銀翼のシャリオ ―転生盗賊団長、ホワイト改革で破滅エンドを回避する―

白猫商工会

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第2章

第14話 幕間2

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――どこか、薄暗い部屋。

石造りの天井から吊るされた観測装置が、低く波紋のような音を響かせていた。 壁には計器が並び、脈打つように微弱な光をたたえている。

「うーん……なんか、ざわざわしてる感じ……」 
水晶球をのぞき込んでいた少女が、首をかしげた。

つややかな金色の髪に、長く尖った耳。 年若く見えるが、瞳の奥には、よわいの定かならぬ深い光が宿っている。 ――エルフだ。

深い森のような緑の瞳が、ふと揺れた。

「またか? 二度目だぞ」 
書類の束を抱えた男が、入り口から現れた。 眼鏡をクイと上げ、鋭い視線を少女に向ける。

「うん……でもね、今回はちょっと違うかも」

少女は目を閉じ、小さな声を聞き逃すまいと耳を澄ませる。 室内の装置が発する振動が、まるで心音のように重なっていた。

「それで? 何か悪い兆候でもあるのか」 
男の問いに、しばし沈黙が流れ――やがて、ぽつりと答えが落ちた。

「……う~ん……どうなのかなぁ。精霊たちが、“すごい子がいる”って言ってるの」

「すごい子、だと?」 

男が眉を寄せる。その言葉が意味するものを、軽々には受け取れない。

「えへへ~、ごめんね。あたしにもよくわかんないの」 

肩をすくめて、間延びした声で笑った。

「よくわからん、では困る。精霊の動きは、契約と供給に直結する問題だ」 

男は一歩近づき、さらに問いを重ねる。 

「来月の供給量は安定しているのか?」

「うん、大丈夫。精霊さん、“これからもよろしく”だって~」 

両手で丸をつくり、ふわふわと微笑んだ。

男はため息をつきながらも、少女をじっと見つめる。 彼女の言葉はいつも曖昧だが、奇妙なほどに外さない。

(……何かが起きている? 精霊がここまでざわめくなど、まるであのときの……)

少女の視線が、水晶球へ戻る。

「なんかこう……まぶしくて、ぽかぽかしてて…… 守りたくなる感じ? “心があったかい”って……たぶん、そんな感じ」

水晶球の奥で、姿なき声が揺らめくように響いた。

少女の耳がわずかに動く。姿は見えない。けれど、そこには確かに何かの存在があった。

――“見つけた” 
――“あったかい光”
――“今度こそ、伝わるといいね”

聞こえてくる声は、どこか遠い記憶を呼び覚ますようだった。 少女は胸に手をあて、そっと微笑む。

「……なんか、ちょっと……わくわくしてきたかも」

その呟きに応えるように――
水晶球の奥に、一筋の光が静かに走った。
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