騙され続けて、諦めて落ちて来た僕の妻

月山 歩

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4.悪意のある人

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 舞踏会でエスコートされ、腕を組んでいたとしても、話し込んでいるハルワルドには、聞こえないのだろう。

 令嬢達の悪意のある話し声が。

「ハルワルド様の御夫人になった人って、元使用人の子供なんですって。」

「えー、ハルワルド様ともあろう人が、使用人の罠に引っかかるなんて。
 ショックだわ。

 みんな彼と結婚できることを夢見てたのに。」

「彼もただの男と言うことよ。
 残念だけど。」

 令嬢達は声をひそめているようで、ひそめてない。
 それでも、聞こえてないと思っているのだろうか?

 セシリアは令嬢達の本音がわかってはいても、ショックだった。

 これでは多分、私は他の夫人達にも、同様に思われているから、友人は作れないのだろう。

 いつも男の人に捨てられる私に、街の人は冷たかった。

 ただ人並みに恋をして、幸せになりたい。
 それだけだったのに。

 侯爵夫人となっても、私は相変わらず孤独だった。
 ハルワルドを除いて。

 夫人達に受け入れられない私を、ハルワルドに知られたくない。
 誰とも友人を作れそうもないことを。

 でも、ハルワルドは頭の良い人だから、多分それも気づいていて、気を使って私を離さないでいてくれるのだろう。

 私には昔から、ハルワルドだけだった。





「セシリアちゃん、ごめん。
 お父さんのお仕事の都合で、別の領地に引っ越しをすることになったんだ。

 あっちに行ったら、今まで以上にいい生活ができるって、お母さんも喜んでいるんだ。

 セシリアちゃんとは、もう会えないけど、元気でねー。」

「待って、離れてもまた会えるわ。」

「ごめん、心機一転するって、家族と決めているから、この街の人とはもう会えないよ。

 新しい街の人は、この街の人と折り合いが悪いんだって。」

 やっとできた彼氏だったのに、手すら繋ぐ前に別れるなんて。
 彼は新しい未来に向かって、振り向かず、去って行った。

 私はそんなことを繰り返していた。



「悲しい顔をして、どうしたの?」

 昔から落ち込む私の前には、いつもハルワルドがやって来て、慰めてくれる。

「こんな可愛いセシリアを残して行くなんて、たいした男じゃない。
 早く、忘れるんだ。」

「そうね。
 諦めるしかないよね。」

「うん、僕がついているから、セシリアは大丈夫だよ。」 

「ありがとう、慰めてくれるのはハルワルドだけだわ。」

「よし、だったら美味しい甘味の店に行こうか。
 僕がご馳走してあげるよ。
 だから、元気を出して。」

「うん、ありがとう。」

 それが、いつものやりとりだった。
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