いつか、あなたを

夕時 蒼衣

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ハンカチ

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 気がついた時には、さっきまで向がわに座っていたあの男性が私の目の前に立っていた。背はきっと私より高い。短髪で整った顔の人だと思う。きっと世にいうイケメンであるに違いない。
「大丈夫ですか」
優しい声が私にそう尋ねた。「大丈夫です。ありがとうございます。」と言いたかったが言葉が出せなかった。言葉にしようとすると、呼吸がわたしの邪魔をした。言葉の代わりにまた息が詰まりまたしゃくりあげる。言葉がどうしても出せない。つらい。どうしよう。そう思うとさらにまた悲しくなってくる。もうどうすればいいか、わからなくなったとき、彼は私に手を伸ばした。
 目の前にハンカチがある。黒地に白と赤の細い線が入っているチェックがらのハンカチ。一瞬、訳が分からなかったが自分が泣いていることに気がつき、言葉を言葉にできなかった私は、ありがとうの代わりに小さくお辞儀をして、そのハンカチを受け取った。このとき私は妙に素直だった。きっと私はこのとき、誰かに優しくされたかったんだと思う。「大丈夫」という言葉が欲しかったんだと思う。柔らかかった。ふわふわのハンカチだった。その優しさに私はまた泣いた。彼は、私が泣いている間、黙って隣に座っていた。優しく背中を撫でてくれた。その手が優しくて、大きくて、あたたかかった。気持ちが少し落ち着いた。
 電車が駅でとまった。
「僕はここなんで。それじゃあまた。」
そう言って、彼は私の頭をポンポンと叩くとにっこり私に笑いかけて電車から降りていった。頑張れよとそう言われた気がした。その優しさは私には痛いくらいだった。
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