71 / 127
第1章
カルロはその頃 カルロside
しおりを挟む外套を身に纏い、目的地に向かって歩いていたカルロは出掛ける前にもらったネックレスについたペンダントを手にして、じっと見つめた。
いつからだったか、分からない。予め俺は予感がしていた。
俺は多分、こいつを好きになる。と言う嫌な予感。
それを一目惚れと言うのか、何と言うかは人それぞれだろうが。
帰ってきたあの夜、2人でサンドイッチを食べて夜空を見ていた。特段変わったことをしていた訳じゃ無い。
隣にあいつが居ると言うだけで、俺は楽しく心地よく。もっと此処に居たいと思っていた。
だからと言って、向こうからの好意を期待している訳じゃ無い。
俺は多分嫌われているだろうと初めから思っていたし。俺も嫌いだと思おうと必死だったし。今思えばくだらない事をした。
だから、王宮から出る前に一目見たかっただけ。見返りを、求めた訳じゃなかった。
けれど。去り際にこのペンダントのついたネックレスを俺に渡して、あいつは念を押して言った。
『ちゃんと、返してよ。』
「…ちゃんと、帰って来いってか。」
ふっと口元に小さな笑みを浮かべて、ネックレスを胸ポケットにしまった俺に、かつての腹心が反応した。
「お元気そうで、何よりでしたよ。」
「おかげでな。
当分音沙汰もなく。最後の言葉はあれだ。俺はおまえに本当に裏切られたと思い始めていたぞ。」
「…貴方がまた別の者に同じ事をしたら今度こそ詰んだでしょうからね。
外に行っては、もう手助けも出来ない。ならば恨まれたままで良いから貴方を生かしたいと思って居ました。
ですが、見つけましたから。貴方の助けになる術を。
…数百年前に現れた異世界の聖女が残した泉を。」
「結局、異世界の聖女の力は必要…か。」
「けれど貴方も暗黒龍を倒せば無二の存在になれます。どうせ、異世界の聖女は数百年も現れていない。
神殿は色々と模索していますがね…だからこそ、とにかく貴方は1人で暗黒龍を仕留める。
これを果たせば神殿は貴方を指示するでしょう。」
神殿は異世界の聖女の為にある。王宮が政治をまわしているなら、神殿は聖なる力を持った者の集まりで、いわばこの国の神…いな、神に仕える異世界の聖女の住処を守っている。
異世界の聖女が現れたら、王宮より神殿が権力を持つ時代になる。
だが今は神殿と王宮で拮抗している。
神殿は皇帝の花冠式で神のもとに皇帝を指示する声明を出す。
これが無いと皇帝にはなれない。
神殿は異世界の聖女にしか興味がない。
というより、この世を混沌垂らしめる
暗黒龍を討伐出来る者の存在は貴重なのだ。
異世界の聖女を所有する権限を持った神殿。
始皇帝の大剣の使い手が生まれる王宮。
神話に出てくる暗黒龍を討伐出来る2人がそれぞれ所有される場所。
それぞれの権力が拮抗するのは当然だったが、異世界の聖女の役割はそれだけで終わらないので、数百年も不在だと言うのにやはりその存在は大きい。
俺が大剣を使えるのは、たまたまだ。始皇帝の血さえ混ざっていたら、使える者が1人は必ず生まれる。
つまりセリウムが子供を産んだら、もしかしたらその子も使えるかもしれない。
そうなったら俺の存在意義も完全に消えるから、まだあいつが幼いうちに。
俺は暗黒龍を1人で討伐したと言う無二の存在になる。
そう、これは俺の賭けだ。
この討伐を成功させたら俺が皇帝。
失敗したなら…
「まぁ、失敗する訳にもいかないか…。」
王宮には守らなくてはならない者が残っている。
俺の妹、アリスティナ。
そしてー…
「ん?皇太子、大剣が…。」
「?」
24
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです
珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。
その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。
それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる