水泡の影

雪だるま冬子

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メイク落とし

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鏡は、今日を過ごした私を毎日迎えてくれる。


思い出は脳裏だけでは頼りない。


鏡に映るよれたアイライン。


黒ずんだ下瞼。


乾いて輪郭だけになった口紅。


小鼻の横を指で拭うと


崩れたファンデーションが重荷となって


指にこびりつく。


どんな顔をしていたか。


誰と向き合っていたか。


涙を流して笑った分だけ


崩れたアイメイク。


ああ、あの時確かに私は居た。


カメラロールは信じられない。


確信させてくれる唯一のもの


今日を過ごした確たる証拠は今


頬を流れ


流し台を滑り


排水溝に消えていく。


過ぎるのはいつの記憶だろう。


素顔になれば


思い出は目前でただ横一列に並び


輪郭のぼやけたほのあたたかい腕となって


私を抱きしめるだけなのだ。
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