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黒猫(*少しだけです)
しおりを挟むヒヨリもライトもびっくりしてる。
この世界に来て俺はキスに対するハードルがもの凄く低くなっている。が、それより今は。
問題は。
「そう、問題は誰が、魔法陣を渡し、呪文を教えたかという事です。……が」
キールは疲れた様に溜息を吐いた。
「大体分かります」
「だから面倒なんだよ」
リロイもうんざりした様に言った。彼はクライヴさんの雇主でもあるから責任を感じてるみたいだ。
俺たちは、角に控えているクライヴさんに目を向けた。
「昔、婚約者が消えてしまいましてね」
亡くなったと聞いたが、やはり事実は彼の中で捻じ曲がっている。いや、彼にとってはその方が正しいのか。
「成功する事は難しいと言われたのですが」
クライヴさんは、クリスタルのゴツい灰皿の中の燃えカスをずっと見てる。多分あれが、魔法陣。使い終えると燃えちゃうんだな。燃えカスになったので、どんな模様が描かれていたのかは分からない。
「処罰はどうする」
「処罰?!」
どういう事?! これって刑罰に値するのか?
びっくりしたが、驚いた俺に彼らの方が驚いたみたい。
「召喚は禁止されてますからね」
そうだ。ぐっちゃぐちゃになるんだった。
「法律もありますが、多分使われた魔法陣は最近発見されたものである可能性が高いので、法律には引っかからない事も考えられますが」
「もっと大掛かりなんだ。あんなもので出来るものではない」
「あ、満月?!」
凄い事思い付いたと思ったが、皆んな考えていたらしく。これも弱いのか。熟考の余地ありというところらしい。
「まぁ、被害者はお前たちだ。お前たちが決めれば良いんじゃないか。人が死んでなきゃ、大概収まる」
うん。さすがの安定のグエン。王子様がこれで良いのかなあ? と言う気がしないではないが。ぶれないわ。チャラ王子。
「俺は被害者だと思ってないよ。こっちの世界の方が段違いで楽しいし。来れて良かった位」
魔法で空を飛べる。あんまり使っちゃいけないらしいが、瞬間移動も。
「僕も。さっき言ったけどライトと一緒ならなんでも」
「俺も。うち兄貴がいるし。問題ない」
この二人ラブラブか。そのせいかライトが俺を見る目が剣呑で。絶対、誤解してるよな。
一時期そう言う勘違いもあったが、俺とヒヨリの間に、恋愛感情はない。恋愛感情なくても、ヒヨリは俺の最愛なんだが。
リロイも何かじと目なんだよな。俺の気のせいじゃないだろう。
何を言っても、誤解は解けそうにないので放っとこう。あっちもこっちも。
こういうのは、誤解されてた方が面白いし。
それより、気になるのは二人の年齢差。ライトはどう見ても中学生なんだな。
だが、異世界の方々はそれより気になる事が何ある様で。
「本当に許していいのか」
「何で?」
クライヴさんのは、妄執だと思う。それに他人を巻き込むのは間違いなんだろう、確かに。
でも、その妄執は俺にもあった。
同じ妄執を持ってた。
同じ妄執を持ってた俺だから、呼ばれたんだと思う。
何か、間違った、行き場のない妄執。
俺にはもうそれはないけれど。
彼の妄執が俺の妄執とリンクしただけならば、俺は彼を責められない。
結局、クライヴさんの身の振り方は保留と言う事で。どの道ここではクライヴさんがいないと俺たちの生活が成り立たない。あっという間に、飢える。
という事で、俺たちは疲れたので寝ます。
ヒヨリとライトは俺の部屋で一緒に寝る事になった。窓際にライト、真ん中ヒヨリで、俺。キングサイズのベッドは余裕でございます。
もっと喋りたかったが、ヒヨリとライトはこっち来るまでも色々大変だったらしく、横になった途端、眠ってしまった。
俺も疲れたが精神的なもので今日は殆ど動いてないからあまり眠くない。そう言や、一日酷い頭痛だったのだ。
あれは何だったんだろう?
魔法陣使いながら呪文唱えたのが、何か来てたのかな。
何で俺だけ?
こっち来たのが多分、同じ状況だろうから、何か作用すんのか?
考えれば考える程、分からなくなるな。
大体俺は、魔法なんてこっち来てからなんだから、魔法的思考と言うものが分からない。
?
魔法的思考って何?
自分で考えて訳分からなくなる。
眠くなんないなあ。
どうしようか。
思い悩んで益々頭が冴えてきたところに、寝室のドアが勝手に開いた。
「みゃぁお」
ドアの隙間から黒猫が入って来る。
何だ?!
ファンタジーの次はオカルトか?!
公爵家別邸が俺の頭でホラーの様相を呈して来た。
黒猫の後ろから、リロイが入って来る。
見てる間に傍まで来て、俺を見下ろす。
え~っと、寝たふりすれば良かった?
黙ったまんまでじっと見つめ合う。彼は左手を伸ばして来て俺の頭を撫でた。
やっぱりオカルト?! ホラー?!
リロイはどういう役柄設定?!
阿呆な事を考えてると、彼は俺の顔を両手で挟んで覆いかぶさって来て、静かに俺に口付けた。
ラブ・ロマンスだったみたい。
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