91 / 120
第4章 21代目の剣聖
第91話 任命式
しおりを挟む
ムルジム校長がレグルスの側に駆け寄り抱き上げ首を横に振る。
呆然と立ち尽くす俺にアルファルドは真剣な表情で話しかけてくる。
「ちゃんと受け取ったか?」
「……ああ……」
俺はただその一言を言うことが精一杯だった。
道場の扉が開かれ、外にいた騎士達がわっと中に入ってくる。レグルスの様子をみて涙を堪えるような素振りを見せる騎士の姿も見える。俺を睨みつけてくる騎士の姿もある。
アルファルドがその姿をみて俺に話しかけてくる。
「あの騎士達もいずれわかる。お前達がどんな思いで戦ったかということをな。21代剣聖、ラグウェル・アルタイル胸を張れ!」
俺は黙って頷きながら頬を流れるものを熱いものを感じた。
そして騎士達はレグルスの亡骸を抱き上げ連れ出す。俺は頭を下げそれを見送った。
――3日後
旅支度をしたアルファルドに俺は話しかける。
「もう発つのか? 一緒にこっちに居ても……」
「あーやっぱり俺にここの空気は合わねぇよ。向こうでまたのんびりやっていくわ。お前も時間が空いたらこっちに遊びに来い」
「そんな時間ねぇよ」
「騎士と剣聖、両立させるつもりか?」
「ああ、レグルスの意思を継ぐつもりだ。あいつと同じことはできないかもしれないけど、少しでも近づきたい」
少し寂しそうな表情を見せるアルファルド。
「そうか……まあまた遊びに来るわ」
「うん。その時は又一緒に飲もう」
「それじゃあな。師匠に並んだ弟子よ」
「もう師匠を超えたけどな」
俺がそう言って笑うと
「まだ並んだだけだ」
そう言ってアルファルドは背を向け右手上げて世界の果てへ発った。
――3ヶ月後
「それじゃこれに着替えてください」
騎士団の黒い制服を来ている俺に宮殿の執事がそう話しかける。
今日は剣聖としての初めての仕事。そう剣聖の任命式ということだ。剣聖に与えられる真っ白な衣装に袖を通す。
戦場でもこの服を来て戦うのが剣聖としての慣わしで、一番目立ち一番の戦果を挙げることで兵士達を鼓舞するという意味があるらしい。
この真新しい真っ白な衣装に身を包み任命式が行われる玉座の間に向かう。
玉座の間に通じる扉の前で数分待たされると、扉が開くと一番奥に玉座に金の王冠を被った立派な髭を蓄えた恰幅のいい男が座っている。
その脇にはきらびやかな格好をした貴族や騎士団団長や幹部の姿などがある。
そして国王の近くに一際目立つ、青いドレスを纏った美しい女性と端正に整った顔をした男性がいる。お似合いの美男美女という感じでその女性と目が合うとニコッと微笑む。数年ぶりに顔を合わせるマーフ。その笑顔はどこか儚げな感じを覚える。
そして俺は国王の前に跪く。
「面を上げい」
国王の号令で顔をあげる。
「剣聖を賭けたその試合、大変見事であったと立会人を務めたムルジムより報告を受けた」
「はい」
「よってここ貴公を21代目剣聖として剣聖徽章を授ける」
「身に余る光栄です」
国王はその玉座から立ち上がり、俺の前に進み、執事から剣聖徽章を受け取るとそれを俺の胸に差す。
「この時をもってラグウェル・アルタイルは十王国、剣聖とする!!」
国王の側近の一人がそう叫ぶと玉座の間は拍手喝采に包まれた。
その時だったドーンという音ともに玉座の間の扉開かれる。
それは血塗れの甲冑を纏った騎士が護衛の騎士に制止されているにも関わらず、ドアをこじ開け叫ぶ。
「国王!!私はガルダイン卿の騎士です!どうか…どうかお話を!!!」
側近の一人が嗜める。
「ガルダイン公爵は騎士の教育もできないと見える。この場にそぐわないそのような格好で来られるとは……そもそも今回の式典ガルダイン卿も参加するのが道理ではないのか?」
「無礼は承知です! ですがこのままでは国そのものが無くなる事態故に無礼にはご容赦を!!」
国王は呆れたような表情をしている。しかしその騎士はそのまま話を続ける。
「ペンタグラムが!!ペンタグラムが国境を越え進軍を開始しました……」
周囲の人間はそんな馬鹿なというような表情を見せ国王も馬鹿にしたような表情をしている。
「ガルダイン卿め、遅刻した言い訳それとは」
そういって周囲の笑いを誘っている。
騎士はそれでも必死に訴える。
「巨石城は傀儡兵に囲まれ、わずか半日で陥落……ガルダイン卿は居城とともに……私めはそれを国王に伝えるようにと……」
全く信じようともしない国王に奥から現れた一人の男が国王に耳打ちをする。するとそれまでその騎士を馬鹿にしていよな笑みを浮かべていた顔は血の気のひいた真顔になった。
そしてその男が小さな丸い水晶のようなものを玉座前に置いた。
するとどこか懐かしさを感じる顔をした肩まで伸びた美しい銀髪の美少女が現れる。そして高らかに宣言をする。
「私はペンタグラムの元首スピカ・アルタイル。これよりペンタグラムは宗主国として十王国を接収します。ただちに明け渡しなさい。それができないのであれば我々は武力を行使します」
呆然と立ち尽くす俺にアルファルドは真剣な表情で話しかけてくる。
「ちゃんと受け取ったか?」
「……ああ……」
俺はただその一言を言うことが精一杯だった。
道場の扉が開かれ、外にいた騎士達がわっと中に入ってくる。レグルスの様子をみて涙を堪えるような素振りを見せる騎士の姿も見える。俺を睨みつけてくる騎士の姿もある。
アルファルドがその姿をみて俺に話しかけてくる。
「あの騎士達もいずれわかる。お前達がどんな思いで戦ったかということをな。21代剣聖、ラグウェル・アルタイル胸を張れ!」
俺は黙って頷きながら頬を流れるものを熱いものを感じた。
そして騎士達はレグルスの亡骸を抱き上げ連れ出す。俺は頭を下げそれを見送った。
――3日後
旅支度をしたアルファルドに俺は話しかける。
「もう発つのか? 一緒にこっちに居ても……」
「あーやっぱり俺にここの空気は合わねぇよ。向こうでまたのんびりやっていくわ。お前も時間が空いたらこっちに遊びに来い」
「そんな時間ねぇよ」
「騎士と剣聖、両立させるつもりか?」
「ああ、レグルスの意思を継ぐつもりだ。あいつと同じことはできないかもしれないけど、少しでも近づきたい」
少し寂しそうな表情を見せるアルファルド。
「そうか……まあまた遊びに来るわ」
「うん。その時は又一緒に飲もう」
「それじゃあな。師匠に並んだ弟子よ」
「もう師匠を超えたけどな」
俺がそう言って笑うと
「まだ並んだだけだ」
そう言ってアルファルドは背を向け右手上げて世界の果てへ発った。
――3ヶ月後
「それじゃこれに着替えてください」
騎士団の黒い制服を来ている俺に宮殿の執事がそう話しかける。
今日は剣聖としての初めての仕事。そう剣聖の任命式ということだ。剣聖に与えられる真っ白な衣装に袖を通す。
戦場でもこの服を来て戦うのが剣聖としての慣わしで、一番目立ち一番の戦果を挙げることで兵士達を鼓舞するという意味があるらしい。
この真新しい真っ白な衣装に身を包み任命式が行われる玉座の間に向かう。
玉座の間に通じる扉の前で数分待たされると、扉が開くと一番奥に玉座に金の王冠を被った立派な髭を蓄えた恰幅のいい男が座っている。
その脇にはきらびやかな格好をした貴族や騎士団団長や幹部の姿などがある。
そして国王の近くに一際目立つ、青いドレスを纏った美しい女性と端正に整った顔をした男性がいる。お似合いの美男美女という感じでその女性と目が合うとニコッと微笑む。数年ぶりに顔を合わせるマーフ。その笑顔はどこか儚げな感じを覚える。
そして俺は国王の前に跪く。
「面を上げい」
国王の号令で顔をあげる。
「剣聖を賭けたその試合、大変見事であったと立会人を務めたムルジムより報告を受けた」
「はい」
「よってここ貴公を21代目剣聖として剣聖徽章を授ける」
「身に余る光栄です」
国王はその玉座から立ち上がり、俺の前に進み、執事から剣聖徽章を受け取るとそれを俺の胸に差す。
「この時をもってラグウェル・アルタイルは十王国、剣聖とする!!」
国王の側近の一人がそう叫ぶと玉座の間は拍手喝采に包まれた。
その時だったドーンという音ともに玉座の間の扉開かれる。
それは血塗れの甲冑を纏った騎士が護衛の騎士に制止されているにも関わらず、ドアをこじ開け叫ぶ。
「国王!!私はガルダイン卿の騎士です!どうか…どうかお話を!!!」
側近の一人が嗜める。
「ガルダイン公爵は騎士の教育もできないと見える。この場にそぐわないそのような格好で来られるとは……そもそも今回の式典ガルダイン卿も参加するのが道理ではないのか?」
「無礼は承知です! ですがこのままでは国そのものが無くなる事態故に無礼にはご容赦を!!」
国王は呆れたような表情をしている。しかしその騎士はそのまま話を続ける。
「ペンタグラムが!!ペンタグラムが国境を越え進軍を開始しました……」
周囲の人間はそんな馬鹿なというような表情を見せ国王も馬鹿にしたような表情をしている。
「ガルダイン卿め、遅刻した言い訳それとは」
そういって周囲の笑いを誘っている。
騎士はそれでも必死に訴える。
「巨石城は傀儡兵に囲まれ、わずか半日で陥落……ガルダイン卿は居城とともに……私めはそれを国王に伝えるようにと……」
全く信じようともしない国王に奥から現れた一人の男が国王に耳打ちをする。するとそれまでその騎士を馬鹿にしていよな笑みを浮かべていた顔は血の気のひいた真顔になった。
そしてその男が小さな丸い水晶のようなものを玉座前に置いた。
するとどこか懐かしさを感じる顔をした肩まで伸びた美しい銀髪の美少女が現れる。そして高らかに宣言をする。
「私はペンタグラムの元首スピカ・アルタイル。これよりペンタグラムは宗主国として十王国を接収します。ただちに明け渡しなさい。それができないのであれば我々は武力を行使します」
0
あなたにおすすめの小説
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる