21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第4章 21代目の剣聖

第91話 任命式

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 ムルジム校長がレグルスの側に駆け寄り抱き上げ首を横に振る。

 呆然と立ち尽くす俺にアルファルドは真剣な表情で話しかけてくる。
「ちゃんと受け取ったか?」
「……ああ……」
 俺はただその一言を言うことが精一杯だった。

 道場の扉が開かれ、外にいた騎士達がわっと中に入ってくる。レグルスの様子をみて涙を堪えるような素振りを見せる騎士の姿も見える。俺を睨みつけてくる騎士の姿もある。

 アルファルドがその姿をみて俺に話しかけてくる。
「あの騎士達もいずれわかる。お前達がどんな思いで戦ったかということをな。21代剣聖、ラグウェル・アルタイル胸を張れ!」

 俺は黙って頷きながら頬を流れるものを熱いものを感じた。

 そして騎士達はレグルスの亡骸を抱き上げ連れ出す。俺は頭を下げそれを見送った。

 ――3日後

 旅支度をしたアルファルドに俺は話しかける。
「もう発つのか? 一緒にこっちに居ても……」
「あーやっぱり俺にここの空気は合わねぇよ。向こうでまたのんびりやっていくわ。お前も時間が空いたらこっちに遊びに来い」
「そんな時間ねぇよ」
「騎士と剣聖、両立させるつもりか?」
「ああ、レグルスの意思を継ぐつもりだ。あいつと同じことはできないかもしれないけど、少しでも近づきたい」

 少し寂しそうな表情を見せるアルファルド。
「そうか……まあまた遊びに来るわ」
「うん。その時は又一緒に飲もう」
「それじゃあな。師匠に並んだ弟子よ」
「もう師匠を超えたけどな」
 俺がそう言って笑うと
「まだ並んだだけだ」
 そう言ってアルファルドは背を向け右手上げて世界の果てへ発った。

 ――3ヶ月後

「それじゃこれに着替えてください」
 騎士団の黒い制服を来ている俺に宮殿の執事がそう話しかける。

 今日は剣聖としての初めての仕事。そう剣聖の任命式ということだ。剣聖に与えられる真っ白な衣装に袖を通す。
 戦場でもこの服を来て戦うのが剣聖としての慣わしで、一番目立ち一番の戦果を挙げることで兵士達を鼓舞するという意味があるらしい。

 この真新しい真っ白な衣装に身を包み任命式が行われる玉座の間に向かう。

 玉座の間に通じる扉の前で数分待たされると、扉が開くと一番奥に玉座に金の王冠を被った立派な髭を蓄えた恰幅のいい男が座っている。

 その脇にはきらびやかな格好をした貴族や騎士団団長や幹部の姿などがある。

 そして国王の近くに一際目立つ、青いドレスを纏った美しい女性と端正に整った顔をした男性がいる。お似合いの美男美女という感じでその女性と目が合うとニコッと微笑む。数年ぶりに顔を合わせるマーフ。その笑顔はどこか儚げな感じを覚える。

 そして俺は国王の前にひざまずく。
「面を上げい」
 国王の号令で顔をあげる。

「剣聖を賭けたその試合、大変見事であったと立会人を務めたムルジムより報告を受けた」
「はい」
「よってここ貴公を21代目剣聖として剣聖徽章を授ける」
「身に余る光栄です」

 国王はその玉座から立ち上がり、俺の前に進み、執事から剣聖徽章を受け取るとそれを俺の胸に差す。

「この時をもってラグウェル・アルタイルは十王国、剣聖とする!!」
 国王の側近の一人がそう叫ぶと玉座の間は拍手喝采に包まれた。

 その時だったドーンという音ともに玉座の間の扉開かれる。

 それは血塗れの甲冑を纏った騎士が護衛の騎士に制止されているにも関わらず、ドアをこじ開け叫ぶ。
「国王!!私はガルダイン卿の騎士です!どうか…どうかお話を!!!」

 側近の一人が嗜める。
「ガルダイン公爵は騎士の教育もできないと見える。この場にそぐわないそのような格好で来られるとは……そもそも今回の式典ガルダイン卿も参加するのが道理ではないのか?」
「無礼は承知です! ですがこのままでは国そのものが無くなる事態故に無礼にはご容赦を!!」

 国王は呆れたような表情をしている。しかしその騎士はそのまま話を続ける。
「ペンタグラムが!!ペンタグラムが国境を越え進軍を開始しました……」

 周囲の人間はそんな馬鹿なというような表情を見せ国王も馬鹿にしたような表情をしている。
「ガルダイン卿め、遅刻した言い訳それとは」
 そういって周囲の笑いを誘っている。

 騎士はそれでも必死に訴える。
「巨石城は傀儡兵に囲まれ、わずか半日で陥落……ガルダイン卿は居城とともに……私めはそれを国王に伝えるようにと……」

 全く信じようともしない国王に奥から現れた一人の男が国王に耳打ちをする。するとそれまでその騎士を馬鹿にしていよな笑みを浮かべていた顔は血の気のひいた真顔になった。

 そしてその男が小さな丸い水晶のようなものを玉座前に置いた。

 するとどこか懐かしさを感じる顔をした肩まで伸びた美しい銀髪の美少女が現れる。そして高らかに宣言をする。

「私はペンタグラムの元首スピカ・アルタイル。これよりペンタグラムは宗主国として十王国を接収します。ただちに明け渡しなさい。それができないのであれば我々は武力を行使します」

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