21代目の剣聖〜魔法の国生まれの魔力0の少年、国を追われ剣聖になる。〜

ぽいづん

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第5章 魔法の国のスピカ

第92話 8年前

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「今ので良かったのかしらアビゲイル」

 怪しく光る宝玉が中央に置かれた、大理石を切り出して作られた白い部屋に男女二人がおり、演説を終えた少女が男に話し掛けた。

 その少女は明らかに位が高いものと分かる白に青い縁取りがなされたローブを纏い、端正に整ってはいるがまだあどけなさも残っており、まさに美少女と呼ぶに相応しい容姿をしている。

 一方男の方は、痩せ気味でいかにも神経質そうな容姿で太陽のような少女とは対照的であった。

「ええ、問題ありませんスピカ様。後は我々にお任せを」
 アビゲイルはそうスピカに話し掛ける。
「分かりました。後は任せます」

 スピカはアビゲイルにそう言って宝玉の間をあとにする。

 埃一つ入ることがないようにきっちりと切り出し敷かれた大理石でできた石畳。それは人間の手では到底真似の出来ようがないもの。
 そうここは魔法の国ペンタグラムの宮殿。

 その石畳の上をカツカツと音を立て歩くスピカ。金で装飾された扉の前止まりその扉を開く。中には木でできた等身大の人形数名が部屋の掃除やベッドメイクをしている。
「ありがとう。もういいわ」
 その人形にスピカが話しかけると、一礼をし人形達は部屋を後にする。

 小さな頃から見慣れた光景で、この国では当たり前のこと。むしろこの人形を人のように扱うことが珍しいといってもいい。

 ベッドに座りスピカは呟く。
「私はただの人形。ただのお飾り」

 ――8年前

「お父さん。来たよ」
 私の家はペンタグラムでも有数の貴族で、大きな家に大きな庭を持ち、お父さんは優秀な魔術師。お母さんも優秀な錬金術師。そして一人娘の私、スピカ・アルタイル。私はお父さん譲りの銀髪にお母さんの譲りの黒い瞳がとても誇らしかった。

 この国では10歳になると魔力の源である魔素を測定する。今日私は10歳になりその魔素を測定する日。

 庭で父と魔法の練習をしていると魔素を測定しにきたと思われる、青い制服を来た二人の男女の姿がみえた。門の前で会釈をする二人、父が門に目をやり何かを呟くとその門が開く。

 二人組の男女が門をくぐり敷地に入ってきて、父に挨拶をする。挨拶をされた父の顔は緊張しているようにも見える。

「お久しぶりです。リゲル様」
 男の人が父に声をかけ

「ああ、又この日がきてしまったな」
「ええ……ラ」
 とその男の人が言いかけると父は凄く怖い顔をするのがみえ、その男の人は息を飲んだ。

「それじゃスピカちゃん行こっか」
 女の人が優しく私に話しかけてくれる。
「うん!」

 そういって屋敷の中に入っていく、扉を開くとお母さんがいて、ひどく心配そうな表情をしている。
「お母さん大丈夫ですよ」
 女の人がそういったがお母さんの耳には届いていないように思えた。

 ある部屋の前にくると
「ちょっとここで待っててね」
 そう言って女の人と男の人が部屋の中に入っていった。

 母が廊下の隅で心配そうな表情で私を見ている。
 なにがそんなに心配なのだろう? 私はそれが不思議で仕方ない。

 ガチャと扉が開き、中に通される。カーテンを閉めた薄暗い部屋の中には大きな水晶玉が置かれその水晶玉のなかには稲妻のようなものがゆらめいている。

 男の人と女の人は机に別の水晶玉が置かれておりその水晶玉を眺めている。そして女の人が私に声を掛ける。
「それじゃスピカちゃんその水晶玉を触ってみようか」
「うん!」

 私は言われたとおりにその水晶玉を触る。水晶玉の中の稲妻が私の両手に吸い付く。

 その瞬間、パチーーンという音がし
「キャッ!」
 女の人が驚きの声を挙げる。

 そう私が水晶玉に触れた瞬間に私が触れた水晶玉、二人が見ていた水晶玉は粉々に砕け散ったのだ。
 二人は青い顔をして見つめ合う。そして男の人は慌てたような素振りで部屋から出ていった。
「だ、大丈夫?スピカちゃん」
「うん、ちょっとびっくりしたけど怪我はしてないよ」

 10分ぐらいすると男の人が部屋に戻ってくる。
「ありがとうスピカちゃんもういいよ」
「うん。じゃあねー」
 そう言って私は部屋を出るとお父さんとお母さんが凄く嬉しそうな顔で私を迎えてくれた。
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