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馬車の中
しおりを挟む「この国を気に入ってくれると嬉しいな」
弟と容姿はとてもよく似ているのに、醸し出す雰囲気が真逆の陛下(威厳があり信頼できるって意味だ)が、最後にお墨付きと言って良い様な言葉をくれた。
これは俺たちオッケーって事で良いよね?
良かった。国王陛下に良い印象を与えたようだ。どうでもいいっちゃいいんだけど、お爺ちゃんに迷惑かけるのは嫌だったので胸を撫で下ろす。
国王陛下に気に入られれば、後の連中はそれに倣って俺たちへの警戒心を解くだろうと、思惑があったらしい。それにしても、それでもよく、王女様王子様まで会わせてくれたと思う。
「私と陛下はあの森で逢ったの」
王妃様は妖精の森近くに別荘を持っている貴族の令嬢で、度々避暑やなんかで訪れていて何にも怖い目にあった事がないので、妖精の森に対する偏見みたいのがないんだとか。これはグエンやリロイと同じだ。
それどころか、お二人が出逢った思い出の場所となれば、その妖精の森に対する偏見が悩ましくもあるんだろう。
これは何か、国のトップとしてじゃなく、新しくやって来た隣人として気に掛けてもらってるってことかな。
本当に大歓迎を受けて、予定になかった昼食までご馳走になった。それどころか、夕食も、いやいっそ泊まってけとまで言われたのだがさすがにそれは辞退した。執事さんや侍女さんたちもにこやかに応対してくれて、そこら辺も居心地良かった。
外に出るとまだ日は高いので、当初の予定通り城下町を訪れる事になって、俺たちのテンションは上がる。道中は馬車で、それだけでもテーマパークで遊んでる気分だ。
でもこの位置関係が。いつの間に……。
正面に、キール、ライト、ヒヨリで。俺は反対側に、左のリロイ右のグエンに挟まれている。そんでもって二人にお手手握られている。なんでだ。
「ライト、席替わんない?」
「やだ」
俺の提案を、ライトは食い気味に一刀両断する。
「こっち進行方向だぞ」
「リロイ、リョウが嫌がってるぞ」
「お前だろ」
グエンは完全に揶揄ってる調子だが、リロイはあからさまに不機嫌だ。
馬車に乗る時から既に陣取り合戦始まってたのか? 気付かなかった。
「リョウはリロイと付き合ってるの?」
ヒヨリが訊いて来た。フツーに。
「っ!」
ど直球の質問に言葉を失う。今まで誤魔化してたのに、誤魔化しきれなかったか。当たり前か。キールが窓の方を向いて笑いを噛み殺してるのが目の端に入る。因みにライトはどちらとも手を繋いでいない。
「付き合ってる」
リロイもど直球で答えるのでびっくりして手を引こうとしたら、逆に強く握り込まれてしまった。
「グ、グエンは大丈夫なのか? 町に出て」
俺はわざとらしく話を逸らそうとして声がひっくり返ってしまった。グエンもキールと同じ様な表情で笑っている。
「ごめん、リョウ。リロイがこんなの初めてで。面白くて」
「いいなぁ、運命の赤い糸で結ばれてて」
「だったら、その手を離せよ」
「いいじゃないか。これ以上の事しないぞ?」
「当たり前だ」
もしかして、あの森で陛下と王妃様も赤い糸を見たのかな?
「この人は大丈夫ですよ。顔はばれてますが、誰も誘拐しようとは思いませんから」
さっきの無理くりの話題転換にキールが律儀に答えてくれる。
「国はこいつに金を払わん」
「まあ、私怨で襲って来る者は居るかもせれませんが」
「モテる男は辛い。あぁ、つらい」
「敵対してる他所の国とかも?」
「こんなの盾に取ったら国の威信に関わる」
リロイを影武者にして一体何をしたんだろう?
「普段の善行のお陰だ」
おどけて王子様はウィンクして見せた。善行の意味が異世界だと違って来るのか?
ずっとこんななのかな?
ずっとこんななだろうな……。
「お、着いたぞ」
何の衝撃もなく馬車は停まり、扉が開けられた。冷たいけれど新しい空気が入って来る。
外はまだ夕暮れに差し掛かってない。
この町に俺たちは魔女に会いに来たのだ。
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