【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式

文字の大きさ
104 / 127
第2章

貴女は笑顔が似合う人2

しおりを挟む

 アリスティナ姫の赤い瞳は、闇夜で見るとルビーの様に高貴な光を灯している様に見えて、その美しさに私は思わず息を呑んだ。
 
(私が男なら惚れている…)

 
「…私は、テリア義姉様が王宮へ来る前から、義姉様となる方の噂話は聞こえておりました。
その噂を総じて言えば〝優秀な妹の縁談話を、我儘で横取りしてしまう不出来で傲慢で、野心家な令嬢〟と言ったものでした…」


「そんな噂があったんですね…」


 そう言えば、最初カルロと顔合わせしたとき、野心がどうのこうのと非難されていたのはその噂のせいなんだろうか?誰がそんな根も葉もない噂を??そんなの全てデタラメ…ーー…とは、ちょっと言い切れない部分がある。

 元々皇妃候補になる予定だったのはフェリミアで、実際前世ではフェリミアが皇妃だった。

 つまり見方によっては妹の縁談話を横取りしたということになるのかしら。いや、間違いなく事実上横取りしてるわね。…ならまぁ、そんな噂が立つのも仕方ないのかも。
 噂話が間違いでないだけに、それを知って私に不快感を持つのは当然の反応だろう。

 あれ?そうなると、初めてカルロと顔合わせしたしたとき、酷い態度をとられたけれども、あれはあながち間違った反応ではないのかもしれない。今更ながらそう思えてきた。

 
 すっかり考え込んだテリアをよそに、アリスティナ姫は話を続けた。


「王宮での噂は人が面白おかしく変化させて行くものとはいえ、何処かに事実があることも多いので、少し、心配でした。また良からぬ騒動が起きるのではないかと」


「…、何だか凄く嫌な言い回しの噂にされておりますが、大体は事実なので不安に思われても仕方ありませんね」

「いいえ、出会って直ぐにわかりました。
テリア義姉様はその様なお方では無いと」

「アリスは、私を買い被り過ぎてませんか?」

 何故か、アリスティナ姫は本当に初めから私を買い被り、とてもよく懐いてくれたと思う。驚くほど信用してくれて、色々頼ってくれたことは何だかんだでとても嬉しかった。アリスティナ姫は自分の妹の様に可愛くて、幸先不安だらけの王宮内で、唯一の癒しと言っても過言ではなく、不安な気持ちが幾分か和らいだ。

 カルロが、アリスティナ姫を大切に思って守ろうと必死になる気持ちが、本当によくわかる。ましてや、カルロにとっては一切油断の許され無い王宮内で、アリスティナ姫は唯一の家族で、信頼できる存在なのだから。



「買い被りではありません!
私は、憎悪、善意、野心、欲望など、その人が心に抱いている強い想いは直ぐにわかります。
だから、私はテリア義姉様と出会った頃からずっと思っていました。

ーー・カルロお兄様に、とても、とても良く似ている優しい人だと」

「私が?」

 カルロに、良く似ている…。…いまいちピンとこ無い。

「はい」

「私、そんなに怒りっぽいかな?」

 私が、カルロに似ている…色々と想像してみたけれども、全くもって似ている要素が思い浮かばない。目の色?輪郭?そんな訳がない、外見は全くと言って良いほど似ていない。身長も最近成長期を迎えたカルロには差をつけられるばかりだし…

 小首を傾げながら答えを探していると、鈴の転がる様な可愛らしい声が、答え合わせをするように、アリスティナ姫は問いかけてきた。


「怖いのに、逃げ出したいのに。
…それでも、誰かを守るために、此処に居たんですよね?」
しおりを挟む
感想 110

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。

みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。 死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。 母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。 無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。 王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え? 「ファビアン様に死期が迫ってる!」 王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ? 慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。 不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。 幸せな結末を、ぜひご確認ください!! (※本編はヒロイン視点、全5話完結) (※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします) ※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

処理中です...