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第2章
テリアと謎の男性と火に油1
しおりを挟む「まるで、カルロ陛下が側室を設ける事が既に決定事項のように言うのですね。私はそんな話聞いておりませんが…。」
「…既に縁談話が幾つか出ている事は確かです。」
〝後は語らなくともお分かりでしょう?〟と、アネス子爵は視線で問いかけてくる。
確かに、私が知らない所で話が進んでいる事は大いにあり得る事だ。だけど本当に側室の話が進んでいるのならば、私に言わない理由が思いあたらない。
側室に迎えようと思える女性が現れたなら、側室ではなくて、むしろその人を私との離縁後、皇妃にすれば良いと言うのに。
疑問が湧いて首を傾げるテリアを憐れみを含んだ瞳で見つめて、アネス子爵は顔をゆるりと横に振った。
「皇妃様がこの事実を信じたくないお気持ちもわかります。
さぞや不安でしょう…
いや、王宮にあがられてからずっと。
お1人で不安だったでしょう。」
一歩踏み出してきたアネス子爵は、慈悲深き潤んだ瞳で右手でテリアの髪を一房すくいとり
慈しむように親指で優しく撫で付けている。
(カルロの側室話も疑問だけれど。
もっと疑問なのは、この人の揺るぎない自信は何処から来ているのだろうか…。
あながち全部間違いでは無いけれど。)
確かに王宮へ来てから不安でない日なんか、なかった。
だけどそれは。アネス子爵の提案する方法では癒されはしないだろう。
本人なりに親切心からだったのなら申し訳ないが、お断りしようとテリアが口を開きかけたその時ー…
「おい、そこでおまえらは一体何をしている。」
後ろから聞き慣れた不機嫌な声がして、ゆっくり振り向くと機嫌がすこぶる悪そうなカルロがいた。
(…テンペル公爵令嬢とトキメキメモリあっていると思ってたのに。
むしろ貴方が此処で一体何してるの?色々とお膳立てするの結構大変だったんだよ?)
メモリアル作戦がどうなったか後でテンペル公爵令嬢に聞くとして、何故か随分とカルロの機嫌が悪そうだ。
「…どうしたの?何だか機嫌良くなさそうだね。」
もうカルロの機嫌が悪い所に居合わせるのは慣れたものだけれど、耐性のないアネス子爵から恐怖心が伝わってくる。
この場を和ませるためにありったけ陽気に声をかけてみたテリアの方へは視線は向けず、カルロはアネス子爵を見据えて言った。
「…とりあえず、アネス卿は右腕を斬り落とされたいと言うことか?」
…私、シカトされてる??
ていうか、流石に今の発言も顔もめっちゃ怖い。
アネス子爵の震える右手からはらりと、先程から一房すくいとられていた私の髪が滑り落ちた。
どうやらカルロは完全に誤解してるようだ。
多分カルロ暗殺計画等不穏な陰謀を私と子爵が画策しようとしてると、何でか誤解されてるに違いない。
そうでなくては説明がつかないほど、その目に宿る眼光がいつに無く鋭い。
この間まで立場の弱かったカルロが、未だ周囲を警戒して過敏になるのは分かるけれど。
私が人目を盗んで胡散臭い子爵と密会していたぽいからって貴方をどうこうしようなんて策略巡らせる脳がない事くらいはわかるよね?
ね?だから腰に付けている剣の鞘に手をかけるのやめて?
ほら、アネス子爵も笑顔だけど、完全に青ざめてなんか凄い汗吹き出してるから。状況ついていけてないから!
「ま、待って!
カルロ陛下は誤解してる。完全に誤解!」
「誤解?」
あ、ちょっと話聞いてくれるみたい、良かった。
アネス子爵の為にもここは上手くかわさないと。
でも、正直に言っても余計怪しさが増すと言うか、ひたすらアネス子爵の不審者疑惑が増して今のカルロには火に油な気もする。多分今、胡散臭さや怪しさのかけらでも臭わせたら少なくともアネス子爵の首が飛びそうだ。
もう此処は、既にそう言う事だった事にしよう。
「ほら、あの。
実はアネス子爵は私の愛人なんだ。
ふふっ、カルロ陛下には信じられないかもしれないけど、
そう、何を隠そう私は凄くモテるのです。あはは…照れちゃうなぁ。変なところ見られ…モガっ
何処から現れたのか、私は侍女であるユラに口を塞がれた。
「…テリア様、多分それは火に油です。」
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