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第1章

もう結婚するらしい5

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 美少女の必死の頼みを叶えてやりたいと思う。でも…身体の弱っている方をお城の外に、それも無断で連れ出す訳にもいかない。体調が急変したら私は適切な処置が出来ないのだから。

「すみません。こればかりは…。」

 私の返事に、アリスティナは残念そうに視線を落とした。

「そう…そうだよね。
急に…ごめんなさい。」

 猫耳がぺたりと頭にへたり込んでいる。
 可愛すぎてキュンとくると同時に罪悪感が半端ない。

(こ…心が痛むっ。
…だけど、こればかりは仕方ない。)

「こんな、面倒なお願いを初めて会う私にされても困りますよね…」

  ポロポロ泣き出してしまったアリスティナ姫に何処となくフェリミアの幼い頃が重なって見えた。
 テリアは寝台の側までよると、アリスティナの手を両手で握って、目を合わせて言った。

「面倒とかでなくて、私は姫様のお身体を心配しているのです。
何かあった時に私では姫様の事を救えません。」

「…。」

「アリスティナ姫さえ良ければ、私はまた此処へ来ます。
楽しい話を沢山持ってきますから…それでは…ダメですかね。やっぱり。」


 それを聞いて、垂れていた猫耳がピンと跳ね上がった。

「来てくれる?また来てくれるの?」

(上気する様子がとても可愛い。)

「はい!此処はとても美しくて癒されます。是非また来たいですわ。」

 頬を真っ赤にして喜ぶ姿に、なんだかこっちも嬉しくなった。

 私のお城生活で、やっと友達が1人出来て良かった。

「そう言えば今度、カルロお兄様とご結婚するのよね、お兄様のお相手が、テリア様で、私本当に嬉しい!」

 ピシリと固まってしまったテリアをよそに、アリスティナは本当に嬉しそうだった。

 当の本人であるカルロは心底嫌がっているのを知らないのだろう。そして私の王宮内での評判も。

(そうだ、この問題があるんだ。考えるの放り投げたけど、なんとか回避しようと思ってるなんて、言えないよね…)

 項垂れてしまったテリアを見て、アリスティナはテリアの頬にそっと手を伸ばす。

「テリア様、カルロお兄様が宮殿で女嫌いと周知されるほど、多くの女性に優しくない事は私、知ってるの。

ですが…私よりも…いや、私のせいでより一層、孤独で、辛く、もがき苦しんでいるの。」

「……?」

「…どうか、どうか…そんなお兄様ですが…よろしくお願いします。」

「………はぃ…」

 (何となくだけど、嫌と言える空気じゃない。)

 語尾を小さくして返事をして、この時だらだらと吹き出す汗が目に入って滲みてきたテリアは、もはや打つ手なく結婚式当日を迎えるのであった。
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