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王子はお嫁様の異変に気付く
しおりを挟む王子は賓客への挨拶をしている中、見送った時のマーガレットの様子を思い浮かべた。
(様子が、変だった…)
具合が悪いのかと尋ねたら、大丈夫と言っていたけれど。
(……気になる。)
『話が、あるのです』
昨夜そう言っていたマーガレットの表情は、初めてみた。
この上なく美しくて艶やかで綺麗な表情だった。
それ以上踏み込ませない雰囲気を身に纏い、そんな彼女が愛おしくも感じて、危うくも感じた。
「クリスー!」
宮殿で王子の名を呼んで掛けてくるのは隣国のラナ王女。そして後ろからやって来たのはその兄ロイ皇太子。僕と同い年の隣国王子だ。
2人は、亡き母上の親友で隣国に嫁いだナーディアの子供で、母同士仲が良く
、王とナーディアも友人関係が続いていたので、この2人とは他国の中でも交流が良くある。
腐れ縁だ。
突進しながら抱きついて来ようとするラナを避けると、後ろからついて来たロイが話しかけて来た。
「相変わらずクリスは頭硬いなぁ。女の子はぎゅってしておけば大人しくなるのに。」
「…君も相変わらずみたいだね。」
ロイは所謂プレイボーイで、気心は知れているが、互いに理解できない点も多い。
避けられたラナが不貞腐れた表情でもどってきた。
「私今年で成人したのよ!そろそろお嫁さんにしてくれても良いんじゃない?私はマーガレット様の事も好きだし後宮もドロドロしないわよ。」
「いや、僕のお嫁さんは1人で間に合ってるから。」
丁重にお断りすると、尚更不貞腐れた顔をして頬を膨らませ不機嫌になる。
それを見たロイは言う。
「おまえ、一応他国の王女だぞ。もっと気の利いた断り方しないと、ラナだから良いけどさ。」
「……。勿論僕もラナ王女だからこそスッパリ言ってるんだよ?親切心さ。」
細められた目に、ロイはため息をついた。
「おまえって本当変わらないよなぁー。俺は沢山の子と遊びたいけどなぁ。今日も部屋に女の子呼んでるけど、クリスも来る?」
「…いや遠慮しとくよ。君って変わってるよね本当。じゃあ、僕忙しいからまたね。」
颯爽と去っていく王子に、ラナがついて行こうとするのを、ロイは首根っこ掴んで止めた。
「何よ兄様、離してよ!今日を逃したら暫く会えなくなる!」
「やめとけ、何か機嫌があまり良くなさそうだ。これ以上突っ込むと再起不能にされるぞ。」
「~~っ。」
そのままロイはワインを片手に妹を引っ張って行った。
王子は足早に会場を進むと会場の出口へ向かう。そこへ従者が話しかけて来た。
「王子、如何されました?まだ他国の王族方とのご挨拶が…。それにウェルネス侯爵も…」
「……。いや、何でもないよ。少し頭を冷やしたら戻るから。」
(無駄な押問答をして無駄に時間を費やした。マーガレットの様子が変だったのが引っかかっているというのに…。)
昔、マーガレットの具合が悪そうだった時僕は王宮を抜け出して華園へ探しに行った。
賓客の挨拶に連れ回されながら、窓の外を見た。儀式が終わった事を告げる花火が終わった後もマーガレットは帰ってこなくて。
何処かで倒れているんじゃないかと心配のあまり王宮を抜け出した。
帰ってきてから、かなりの勢いで父上に叱られた後、部屋で泣きながらマーガレットに抱きついていた。
『父上はわからず屋だ。神様のごかごがあるから。マーガレットが大丈夫何て。目に見えないのに、なんでわかるんだよ』
『王子…。私の心配をしてくださったのはありがたいです。
でも、何を置いても公務を疎かにしてはいけませんよ。公務を大事にこなしてこそ、愛する国も、人々も守れるんです。
そうしたら、王子はきっと素敵な王様になれます。』
『マーガレットも守れるの?素敵な王様の方がマーガレットは好き?』
『はい。』
『マーガレットが僕の側にずっと居たいと思えるくらい?』
『ー・勿論です。王子。』
『じゃあ僕は、素敵な王様になるよ。
だからずっと、僕を見ていてね。』
そう言った僕の両頬を挟んで、マーガレットは微笑んでくれた。
王子は一旦息を深く吐いて、顔を両手で覆うと、次に手を離したときには冷静な表情で、王子は会場へ引き返していった。
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