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第1章

5話

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「雇っていただけるんですか!」


衣料品店、雑貨店に続いて…3軒目のレストランで、やっと働かせて貰えることになった。


「あぁ。皿洗いが1人辞めちまってねぇ、誰でもできる簡単な仕事だよ。そんなに給料はよくないけど、いいかい?」

「はい!私は“イシス”です。女将さん、よろしくお願いします!」



───────



こうして、私はレストラン『シャンテ』で働き出した。
週に3日、伯爵家に全くバレることなく…もう1年以上お世話になっている。


女将さんのライラさん、旦那さんのロイドさん、イケメンな息子のサイラスさん、美人で明るい娘のクリステルさん、皆さんとっても優しいです!

まぁ…伯爵家の者たちと比較したら、どこを見てもいい人しかいないんですけどね。


しかも、お昼の賄い付きなんて…もう最高。


厨房の隅っこで、ロイドさんやサイラスさんの調理姿を見ながら…いつもたっぷり美味しくいただいてます。

私の栄養状態、かなり改善されました!
女性として気になる“お胸”は…クリステルさんの3分の1くらいしかないのでまだまだ寂しいですけど…。





「いらっしゃいませー」


忙しいランチタイム、クリステルさんの美声が店内に響く。


私が一生懸命に洗い物をしていると…ふと…背中に視線を感じた。気になって振り返る。
カウンター席に座る男性が、こちらを見ていた気がするけれど…勘違いかもしれない。


洗い場は、カウンター席から見ようと思えば見える。ただ、見えても私の後ろ姿のみ。

クリステルさんのようなボン・キュッ・ボンなら後ろ姿も魅力的だと思うけれど、私のような痩せっぽち女の後ろ姿には哀愁しか漂ってはいない…。

うん、間違いなく気のせいだわ。



──────────



「では、失礼します」


はぁ…今日も忙しかったぁ…。


初めて洗い場で大量のお皿やカップを洗った日、指がフヤケてシワシワになっていたことを思い出す。

女将さんには手袋をしろと言われたけど…細過ぎる私の指には手袋がブカブカで、上手く扱えずにお皿を割ってしまった。
当然、弁償しなければならない。つまり、稼いだお金が減るのだ…悲し過ぎる。

それからは、魔術で手指を保護して素手で洗っているから何の問題もない。




店の裏口から出て、首や肩を回しながら数歩歩いたところで…声をかけられた。


「ちょっと…いいかな?」

「…え?…私…?」


あれ、この人…カウンター席にいた男性では?
私は訝しげに首を傾げ…男性を見る。


「いや…怪しい者ではない。この前、ここで私とぶつかっただろう?覚えていないか?」


裏口の前で、私とぶつかった…?


「あっ!!…あの時の…?」

「よかった…覚えていてくれたか…」

「すみません。急いでいたもので、申し訳ありませんでした。それで、私に…何か?」


まさか、怪我をしたから慰謝料くれとか?!どうしよう!!


「立ち話ではちょっと…。時間があるなら、広場のベンチにでも座って話さないか?」


広場なら人目もあるから安心ね。

それに、この男性…言葉遣いも丁寧で、身なりもちゃんとしている。
何より常識がありそうだし、慰謝料の線は薄いと見た。


「少しなら…大丈夫ですよ」







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