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第1章
義妹とお出掛けする事にしました5
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俺は昨日、アリスとテリアの会話を聞いていた。内容はアリスの寿命がもうすぐ尽きてしまうと言うものだった。
アリスだけが、王宮の中で俺を家族として大事に思ってくれて、俺に依存して、純粋に笑ってくれた。
アリスには俺しか頼れる存在がいない。
どんな犠牲を払ってでも、どんな事をしてでも守ってやらなくてはいけないのだ。
だけど、そのアリスが居なくなった時、俺はどうすれば良いのだろうと、その時ふと思った。
アリスには俺しか守ってくれる奴がいない。
だけど、俺にもアリスしか、いないんだ。
じゃあ、アリスが居なくなったら俺はどうしたら良いんだ?
足元がグラグラと揺れている気がした。
なのに昨日のアリスはまるで当然の事のように静かで狼狽える様子もなかった。
それは置いていく側だからこその余裕にも感じて、苛々がました。
昨日美しく笑っていたアリスの顔が、黒く滲んで消えていく様が思い浮かぶ。
(おまえは、死ぬのが怖くはないのか。
俺はおまえが死ぬのが怖い。)
カルロは、立ち上がるとアリスティナが居る瑠璃宮へと足を進めた。
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「にゃん!」
猫が指し示す先を見ると、思いの外カルロは早々に見つかった。
というか、こちらへと歩を進めくる。
「カルロ殿下!丁度良かったー…」
テリアが言いかけるけれど、その瞳が今まで会った中で1番冷たいものだったので、ゴクリと唾を飲みこんだ。
「体調のすぐれないアリスを連れ出して、おまえは何を企んでいる?」
「企むなんて。今からカルロ皇太子に外出許可取りに行く所でしたよ。ねぇ?」
テリアがアリスティナに視線をやると、アリスティナはコクリと頷いた。
それを見たカルロは余計に眉間にしわを寄せた。
昨日のアリスティナの言葉を脳裏に過ぎる。
『多分もって、あと3日でしょうか。』
『誰にも見つからない場所で、静かに1人で死にたかったのです。』
「ダメだ、アリスの外出は許さない。具合が芳しく無いことは、おまえも分かっているだろう。」
(昨日の話を、聞いていたのね。)
この時、カルロに凄まれているというのに、テリアは何故か、怖いと思わなかった。
『お兄様はずっと1人で怯えている哀れな人なのです。』
昨日のアリスティナが言った言葉が、テリアにも過ぎったからなのか。
「でも、アリスティナ姫のご病気はこの王宮にいる高名なお医者様に見てもらっても原因不明で、生まれつき極端な虚弱体質だと聞いてます。外に出る事の何がダメですか?」
「容体が急変したらどうする?おまえらでは処置できないだろう。」
「お城の中ならば安全ですか?」
「……っ!」
小首を傾げて問いかけるテリアに言葉に詰まったカルロは、急変した時の処置を思い出していた。
原因がわからないので、ベッドで症状が治るのをひたすらに待つ。その繰り返しだ。
しかも獣人であるアリスティナに王宮勤めの看護師や医師達はかなりの嫌悪感を持っている。
感性の鋭いアリスティナはそれを察知するたびに嘔吐いたり気を失ったりする事もあった。
言い淀むカルロを見て、さらにテリアは言い募る。
「お城の外は危険ですか?
貴方は、お城の中だけで生きてゆきたいと思いますか?」
「それは…っ。」
「お城の中にいれば、病気は治るのですか?」
「煩い!俺が許可しないと言ったらそれに従え!
何の取り柄もない妃なら妃らしく、部屋に引き篭もっていろというものだ!
おまえなんかに、俺の気持ちなど一生わからないだろうからな!」
「お兄様!」
アリスティナに咎められて、はぁはぁと肩で息をしながら、まくし立てたカルロは言葉を切った。
テリアは一歩近寄ってカルロを見据えながら聞いた。
「貴方は何を恐れて 何を戸惑っているのですか?」
「…ー」
俺が恐れるもの?戸惑い?そんなもの…っ
アリスティナが居なくなったら俺は、王宮で1人残されてしまう。
俺の家族が、俺の妹がいなくなったら。
俺が1人に…ー。
『お兄様が心配なのです』
アリスティナの為ではなくて
俺が、この王宮で…ー
「まぁ、カルロ殿下が心配するのわかるんで、じゃあ一緒にいきましょうか。」
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俺は昨日、アリスとテリアの会話を聞いていた。内容はアリスの寿命がもうすぐ尽きてしまうと言うものだった。
アリスだけが、王宮の中で俺を家族として大事に思ってくれて、俺に依存して、純粋に笑ってくれた。
アリスには俺しか頼れる存在がいない。
どんな犠牲を払ってでも、どんな事をしてでも守ってやらなくてはいけないのだ。
だけど、そのアリスが居なくなった時、俺はどうすれば良いのだろうと、その時ふと思った。
アリスには俺しか守ってくれる奴がいない。
だけど、俺にもアリスしか、いないんだ。
じゃあ、アリスが居なくなったら俺はどうしたら良いんだ?
