【完結】辺境伯は元王子妃に恋をしている

マロン株式

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元王子妃

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 ある侍女は後に言った。
 在任中、献身的に王子を支え、国民からの信頼厚いそんなお方が、多くの者に惜まれながらも元王子妃となった。

 元王子妃は限られた人々のみに見送られ静かに王宮を後にしたが、とある場所で馬車を止めたという。

 馬車の中から、山頂を見上げていた王子妃は、何かに気付いて馬車の扉をあけると一目散に駆け出した。

 その先には1人の騎士がいたと言う。

 崖の上から城下を見下ろし山頂から吹き抜ける風の音に耳を澄ませていた騎士は、自分を呼ぶ声に振り返り、2人は視線を交わらせた。

 元王子妃は手を伸ばして騎士のマントと袖の分厚い布地をしがみつくようにして握りしめ、身を預け

 騎士は、王子妃を包み込むように穏やかな眼差しで見つめながら、開いた片手で優しく抱き寄せ、見上げてきた元王子妃と視線を交わしゆっくりと唇を合わせたと言う。

 侍女はそんな2人が口付けを交わしている姿を見ていたとか見ていないとか。

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