82 / 127
第2章
後任候補とお茶会
テリアが皇妃主催のお茶会で、後任皇妃に目ぼしい人を見つけてから数日が経過した頃2人で是非改めてお会いしないかと誘ってみたところ、快く了承してくれた。
そして現在、互いに1人ずつの侍女のみを後ろに従えて、まるでこれから秘密の話をするかのような雰囲気が流れている。
後任皇妃として私が選んだのは、テンペル公爵令嬢ロザリー・テンペラント。常に姿勢良く、ブランドの波打つ髪は艶やかで気品漂う出立に、知性を感じさせる面持ちは、正にこの国の皇妃にふさわしいと思えた。
(アレンが選んできた中に居たと言う事は、こんな人にも。カルロは好意を寄せられてきた訳ねぇ…)
そんな事を考えながら、数分間は当たり障りのない話をしていたところ、本題を切り出してきたのはロザリーだった。
「皇妃様、…私から切り出すのは、失礼とは存じましたが誤魔化してもせんのない事です。私と、取引をしませんか?」
「取引?」
(はて…。こちらが本題切り出す前に向こうにも何か話があって今日は応じてくれたのね。どうしよう、難しい話だったら。)
「私を、皇妃様の権限でカルロ皇帝の側妃に召し上げてくれませんか?」
「…。私にそんな権限が?」
「やはりご存じなかったのですね。
後宮は皇妃様の管轄です。皇帝が首を縦に振らずとも…その、ずばり申しまして皇妃様が寵愛を得られなかった場合、代わりにお世継ぎを生む為の女性を皇妃様自らが選抜するのはよくある話です。
下手に別の勢力の者に側妃を選別されるよりも、よろしいかと思います。如何でしょう?」
「えーと、つまり。私がロザリー様を側妃にして…」
「その見返りに私は皇妃派閥の者として行動します。私の後盾はもれなく皇妃様の後盾ともなります。どうでしょうか、悪い話ではありません。」
(そんな事思いもつかなかったわ。ロザリー様って賢い…)
「側妃になると覚悟して…そこまで、カルロ陛下の事を慕っているのですね。」
「いえ。私はテンペル公爵家の為になる事を申しているのです。」
「ん?」
「私には目の中に入れても痛くない可愛い弟が居ます。
その子が公爵家を継ぎますが…我公爵家は前皇帝の治世のおり、完全に第2王子派閥でした。その事で現皇帝には政から遠ざけられています。それは今後、弟の大きな足枷になり得ます。」
「…。成る程。」
「私は愛する弟のためなら一肌でもなんでも脱ぎます。
必ずこの美貌で皇帝陛下の寵愛を賜り、公爵家と、皇妃様に恩恵を運びます。
ですから、どうか…。」
ロザリーの眼差しは真剣そのものだった。冗談でもなんでもない。彼女は本気だ。大切な人の為、自分の身は二の次で…私はそう言う人が嫌いではない。
寵愛を受ける自信も伝わってくると言うか…、確かにこの美貌であれば落ちない男は居なさそうだ。その点は何か安心感がある。
ちょっと予想とは違ったけれど、下手にカルロを好きだと言う令嬢よりも、こう言う人の方が良いのかもしれない。
そしてまどろっこしい言い回しをせず単刀直入なのがとても爽快で、私としては現時点で大変好感がもてる。
互いに知ればきっと…、カルロとロザリーの2人は良い関係を築ける気がする。
(カルロも妹溺愛だから…あれ?本当に良いかも。もしかしてこれ以上ってない?)
「ロザリー様のお話はわかりました。実は私がロザリー様と改めて会いたいと申し上げたのも、似たような理由です。」
テリアがティーカップを置いて、神妙な表情で言うと、ロザリーは息を飲んでからコクリと頷いた。
「やはり…。」
「ですが、一部違います。私が貴女に求めようとしたのは側妃ではありません。」
「……?では、何を?」
「この国の 皇妃になるつもりはありませんか?」
この時、2人の間に吹き抜けた風は嵐の前触れのごとくザワリと髪を揺らし頬に張り付く。
「…あの、僭越ながら…私の聞き間違いでしょうか、今…」
「私は皇帝と穏便に離縁をするお約束をしています。近々この座から居なくなる身なのです。」
「…!!」
「側妃よりも、皇妃である方が公爵家の助けにはなりませんか?」
「……。それは、そう。ですが…流石に、え?」
「ただ、これにはふたつ条件があります。」
「条件ですか?」
「1つは私を害さない事。」
「それは、勿論です!」
「2つ目はー…」
「2つ目は?」
「……。いえ、きっと貴女なら大丈夫な気がします。」
「ですが、皇妃になるには流石に皇帝陛下の承認が必要で…」
「だから急に事を運ぶつもりはありません。今度の舞踏会で私が貴女を陛下に紹介します。」
あなたにおすすめの小説
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています
もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。
ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。
庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。
全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。
なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした