風吹く日、君と出会う春

大井 芽茜

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第2話 初めての部活

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 ――次の日。


「ようこそー! 陸上部へ!!  」
 ミーティング室に行くと、案内してくれた先輩が40人以上の部員を連れて歓迎してくれた。


「なぁ雨季、あれって新入生か……?」
「恐らく。」
 俺と晴矢以外にも、新入生らしき人達が囲まれている。

 ザッと15人はいるように見えるし……女子の姿もあったので晴矢は嬉しそうに見とれていた。


「僕は部長の河田河田かわたね。皆からは、部長って言われてるけど、好きにしてくれたらいいよ。」

 部長は、ははっと笑いながら挨拶を改めてしてくれた。暫く挨拶や話をしていると、もう1人の先輩が走ってくる。


「……部長、呼んできました!」
「ありがとう。じゃあ、新入生の皆さんは先輩が並んでいるから隣に行って待機してね。」

「「はい!」」
 部長の言われた通り、円状を作るように並んでいた。
  その後、サングラスをかけた男の先生が2人。女の先生が1人やってきた。


「「こんにちは!!」」
 先輩達の顔は、穏やかな顔から急に真剣な顔つきになった。
 まるで軍隊のように息を合わせて挨拶をする。


「こっにちは!」
 俺達も慌てながらに続いていく。


(ちょっとこわいな)
 何もしていないのに威圧が凄い。身震いを感じながらも背筋に力をいれた。



 先輩達が何かの報告をし終わると、1人の男の先生がサングラスを外した。

「はい、こんにちは。えっ……と、じゃあ。まずは新入生の皆さん。まずは来てくれてありがとう」
 この先生が代表だろう。2人の先生は後ろに下がっているし。


「じゃあ、新入生も挨拶をしてもらおうかな。名前と希望種目。まだ決めてなくてもいいから。じゃあ君から。」


 スっと、晴矢の方に手を向ける。
「っはい! 杉縁 晴矢、希望はハードルです!!」

「おー!」
「悪いな。1人貰ったわ」
「はいはい。まけんなよ?」
 晴矢は目を輝かせながら話し、先輩達はワイワイと所属争いに盛り上がっていた。

 さっきまでの空気が嘘のようだな。


「――はい、宜しくね。拍手。」
 晴矢が挨拶を終えると、次は俺の番らしい。一斉に俺に向かって視線を向けた。


「三須輝 雨季です。希望は……」
 ゴクッと唾を飲み込み、


「マネージャーをしたいと思っています。」
「――っ!?」

 一瞬、意外だという空気が流れた。部長達も目を丸くしているし気まずい。


 どうしようと考えていると、女の先生の笑い声が聞こえてきた。
「いいねぇ、面白いじゃん!ね、先生。」
「そうですね。君、力仕事は任せたぞ?」


 後ろの先生達が笑いながらヤジをとばすと、それに吊られるように、皆の口角が緩くなった。


「……は、っはい!」

 先輩達からの暖かい拍手も巻き起こり、落ち着きを取り戻しながら礼をする。

 俺がここに居てもいいと、皆が認めてくれたように感じた。


「よし、期待してるからな。はい次。」
 1番前の先生も、笑いながらに次の番に振る。



「これで終わります。ありがとうございました。」
「「ありがとうございました!」」

 そのまま、ミーティングは和やかな雰囲気で終わりになった。


 後ろにいた背の高い男の人が徳永先生。女の人が石井先生。
 そして、真ん中に居たのが藤田先生だと挨拶してくれた。

 マネージャーとして、覚えないといけないのは分かっているがすぐに忘れそうだ。



「今から、ブロックごとの行動になります。長距離は徳永先生。短距離は石井先生。跳躍、投擲は藤田先生の所に集合してください。マネージャーは待機で。」

「「はい!」」
 俺と晴矢は、やっと終わったーと一息ついていた。


(いや、俺……石井先生が担当とか、めっちゃ良くね?可愛いし。)
(当たりかもな。)


(よっしゃ!! じゃあ、行ってくるわ!)
  晴矢は嬉しそうに集合に向かい、俺は言われた通りに待機していた。


「君がマネージャーよね。」
「あっはい。そうです。」

 女の先輩達が俺の顔を珍しそうにジロジロと見ていた。
「よし、じゃあ早速準備するから手伝ってね。」
「分かりました。」


 氷を製氷機から取り出す時のルールや、差し入れ、道具など色々と説明を聞きながら手伝いを始める。


「でもさ、男子のマネージャーとか初だよね。」
「ね。いっつも毎年、絶対に1人は女の子が来てたけど……雨季くんはレアって事だ。」


「そうなんですかね……?」
 マネージャーは3年の先輩2人と


「でも、男の手が欲しいって言ってましたよね! えっと、雨季くん。これもってね。」
「はい!」
 2年生の先輩が1人いて、俺を合わせて4人になるようだ。


 女子特有のノリについていけるかは不安だが……マネージャーとして頑張っていこう。


「パーッとマネージャー会でもする!?」
「なんか新鮮かも!! 」 

 
 俺は静かに決意した。周りは盛り上がっているが。


「今日は、荷物の確認するから一緒に手伝ってね。」
「はい!」
 部室から、大きな鞄を貰い用具入れまで運んでいく。


「これを開けて確認してて。私は、こっちやるから。」
 どうやら、シーズンも速く大会が始まるらしく、荷物の確認をテキパキとしている。

 横断幕や、旗。後は記録報告書やカメラなどが入っていた。
 たまに、ぬいぐるみやらよく分からないものがあるけど……



「ああああぁぁ!!」
「???」

 外からは、うめき声やら叫び声が聞こえてくる。一体何をさせられているんだろうな。



「いやー、やっぱり男の子は力あるねーー。」
「3人がかりで持ち上げてたから、助かるよ。」
 短時間だが、少しずつ先輩達にも気に入られたようで安心した。
  男だからと嫌われたりするかも…?と思ったがそんな雰囲気は無い。


「ありがとうございます! 次は何をすれば?」
その後も、言われた通りに辺りを走り回り荷物置き場に鞄をおく。


「よーし、終わり」
  その声と共に準備が終わった。

  先輩達は、時間潰しのためかは分からないが草をむしっていたので、ヘトヘトの晴矢を見ながら一緒にむしっていた。


「あっそうだ。雨季くん。学校とかで分からない事とかない?」
「暇だしね。何でも聞いてよー」


 分からない事か、何でもいいと言われても。

 いやっ
「どした?」

 昨日に見た人影が、あの光景が俺の中で焼き付いて離れない。



「じゃあ、1つだけ………」
「うん。」


「屋上って誰かいるんですか? そのー、部活とか。」
「っえ?」
 顔をあげると、先輩達がキョトンとした顔で見つめていた。


「そのーー、昨日人影を見たんです!」
 身振り手振りで、必死に伝えようとしたが伝わっていないようだ。
 眉をひそめながら顔を見合わしている。


「髪の長っ…」
「雨季くん。」
 先輩達は、うん。と頷きあって口を開いた。

「はいっ」
「屋上ってソーラーパネルがある場所でしょ?あそこは危険だし、入れないわよ。」


「……え?」
 じゃあ、あれは


「裏口とかはあるみたいだけど、作業員の人しか入れないし。あぁ、でも3階の1部がベランダだけど、それかな?」

「でも、トラックからは見えますかね?」


 先輩によると時計の横にある場所には基本的に入れないようだ。


「うーん。私達が知ってるのはこのくらいかな。 まぁグルっと校舎を回ればいいよ。本当に屋上無いから。」

「もし、ベランダなら私達に言ってくれたら一緒に行くわよ?」
「1年生は行きにくいもんね。」

 先輩達は、申し訳なさそうに教えてくれた。3年間もいたんだし本当の事だと思う。

 やっぱり見間違いか。


「なんか、ごめんね。」
「っいえ。ありがとうございました。俺、疲れているみたいなんで今日は速く寝ます。」
 俺は軽く誤魔化す。


「睡眠は、マネージャーも取らなきゃね! タイム測る時にボケてたら駄目だし」
 その後、先輩達とは気まずい空気にならず楽しく話しながら時間を過ごした。



「礼!」
「「ありがとうございました!」」
 部活が終わり、俺は晴矢を引きずるように自転車置き場へ向かった。


「じゃあ……またっ、ぅ…明日な。」
「あっ、ああ。死ぬなよ。」

 死にかけの晴矢を見送り、もう一度屋上らしきものを見たが何も無かった。


「……。」
(やっぱり気のせいか)



 俺は、首を振りチャリに手をかけた。


 
 ――その時
『ねぇ、君見えているの?』
「ーっ!!」


 キッとブレーキをかけ周りを確認した。しかし、学校にも周りにも人影は


「誰?」
 暫く待ってみても何も聞こえない。


「雨季、何してるんだ?険しい顔して。」
 気がつくと、部長が心配そうに俺をみていた。


「っいえ。」
「今日は疲れただろう?早く帰った方がいいよ。」


 きっと、気のせ……気のせいに決まっている。
「あっはい! お疲れ様でした!」



 俺は、混乱しながらも家に帰った。
「おかえりなさい!」
「ただいまー」

 家に帰ってからも、あの透き通る声が頭に残っている。考えれば考えるほど離れてくれない。

 1つ解決したら1つ謎が残る。なんて事だ。


「ああっもう。」
 明日、屋上を探してみよう。先輩に無いと言われても……心の整理の為だ。



 平凡に生きるために、自分の中で踏ん切りをつけるために。
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