扉はない…ここにいるのは20人程度の人員のみ。扉の揺れは激しくなり、絶え間なく揺れるようになる。もうあと1時間も持たない。疲労しきった仲間達の顔に諦めの表情が浮かぶ。

「死んでも通すな!ここは死守する!」
 リリカが声を張り上げ、味方を鼓舞する。
 みな黙り込みうなだれている。皆わかっているのだこの先のことを…

 王都からここまで来るのにはどんなに急いでも4日は掛かる。伝書鳥を使い危機を伝えたとしても、軍を編成し移動をする。3,4日でできることはでない。今すぐにでも増援がくるのではないのだ…

 つまり俺たちは勝ち目のない戦いをすることになる。

「…副長…」
 そんな中、アルクの声が響く。
「あなたは生きてください…そして反撃を…」
 バルジが立ち上がり、リリカの体を抱き上げる。
「おい!何をする!!離せ上官のいうことが聞けないのか!!!」
 アルクは俺の方にやってきて
「ラグウェル…副長を頼む…」
 ドンと俺の胸を叩いた。

 アルクの考えはすぐに分かった。
 副長さえ生きていれば、反撃することができると…祖人のことを一番理解し、そして一番憎んでいる副長なら必ずや敵を取ってくれるはずだということを。

 俺は振り絞るように声を出す。
「一緒に…一緒に行きましょう…」
「わかってんだろ?そりゃ無理だ」

 …ここから出るには地下水脈に飛び込む形になる。その地下水脈へ通じる場所は外側からしかしめることができない。つまり追っ手を撒くためにもだれかが扉を閉める必要がある。
「で、でも…」
「副長のことを頼む…お前が支えてやってくれ…」
 俺はアルクの決意の前に何も言えず、ただただ頷くことしかできなかった。

「よっしゃそれじゃ行くぞ。いくらバルジでも副長をずっと抑えるのは大変だろうしな」
 20人ほどの仲間達と一緒に地下道に向かう。

「離せ!バルジ!!離さぬなら叩き斬るぞ」
 リリカは手足をバタつかせ初めて取り乱したような声を出し、バルジに抱えられながら地下道に向かう。地下道の大きな岩の前に立つ。そしてアルクが岩を動かすとその下には穴が開いており、真っ暗な中ゴーゴーと水が流れる音が聞こえる。

 リリカはもう何も言わず、黙ってアルクの方を見た。
 アルクはそっと目を逸し、バルジはリリカを地下水脈に投げ込む。ついで俺が地下水脈に飛び込む。
 真っ暗中を流れに逆らうことができるような水量ではなくあっというまに地下道の明かりが小さくなるほどの速度で流されていく。

 この地下水脈はウィンタールの街の外れにある川に続いている。

 そして流れて行く先の光が見えてきた。

 ――地下道

 アルクとバルジが地下道に残っている。他の仲間達はも副長の後を追って地下水脈に飛び込み残ったのは2人。
「バルジ、お前も行けよ」
「俺は…残る…お前と一緒に」
「おお、まさかお前が喋るとは」
「…」
「ありがとよ…バルジ」
 アルクがそう言うとバルジは岩を動かして、穴に蓋をする。

 そして二人は通路の扉の前に立ち、アルクはナイフを両手にバルジは岩の様な大剣を持つ。
 通路の扉は徐々に砕けており、向こう側で石斧を振り上げ扉を壊そうとしている祖人達が見える。

「なあ、バルジ何人倒せるか競争しようぜ」
 バルジはコクリと頷く。

 そして扉が砕ける。

「じゃあ、勝ったほうが酒を奢れよ」
 アルクはバルジにそう言ってなだれ込んでくる祖人に斬りかかる。バルジも負けずにその後を追うように岩のような大剣を振りかぶりながら祖人に斬りかかった。



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