星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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月の神

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「王妃様?」
 グエンとキールに挟まれているのは王妃様だった。でもなんか違う?
 聞きたい事は山程。
 ここ何処?

 地球が二つあるのもおかしいし、その二つの地球がくっ付きそうなくらい近くて。それはそれで重力とかでヤバい事になるんじゃないの?
 俺が心配するようなことでもないんだけどもさ。
「ここ、月なんだって」
 ヒヨリが淡々と言う。
「月?」
 予想はついたけど地球が月の様に見えてる時点で。でも月はこんなじゃない。岩だけのクレーターでボコボコで、風も吹かないし花なんか咲いてないしそもそも息なんか出来るわけ……。

 そうだ、でも異世界はあったんだ。
 ちょっとずつ違うけど、良く似ている、こっちの方が好いかも、と思えるような世界。魔法の使える、でも価値観は俺たちの世界とそう変わらない。いや、理想とするものなら同じなんじゃないかと思えるような。
 だから、月に空気があって風が吹いて花が咲いてて、兎がクレーターの形作る影ではなく、可愛いサイズで白くてヒヨリに抱かれてても何も問題はない。……ないよね?

「まだ皆既月食の途中だよ」
「地球二つくっ付くんだって」
 ライトとヒヨリがかわるがわる喋る。
 もう何も驚かないぞ。ていうか何にどう驚いていいのかも分からん。

「あ!」
 唐突に俺は思い出した。
「皆んな怪我は?!」
 リロイは天井と床に打ち付けられ骨も下手をすれば内臓もボロボロになっていてもおかしくはない衝撃を受けている筈だ。

 リロイはにっこりと笑った。
「大丈夫。どこも痛くない」
 本当なんだろうな。なんか見たことのない穏やかな笑顔だ。髪も服もぐしゃぐしゃでボロボロだけど、顔の血色は良いし痛そうなカンジはない。
 月の恩恵なのか?
「皆んなは? 俺たちだけ?」
 俺は王妃様に似た王妃様にしか見えない女性に目を向けて、気に掛かってる別の事を訊いた。ライトが答える。
「俺たちだけだよ。彼も居るけど」
 ライトとヒヨリ、グエンとキール、リロイと俺、そして少し離れた所でさっきまでの俺の様にまだ寝ている男、俺に斧を突き立てたジョバンニ=カスティーリャ。
「7人だけ」
「中心あった方が安定が良いんだ。違う者が来る筈だったんだが、間に合わなくてね」
 王妃様ーーに似た人は何故かキールの方を見て言った。そして俺を見、
「久し振りだ。初めましてでもあるが」
「王妃様じゃないですよね?」
 代わりに答えたのはライトだ。
「月の女神さまなんだって」
 そんな気はしたけど……。
「あの土地は繋がり易くて、この姿でという意味なんだが。影響が強く出る」
 王妃様の故郷だと聞いた。妖精の森の近く。
「君たちの世界では違う姿だよ。元居た世界の君たちの国では、こんな」
 そう言うと、キラキラの光の粒子が彼女の頭上からクルクル舞い始め、次第にそれは彼女の姿全てを覆い、やがて消えていく。
 そして光の中から現れたのは、男の人だった。
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