星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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約束(最終話・エピローグ0)

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 俺たちが月から見ているその内に、地球は一つに重なった。

 完全に一つになって回転を止め動かなくなると、金色した光の粒子がキラキラし始めてくるくると渦を巻きながら一つになった地球を覆い始める。

 それと同時に、俺たちの頭上にも光が溢れて降り注いで来た。

「もうそろそろ帰りなさい」
 神さまの言葉に最初に立ち上がったのはグエンだ。つられて俺たちも立ち上がる。
 帰りたくない様な、早く帰りたい様な。

「また会える?」
 黒い深い瞳、黒い艶やかな神。聞き心地の好い声で神さまはにっこり微笑う。
「会えるよ」
「夜空を見上げれば、とかって言うんじゃなく」
「許可を与えれば、いつでも。本当はピースもタイミングも要らないんだ。会いたくなった時にもう条件は全て整っている。
 難しく考えなければ。
 報せが来た時にちゃんと受け取って」
 言いたい事はわかる。でも帰ったらまた、難しくなっちゃうんだ。難しく考えでしまう。

「彼は何処へ?」
 気を逸らす様に、ジョバンニを見る。
「それは彼自身が決めることだ」
 多分、一緒の所には帰らない。俺の心を見透かすように、
「彼の罪悪感が無くなるまで無理だ」
 神さまは言ったけど。罪悪感なんて彼にあるんだろうか。彼にも繭のように光が纏わり付き始めるのが見える。

 光が強くなって周りのものが見えなくなって来た。でもしっかり手を繋がれるている。右手をリロイに左手をヒヨリに。彼らのもう一方の手も誰かに繋がれているだろう。

 二つの地球はくっついてどうなるんだろう?

 光が眩し過ぎて目を閉じる。
 彼らを感じながら、俺は地球に戻った。


◇◆◇◆◇◆

(エピローグ0)

 とんでもない事になってた。
「どう言う事?」

 それしか出て来ない。

「木蓮のある所が祭祀をする場所で、奇跡が顕現する場所が泉ということか」
「クライヴさんが召喚魔法を使った時に、俺やヒヨリたちは泉の方に現れたよね」
 そう言えば。
 そういう事なんだろうけど。

 月から地球に戻って案の定、俺たちは〈女神の泉〉に居た。

 ただ、俺たちだけじゃなかった。

 大勢の人が居て。多分俺たちよりも自分の状況に混乱している。助かるのは混乱し過ぎているせいだろう、変に騒ぎ出すことがなかったことだ。
 老若男女。
 老いも若きも、男も女も。こちらの人間も、異世界人も居るみたいだ。
「ジョバンニは居ないみたいだな」
 グエンが珍しく深刻な声を出す。

 人だけじゃなく、ピアノやヴァイオリンなんかの楽器や、本なんかもある。
 それが泉に散乱している。
 本は山と積まれ、グランドピアノは泉の中に脚を半ば突っ込んでそこにある。

 誰かのシュールな絵のようだ。

「誰かの夢かな」
「何かの革命で燃されたやつじゃない?」
 ヒヨリが呟く。
「革命?」
 キールが聞き返す。
「少し前にお隣の国でね。少し前って言っても僕たちの生まれる何十年も前の話だけど」
 誰かが強く願ったのか、ひどく悲しんだのかも知れない。

 俺たちもどうして良いか決めかねていると、一人の品の良い老婦人がこちらに近づいて来た。
「リロイ?」
 彼女は彼だけを真っ直ぐ見つめ、名を呼んだ。
「似てるけどなんか違うわね。貴方は誰?」
 訝しげな顔をしていたリロイが、驚愕に目を開く。そして彼は叫んだね。
「お婆さまっ?!」
 俺は思い出していた。リロイとファーストネームどころかミドルネームまで一緒でーー勿論ファミリーネームもーー半世紀前に片翼を失くしてしまった人を。その悲しい話を。


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