騙され続けて、諦めて落ちて来た僕の妻

月山 歩

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5.少しでもいい妻に

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「奥様、そのようなことは私共がいたします。」

「でも、申し訳ないわ。
 何から何まで、やってもらって。」

 邸の新館が出来上がると、新館の新しい居室に本館から、荷物を移動させている。

 新しい居室と寝室が、ハルワルドの寝室と繋がっており、二人の寝室を中心に行き来できる。

 その私側に侍女達は衣装その他を運んでいる。

「セシリア、君は指示するだけでいいんだよ。
 君には、僕の相手と言う大切な役割があるんだから。」

「それはもちろんだけど、少しでもやれることをしようかと。」

 セシリアは今まで使用人としてやって来たことを、ハルワルドに止められて、戸惑っている。

「おいで。
 僕と新しい家具について話し合おう。
 そのことの方が大切だよ。」

「わかったわ。」

 どんな時も多分ハルワルドの言うことの方が正しいのだろう。

「じゃあ、ここに座って。
 セシリアはどんな色の家具が好き?
 どんなデザインが好き?」

「私は家具なんて、自分で選んだことがないからわからないわ。」

「そっか、ならどんなのが好きか、この本を見て、直感で好きな方を残して行くんだ。
 早速二人でやってみよう。」

「でも、ハルワルドは忙しいでしょ。
 私の部屋のことだから、後から私一人でやってみるわ。」

「ダメだよ。
 僕は君がどんなものが好きか知りたいんだ。
 だから、一人でやったらダメだよ。」

「わかったわ。」

 二人は本を見ながら、これがいい、あっちも気になるとか言い合い、仲良く選び出している。

 セシリアの最初ははっきりしなかった好みも、少しずつだが見えてきている。

 その様子を邸の皆は、安堵して見ている。

 二人が昔から仲がいいのは、皆が周知のことではあったが、二人には元々超えられない身分の差があった。

 それなのに、まさかハルワルドが本気でセシリアを妻に選ぶとは、誰も想像していなかった。

 そして結婚したとしても、ハルワルドは貴族には当たり前にあるものを何も持たないセシリアに瞬く間に幻滅して、二人はすぐに破局すると思われていた。

 だか実際には、ハルワルドは毎日楽しそうに、貴族の生活を何から何まで、セシリアに一から教えてあげている。

 本来なら教育係がついて、指導するところだが、ハルワルドはそれを他の誰にもさせなかった。

 ハルワルドはセシリアに気づかせないように、彼女の周りに、見えない檻を作り上げている。

 だからセシリアは、自分がハルワルドの檻の中にいることを知らない。

 邸の皆もずっと気づかなかった。

 その檻はとても強固で、ハルワルド以外には、誰も開けることはできないものであった。
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