星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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 ジョバンニ=カスティーリャ。
 そう紹介された彼は、パーティーの中心に居た人物。彼は前公爵ーーお爺ちゃんに対し礼を取った。気障でも様になってる。
 絶対、ラテン系だよ。人種じゃなく、キャラが。
 お爺ちゃんとリロイにはほぼ礼儀通りの礼だったが……。
 次のキールの時には、手を取りーー。
 何でか、両手で両手を取り、口付けた。
 俺は目も口もあんぐりと開けてしまった。
 彼はキールの次にヒヨリ、ライトにも同じ事をして、最後に俺のとこまで来た。
 え~、と。
 まさか俺にまで? と思ってたら、避ける間もなく手を取られた。
 大人の色気ってこういうのか。
 視線を外さず絡めて来る。
 俺の反応が遅かったわけではないと思う。リロイが彼の手をパシッと音を立てて叩いたのは俺が口付けられた後だったから。優雅に動いてる様に見えて素速い。人を口説くのにムダな動きがない。
 これがモテ男の間というものだろうか。
 それともあの目には人の神経を麻痺させる作用があるに違いない。

 モテたいとは思ったけど、俺のモテ方の想像と違う。
 モテを奪われた人物からモテるって。異世界BLってこういう事か。
 リロイが憤怒の形相になっているのが、彼を見なくても伝わって来る。それは周りの人間も気付く様で場が急に冷えた。
 俺は自分がちゃんと男のつもりなので、これは女の子ポジション、てカンジでそれも嫌なんだよな。
 

「さあさ! ご挨拶はこれぐらいで! とっても素敵な物が手に入りましてね! それのお披露目と参りましょ!!」
 いい具合にマーカス夫人が流れを変えてくれる。
 そうだ。俺はメインじゃない。
 メインイベントはこれからだ。それで皆んながこの事を忘れてくれます様に、誰かにお願いしとこ。



 スポットライトも当たってないのに当たってるカンジと言えばいいだろうか。人では無いのにそれは中心になっていた。
 部屋の何段かの低い階段が設られている場所がありーー普段は偉い人の挨拶やらスピーチやらが行われているであろう場所に、小さなテーブルの様な台があり、その上に煌びやかな布を被せられて、それは勿体つけていた。
 本日の主役であろう、マーカス家令嬢に剝ぎ取られるのを待っている。
 マーカス家令嬢はホントに夫人が産んだんだろうか? というくらい可愛い。というか、母親の印象が強過ぎて逆に可愛く見えてしまうというか。髪色と瞳の色は同じだが、これを体脂肪率何十%にしたら夫人になるのだろうか? 疑問を見透かされたらしく、ドレーク伯爵夫人が、
「ちゃんと血は繋がってるわよ」
 耳打ちして来た。勿論当のご本人たちに聞こえない様に。
 彼女も子供産んで育ててる内に母親の様になってしまうんだろうか。もしかしてそれを想像されて婚期を逃しつつあるんじゃ。
 その可憐な御令嬢がこんなあからさまで良いの? というくらいうっとりと彼を見詰めてる。彼、ジョバンニ=カスティーリャを。

 ライトが袖をツンツンして来たので何だろうと思って彼の示す方を見ると、何とマーカス家御令嬢と同じ表情になってる人物が居た。お馴染みのリズベスト伯爵夫人だ。
「わぁお」
 そして対象者も御令嬢と同じときては。
 メリー・ウィドウを見ると、忌々しいとか苦々しいという形容の表情をしていた。
 成る程、これがリズベスト伯爵夫人がここに居て後の二人が欠席してる理由か。
 大丈夫なのか? 周りの人たちがヒソヒソしている。こんなゴシップがあるとは、俺たちが全く注目されない訳だ。

 それでも令嬢は彼から目を離さなかったが、母親に促され漸っと自分の役目を思い出す。

「今日は伯爵様にプレゼントがございますの」
 ピンク色に頬を染めて、リリー=マーカス公爵令嬢は台座の上の布に手を掛けた。
 するり、布が取られ。
 そのまま、はらり、と床に落ちた。

 台の上には更に仰々しい台座があり、大きな水晶玉が収まっていた。
 窓のガラスから光が通り水晶玉をキラキラと反射している。
 無色透明なそれは、一番近くに居る令嬢の衣装を映して、赤いモザイクになっている。
 現れた時は一瞬シンとなったが、まぁ、ただの水晶玉らしく、光を反射してキレイはキレイだが、それだけなので……。
 皆んな心持ちは一緒だったろう。
 だから? で?
 俺たちはギャラリーであって、メインでも司会進行役でもないので、それを担っている人に解説なんなりお願いしたいんだけど。
 布取り払ったご令嬢も、人任せの雰囲気だが、どうするんだろう? と思ってたら、救けは現れた。

 「これは!!」
 オーバーアクションで前に進み出たのは、かのジョバンニ=カスティーリャ氏だった。
 やっぱりだった。
 そうなのだ。
 主役はこの人なのだ。
 主役は彼だという長い前置きなんだろうな。

 主役の彼は少し台座の上の水晶玉から距離を取ったところでそれをしげしげと眺め、皆の注目を一身に浴びて暫し、大きく息を吐いて宣った。

「龍の首の玉ですね!!」

 はい?









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