星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ノエル

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エピローグ(3)ーー背面が得意な男。

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「あんたはバック取るの好きだよね」
「正面から行っても君に避けられるだけだからね。悲しい事に」


◇◆◇◆◇◆


 穏やかに晴れた休日だった。
 俺たちはーーライト、ヒヨリと俺は、のびのびになってるヒヨリの誕生日を祝う為の、諸々なもの色々なものを手に入れる為に城下街にやって来ていた。
 俺たちは昔からサプライズなんてしない。一緒に選ぶのも楽しいのでプレゼントをこれどう? なんて確認しながら買うんだ。勿論、ケーキも。
 で。
 大人な人達は皆忙しいし、俺たちも出来ることがあれば手伝うのだが、出来る事は一段落してーー〈妖精の森〉の〈女神の泉〉に現れた人々の身の振り方についての諸々、色々な事だーーヒヨリの誕生日もまだ祝えていなかったのでお休みを貰ったのだ。
 大人な人達は俺たち三人だけで出掛けるのを渋ったのだが、一連の事件も収まって王都の治安も安定してるし、防御魔法を掛ける事で許可が出た。

 ただ。
 忘れてた。
 そんな簡単な防御魔法なんて、魔力の強い三つも属性持ってる人間に効く筈なく、しかもその人間は一番俺たちに興味があるんだという事を。


◇◆◇◆◇◆


「もしかしてずっと張ってた?」
「根気いいだろう?」
「そういう問題でなく」
 暢気な外出に現れたのは、ジョバンニ=カスティーリャだった。
 顔の半分を仮面みたいな眼帯で覆い、左は杖を突いてる。
「何処に戻ったの?」
 あの、月から。
 二つの地球が見えた月から。
「普通に家で目覚めたな」

「ストッパー付いてないんじゃないの?」
 またしても魔法なしで、三人とっ捕まってしまってヒヨリは怒ってる。
「ストッパー?」
「体に負担が掛かるから、力を出せない様に脳にはストッパーが付いててーーえーっと何だっけ?」
 ライトはイジイジしながら砂糖を入れた紅茶をスプーンでぐるぐるかき回してる。
 俺はーー俺はただ紅茶を頂いてる。

 前もあったな。王宮の宝物庫で。
 三人してとっ捕まって逃げられなかった事。
 今回は誰も怪我してる人もなく、カフェでお茶頂いてるのは良かった。ジョバンニの奢りで。
 ?
 良いのか?

 休日の昼下がり、またしても魔法なしでジョバンニにとっ捕まった俺たちは、そのままカフェに連れ込まれお茶をご馳走になってた。
「もしかして、魔法使った後もあんまり疲れない?」
 あの皆既月蝕の恩恵の時だけでなく、この人は。
「ああ、昔はそうでも無かったが、最近は疲れないな」
「それって、魔力が強くなったりとか、属性が強くなったりとかしてから?」
 それなのに何で身体が不自由な感じになってるんだろう?
 俺の視線に気付いて、
「罰が当たったね」
 ふふふと笑う。でも今日は気持ち悪くない。狂人の笑いじゃない。
「それ変装じゃないんだ」
 仮面の様な、顔を半分覆う眼帯に、歳に似合わない杖。
「自分のやった事が全部身に返って来たみたいだね」
「でもあんたは誰も殺してない」

 昔の事は知らない。でも彼は人を殺してないんだ。今回に限って言えば。
 今回の、リズベスト夫人ーー元夫人かーーが死んだのは彼女自身のせいだし、怪我をした人間は大勢いたが誰も死んでないのに、彼は完全に殺人犯認定されていた。
 一連の爆破事件ーーダイナマイトが発明されて起こった金銭目的、怨恨やら地下組織の抗争やら愉快犯やら利己的な理由で引き起こされた事件の殆どにジョバンニは関係してないのに、彼の起こした事件がド派手だったせいか、何の証拠も無いのに完全に一連の爆破事件の首謀者にされていた。俺は彼のした事許せないけど、世間様、それは違うんじゃないの? って思う。警察の正式発表もないのに。
 良い事は彼は魔力量が半端なく多い上に三つも属性があるので、俺たちが掛けて貰った防御魔法なんかよりも強力な目眩しを施せるんであろうという事だ。
 見た目が以前より悪目立ちする様になってるのに。

「哀れに思うんだったら、私と一緒に来てくれないか?」
 う~ん、それも違うんじゃないの?
「三人ともでも良い」
 ウィンクも様になってるのが腹立たしい。
「そんな可愛い顔されたら、本気で攫っちゃうよ。私だけでなく、気を付けなさい」
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