足元がグラグラと揺れている気がした。
なのに昨日のアリスはまるで当然の事のように静かで狼狽える様子もなかった。
それは置いていく側だからこその余裕にも感じて、苛々がました。
昨日美しく笑っていたアリスの顔が、黒く滲んで消えていく様が思い浮かぶ。
(おまえは、死ぬのが怖くはないのか。
俺はおまえが死ぬのが怖い。)
カルロは、立ち上がるとアリスティナが居る瑠璃宮へと足を進めた。
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「にゃん!」
猫が指し示す先を見ると、思いの外カルロは早々に見つかった。
というか、こちらへと歩を進めくる。
「カルロ殿下!丁度良かったー…」
テリアが言いかけるけれど、その瞳が今まで会った中で1番冷たいものだったので、ゴクリと唾を飲みこんだ。
「体調のすぐれないアリスを連れ出して、おまえは何を企んでいる?」
「企むなんて。今からカルロ皇太子に外出許可取りに行く所でしたよ。ねぇ?」
テリアがアリスティナに視線をやると、アリスティナはコクリと頷いた。
それを見たカルロは余計に眉間にしわを寄せた。
昨日のアリスティナの言葉を脳裏に過ぎる。
『多分もって、あと3日でしょうか。』
『誰にも見つからない場所で、静かに1人で死にたかったのです。』
「ダメだ、アリスの外出は許さない。具合が芳しく無いことは、おまえも分かっているだろう。」
(昨日の話を、聞いていたのね。)
この時、カルロに凄まれているというのに、テリアは何故か、怖いと思わなかった。
『お兄様はずっと1人で怯えている哀れな人なのです。』
昨日のアリスティナが言った言葉が、テリアにも過ぎったからなのか。
「でも、アリスティナ姫のご病気はこの王宮にいる高名なお医者様に見てもらっても原因不明で、生まれつき極端な虚弱体質だと聞いてます。外に出る事の何がダメですか?」
「容体が急変したらどうする?おまえらでは処置できないだろう。」
「お城の中ならば安全ですか?」
「……っ!」
小首を傾げて問いかけるテリアに言葉に詰まったカルロは、急変した時の処置を思い出していた。
原因がわからないので、ベッドで症状が治るのをひたすらに待つ。その繰り返しだ。
しかも獣人であるアリスティナに王宮勤めの看護師や医師達はかなりの嫌悪感を持っている。
感性の鋭いアリスティナはそれを察知するたびに嘔吐いたり気を失ったりする事もあった。
言い淀むカルロを見て、さらにテリアは言い募る。
「お城の外は危険ですか?
貴方は、お城の中だけで生きてゆきたいと思いますか?」
「それは…っ。」
「お城の中にいれば、病気は治るのですか?」
「煩い!俺が許可しないと言ったらそれに従え!
何の取り柄もない妃なら妃らしく、部屋に引き篭もっていろというものだ!
おまえなんかに、俺の気持ちなど一生わからないだろうからな!」
「お兄様!」
アリスティナに咎められて、はぁはぁと肩で息をしながら、まくし立てたカルロは言葉を切った。
テリアは一歩近寄ってカルロを見据えながら聞いた。
「貴方は何を恐れて 何を戸惑っているのですか?」
「…ー」
俺が恐れるもの?戸惑い?そんなもの…っ
アリスティナが居なくなったら俺は、王宮で1人残されてしまう。
俺の家族が、俺の妹がいなくなったら。
俺が1人に…ー。
『お兄様が心配なのです』
アリスティナの為ではなくて
俺が、この王宮で…ー
「まぁ、カルロ殿下が心配するのわかるんで、じゃあ一緒にいきましょうか。」
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