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第1章
ユラはあの日見ていた ユラside
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私は、あの日あの時、ただ見ていた。
「テリア様がそんな事を。」
私の名前はユラ。現在テリア様付きの専属侍女をやっている。
そして、今の言葉は同僚の執事アレンに投げた言葉だ。
どうやら先日、アレンは万一の為皇太子様付きになれと言われたらしい。
いつも、シレッとした顔している同僚が表情を変えずにへこんでいるくらいは分かった。
「あの人が怖気ずくとは…
前世を活かしてって言われてもわたしは全く覚えていないし、妹君のフェリミア様は俺について特段何も言ってなかったですし。」
「ぁあ…フェリミア様は、そうでしょうね。」
前世…そう、私には前世の記憶がある。
この執事と、護送されるテリア様達子爵家を乗せた護送車をひたすら追いかけた。
私達は最初、子爵家で彼等の帰りを待っていた。けれど憲兵に連れて行かれて牢獄に入れられてからは情報は入って来ず。
やっと入って来た情報は、子爵家の一家は爵位を剥奪されて罪人を罰する地へ追放との事だった。
それを聞いてすぐに、護送者を追った。アレンの嗅覚と聴力。そして、私の視力と空間把握で。
見つけた時は夜だった。泣きながら裸足で走っているテリア様に銃を撃ち込み、追いかける輩に私もアレンも容赦はしなかった。
けれども、予想外に次から次へと兵士達はやってきた。執拗にテリア様を追いかけてくる。
中には腕の立つ者や、足の速い者もいて厄介だと思った。
逃げる最中に、フェリミア様の処刑が決まった事をテリア様から聞いた。だから、早く助けに行かなくてはと。
それを聞いたアレンは、その場に残って足止めをすると、言っていた。
その前世を、この同僚に言う気は無かったけれど、別の主人にしておけと言われて落ち込んでいるのも気の毒に思えた。
私とて言われたらへこむだろう。
「…アレンは、テリア様が護送車から逃げた時、追手を1人で片付けると言ってその場に残ったのよ。」
「それだけですよね?何で急に主人変えろって話になるんだか…」
「…ー考えられる事は一つね。」
「?」
「貴方だけ、私達4人の中で記憶がない。何でだと思う?」
「さぁ?神の御加護を信じていないからじゃないですか?」
「私はね、生きていたのよ。あの日。」
「え?」
「フェリミア様の処刑の日。
主人2人が殺されたと言うのに最後まで。生きていたのよ。」
「ー…。」
処刑日当日に辿り着いてしまった。 フェリミア様は間に合わないと直ぐにわかった。けれど、どうにか出来ないかと考えを巡らせている最中、群衆へ突っ走り始めたテリア様を止められなかった。
あっという間に群衆に呑まれてゆき、追いかけても人の波に邪魔されて遠ざかり、フェリミア様の処刑を告げる鐘が鳴り、やっと追いつきそうだと手を必死に伸ばした先に、複数人の兵士に首を刺され、胴体を刺され、胸を刺されたテリア様。
そして、歓声が湧き上がり、呆然と見上げた先には処刑が執行され首を跳ねられたフェリミア様が見えた。
確かに私はこの目で見た。
だけど、気を失ったと思って次に目を覚ました時、日付が遡っていた。
「アレン、4人の中で貴方に記憶がないのは、貴方は処刑日前に死んでいたからではないかしら。
だから、それを知ったテリア様が貴方が死ぬこともある事を急に実感して巻き込む事を恐れた。」
「ー…っはぁ。」
頭をかき上げている同僚を横目に、仕事を進めた。
そうよ、貴方は確かに前世で死ぬと言うしくじりをして、主人の信用を欠いてしまいへこんでいるだろうけど、私よりもマシでしょう?
私はあの時
あの2人をただ見ている事しか出来なかった無能だったのだから。
「テリア様がそんな事を。」
私の名前はユラ。現在テリア様付きの専属侍女をやっている。
そして、今の言葉は同僚の執事アレンに投げた言葉だ。
どうやら先日、アレンは万一の為皇太子様付きになれと言われたらしい。
いつも、シレッとした顔している同僚が表情を変えずにへこんでいるくらいは分かった。
「あの人が怖気ずくとは…
前世を活かしてって言われてもわたしは全く覚えていないし、妹君のフェリミア様は俺について特段何も言ってなかったですし。」
「ぁあ…フェリミア様は、そうでしょうね。」
前世…そう、私には前世の記憶がある。
この執事と、護送されるテリア様達子爵家を乗せた護送車をひたすら追いかけた。
私達は最初、子爵家で彼等の帰りを待っていた。けれど憲兵に連れて行かれて牢獄に入れられてからは情報は入って来ず。
やっと入って来た情報は、子爵家の一家は爵位を剥奪されて罪人を罰する地へ追放との事だった。
それを聞いてすぐに、護送者を追った。アレンの嗅覚と聴力。そして、私の視力と空間把握で。
見つけた時は夜だった。泣きながら裸足で走っているテリア様に銃を撃ち込み、追いかける輩に私もアレンも容赦はしなかった。
けれども、予想外に次から次へと兵士達はやってきた。執拗にテリア様を追いかけてくる。
中には腕の立つ者や、足の速い者もいて厄介だと思った。
逃げる最中に、フェリミア様の処刑が決まった事をテリア様から聞いた。だから、早く助けに行かなくてはと。
それを聞いたアレンは、その場に残って足止めをすると、言っていた。
その前世を、この同僚に言う気は無かったけれど、別の主人にしておけと言われて落ち込んでいるのも気の毒に思えた。
私とて言われたらへこむだろう。
「…アレンは、テリア様が護送車から逃げた時、追手を1人で片付けると言ってその場に残ったのよ。」
「それだけですよね?何で急に主人変えろって話になるんだか…」
「…ー考えられる事は一つね。」
「?」
「貴方だけ、私達4人の中で記憶がない。何でだと思う?」
「さぁ?神の御加護を信じていないからじゃないですか?」
「私はね、生きていたのよ。あの日。」
「え?」
「フェリミア様の処刑の日。
主人2人が殺されたと言うのに最後まで。生きていたのよ。」
「ー…。」
処刑日当日に辿り着いてしまった。 フェリミア様は間に合わないと直ぐにわかった。けれど、どうにか出来ないかと考えを巡らせている最中、群衆へ突っ走り始めたテリア様を止められなかった。
あっという間に群衆に呑まれてゆき、追いかけても人の波に邪魔されて遠ざかり、フェリミア様の処刑を告げる鐘が鳴り、やっと追いつきそうだと手を必死に伸ばした先に、複数人の兵士に首を刺され、胴体を刺され、胸を刺されたテリア様。
そして、歓声が湧き上がり、呆然と見上げた先には処刑が執行され首を跳ねられたフェリミア様が見えた。
確かに私はこの目で見た。
だけど、気を失ったと思って次に目を覚ました時、日付が遡っていた。
「アレン、4人の中で貴方に記憶がないのは、貴方は処刑日前に死んでいたからではないかしら。
だから、それを知ったテリア様が貴方が死ぬこともある事を急に実感して巻き込む事を恐れた。」
「ー…っはぁ。」
頭をかき上げている同僚を横目に、仕事を進めた。
そうよ、貴方は確かに前世で死ぬと言うしくじりをして、主人の信用を欠いてしまいへこんでいるだろうけど、私よりもマシでしょう?
私はあの時
あの2人をただ見ている事しか出来なかった無能だったのだから。
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