孤高の皇帝は唯一欲した

マロン株式

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孤高の皇帝と隣国は終戦を迎える

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さらに月日は流れて、孤高の皇帝が即位してから15年余りが経過していた。

玉座奪還の鍵となった、
レヴァネル王国の侵略は、阻止したものの、未だ冷戦状態にありました。

あの時すぐに追い討ちをかけるだけの余力はフロイス皇国には残されていなかったのです。

けれども内政が落ち着くまで、警戒を怠る事なく、常にレヴァネル国の動向には目を光らせていたのでした。

どうやら、あの侵略の際
レヴァネル王国では派閥争いから、不穏な雰囲気が立ち込めていたという。

正妃の子を世継ぎにと担ぎ上げる皇族派。

側室の子を世継ぎにと担ぎ上げる貴族派。

それらを1つにまとめ上げる為に、レヴァネル王国の王は外に共通の目的を作らせました。

それがフロイス皇国を殲滅する事でした。

レヴァネル王国よりもフロイス皇国の方が気候にも領土にも恵まれていたため、侵略が叶った暁には

正妃の子にその国を治めさせたいと王が言ったそうです。

しかし、それは突如現れた孤高の皇帝により頓挫する事となりました。


レヴァネル王国はフロイス皇国との冷戦により逆にこの15年怯えて過ごしていた事でしょう。

向こうから宣戦布告をされて始まった戦争で、レヴァネル王国に攻め入る他国へ示す大義名分も充分ありました。

本来国力はフロイス皇国の方が上なだけに、復興が済んでしまえば、力を回復したフロイス皇国から攻め込まれてもおかしくはない状況なのでした。



そんなおり、レヴァネル王国から冷戦状態から降伏宣言を受けました。

レヴァネル王国から来た使者は、膝をついて孤高の皇帝に恐る恐る書簡を差し出した。

その手は恐怖故か、僅に震えていたが、そんな事で咎める程に、孤高の王は暇ではないとばかりに、周りの臣下に視線で黙っているよう目配せして

横に控えていた大臣が、内容を読み上げるのをただ座して待っていました。


「フロイス皇国 皇帝陛下に申し上げます。


我 この度新たに即位したレヴァネル王国

第7代国王 ニーニャ・ルイス・レヴァネル

先日崩御された第6代国王ガノン・ルイス・レヴァネルより続いた

15年余りの冷戦、我らレヴァネル王国は全面降伏を申し上げます」

ここまでの内容に、宮殿内は騒めき始めた。

孤高の皇帝は眉一つ動かさない。


今の文書で、明らかになったのは、レヴァネル王国の世継ぎが正妃の子になった事。

だがそれは、決して本人も一族も望まない即位になっただろう。

即位後すぐに、この決断が出来たのは敵国の王としても感服に値する。

何故ならば、敗戦国の王は、その首を差し出せと言われてもおかしくは無いからだ。

(前王の失政の責を

背負わされる羽目になるとは、何とも貧乏くじを引かされてしまったものだ。
まぁ、余程覚悟はしているようだ。)

かつての自分を思い出す。
先代達が積み重ねてきた、積もり積もった失政の責、怨念を背負わされ、処刑された自分の兄妹達を。

(この王は悪くなさそうだ。
王の首を跳ねて、後に愚かな王が即位すればまた問題を起こさないとも限らない。

かと言って 

それなりの代償を払わせ無ければ、侵略行為で親兄弟を殺された民への示しはつかぬだろう。)


皇帝は玉座の肘おきの上に置いた手の人差し指で肘おきを
トン…トン…とたたき、物思いにふけった。


(さて、どうしたものか…)


大臣は2つ目に続いた書簡を広げて声を張り
読み上げる。


「降伏の条件は


・第7代国王を、処刑台にて公開処刑にすること


それのみでどうか、納めてくださいませんでしょうか。

我が、この度の戦を仕掛けるよう前王に囁かなければ、前王は貴国に何もしなかった。


それを国民に広めてくだされば良いでしょう。


故に、その捌きを我が受けたく存じます。

降伏するにあたり、申し上げる立場では無いと重々承知ではありますが

されども我の覚悟の上に、哀れむ慈悲がありましたなら

我の願いを聞いては頂けたないでしょうか。」




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