14 / 17
辺境伯は元王子妃に恋をしている1 ※ 辺境伯side
しおりを挟む思えばわたしは、幼少期の頃、1人の少女を見掛けてからこの人しか愛する事は出来ないとわかっていたのだろう。
叶わぬと思いながらも視線ではその姿を探し、代わりを見つけようともがいても相手を傷つけるだけで終わった。
全てはあのお方の、幼いながらもおっとりとしているのに、何処か凛とした姿を見掛けたその時から始まった。
届かぬ想いと身を焦がしながらも、諦めなくてはと何度も思った。
その人と、自分の邸宅にある寝室で同衾する日が来るなど考えつかなかった。
初夜でする事は一般的に1つしか無いけれど、この人は離縁されたばかりだ。
焦ってまぐわろうとしている訳では無い。少しずつ、様子を見ながらだ。
風呂に入り終わった辺境伯は寝室に向かいながらそう自分に言い聞かせていた。
寝室の扉を開けると、其れ迄日記でも書いていたのか、ペンを持っていた手を止めて、たれ目がちな目をこちらに向けてくる マーガレットの姿があった。
化粧を落とし、何時も綺麗に結えられていた髪を下ろし、しっかりした生地で出来ているドレスと違い、無防備な程に薄い寝屋着から浮き出る胸のラインが少し揺れたのが目に入る。
控えめに言って、色気が凄い。
その姿に男として疼きを感じゴクリと喉をならした。
(何処を見ているんだわたしは…)
そんな辺境伯の事情などつゆ知らず、初めて互いに寛いだ姿で対面している事に照れた様子の マーガレットは頬をピンクに染めて「今日は式でお疲れでしょうから、寝ましょうか。」と微笑みを浮かべ、話しかけてくる。
まだ眠たくは無かったが、このまま無防備なマーガレットを視界に入れ続けるのも理性が揺らぎそうなので、辺境伯は思わず頷いた。
明かりを消して、2人してベッドに入って行くけれど、辺境伯の目は当然冴えていた。無心になろうと天井にある窓から見える満月を見上げていた。
室内には月明かりのみだが、それだけでも充分に優しく部屋を照らしている。
「妃殿下、お手に触れてもよろしいでしょうか?」
少しずつ、とは思いつつもやはり初夜なので、抱きしめて眠るくらいはしたい。
どの程度触れても平気か探る為声をかけてみるが、マーガレットから返事はなく視線をやると目を閉じて既に眠りについている。
(多分式で疲れたのだろう。今日はこのまま休ませてさしあげよう。)
辺境伯が小さく開いた唇に、そっと口付けた時、触れた事で目が覚めたのか、目を薄ら開けたマーガレットと目が合った。
「……。」
「…眠れないのですか?」
マーガレットはそう言って、固まってしまった辺境伯をボンヤリと見つめ、寝ぼけているのか手を伸ばし、辺境伯の頭を胸元に抱え込むようにして抱き込む。
意図せず柔らかい弾力に顔を埋める事になった辺境伯の理性が大きく揺れると同時にカァッと顔が熱くなる。
辺境伯の頭を抱え込んだ マーガレットは、優しく頭をよしよしと撫でながら言った。
「おやすみなさい。王子。」
その呟きに、辺境伯は目を見開いた。
これは癖のようなものでしか無く、寝ぼけている マーガレットに他意はない。
恐らく長年にわたり王子をこうして抱きしめ眠っていたのだろう。
(…わかっては、いたが…)
「……─ー。」
完全に眠りについたのか マーガレットは小さく寝息を立て初め、身動きが自由に取れるようになった辺境伯は1度頭を浮かせると
大きな手で脇から乳房を持ち上げた事で前に浮き出た尖りを口に含んだ。
24
あなたにおすすめの小説
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました
ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。
夫は婚約前から病弱だった。
王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に
私を指名した。
本当は私にはお慕いする人がいた。
だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって
彼は高嶺の花。
しかも王家からの打診を断る自由などなかった。
実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。
* 作り話です。
* 完結保証つき。
* R18
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる