星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

文字の大きさ
67 / 72

エピローグ(3)ーー背面が得意な男。

しおりを挟む

「あんたはバック取るの好きだよね」
「正面から行っても君に避けられるだけだからね。悲しい事に」


◇◆◇◆◇◆


 穏やかに晴れた休日だった。
 俺たちはーーライト、ヒヨリと俺は、のびのびになってるヒヨリの誕生日を祝う為の、諸々なもの色々なものを手に入れる為に城下街にやって来ていた。
 俺たちは昔からサプライズなんてしない。一緒に選ぶのも楽しいのでプレゼントをこれどう? なんて確認しながら買うんだ。勿論、ケーキも。
 で。
 大人な人達は皆忙しいし、俺たちも出来ることがあれば手伝うのだが、出来る事は一段落してーー〈妖精の森〉の〈女神の泉〉に現れた人々の身の振り方についての諸々、色々な事だーーヒヨリの誕生日もまだ祝えていなかったのでお休みを貰ったのだ。
 大人な人達は俺たち三人だけで出掛けるのを渋ったのだが、一連の事件も収まって王都の治安も安定してるし、防御魔法を掛ける事で許可が出た。

 ただ。
 忘れてた。
 そんな簡単な防御魔法なんて、魔力の強い三つも属性持ってる人間に効く筈なく、しかもその人間は一番俺たちに興味があるんだという事を。


◇◆◇◆◇◆


「もしかしてずっと張ってた?」
「根気いいだろう?」
「そういう問題でなく」
 暢気な外出に現れたのは、ジョバンニ=カスティーリャだった。
 顔の半分を仮面みたいな眼帯で覆い、左は杖を突いてる。
「何処に戻ったの?」
 あの、月から。
 二つの地球が見えた月から。
「普通に家で目覚めたな」

「ストッパー付いてないんじゃないの?」
 またしても魔法なしで、三人とっ捕まってしまってヒヨリは怒ってる。
「ストッパー?」
「体に負担が掛かるから、力を出せない様に脳にはストッパーが付いててーーえーっと何だっけ?」
 ライトはイジイジしながら砂糖を入れた紅茶をスプーンでぐるぐるかき回してる。
 俺はーー俺はただ紅茶を頂いてる。

 前もあったな。王宮の宝物庫で。
 三人してとっ捕まって逃げられなかった事。
 今回は誰も怪我してる人もなく、カフェでお茶頂いてるのは良かった。ジョバンニの奢りで。
 ?
 良いのか?

 休日の昼下がり、またしても魔法なしでジョバンニにとっ捕まった俺たちは、そのままカフェに連れ込まれお茶をご馳走になってた。
「もしかして、魔法使った後もあんまり疲れない?」
 あの皆既月蝕の恩恵の時だけでなく、この人は。
「ああ、昔はそうでも無かったが、最近は疲れないな」
「それって、魔力が強くなったりとか、属性が強くなったりとかしてから?」
 それなのに何で身体が不自由な感じになってるんだろう?
 俺の視線に気付いて、
「罰が当たったね」
 ふふふと笑う。でも今日は気持ち悪くない。狂人の笑いじゃない。
「それ変装じゃないんだ」
 仮面の様な、顔を半分覆う眼帯に、歳に似合わない杖。
「自分のやった事が全部身に返って来たみたいだね」
「でもあんたは誰も殺してない」

 昔の事は知らない。でも彼は人を殺してないんだ。今回に限って言えば。
 今回の、リズベスト夫人ーー元夫人かーーが死んだのは彼女自身のせいだし、怪我をした人間は大勢いたが誰も死んでないのに、彼は完全に殺人犯認定されていた。
 一連の爆破事件ーーダイナマイトが発明されて起こった金銭目的、怨恨やら地下組織の抗争やら愉快犯やら利己的な理由で引き起こされた事件の殆どにジョバンニは関係してないのに、彼の起こした事件がド派手だったせいか、何の証拠も無いのに完全に一連の爆破事件の首謀者にされていた。俺は彼のした事許せないけど、世間様、それは違うんじゃないの? って思う。警察の正式発表もないのに。
 良い事は彼は魔力量が半端なく多い上に三つも属性があるので、俺たちが掛けて貰った防御魔法なんかよりも強力な目眩しを施せるんであろうという事だ。
 見た目が以前より悪目立ちする様になってるのに。

「哀れに思うんだったら、私と一緒に来てくれないか?」
 う~ん、それも違うんじゃないの?
「三人ともでも良い」
 ウィンクも様になってるのが腹立たしい。
「そんな可愛い顔されたら、本気で攫っちゃうよ。私だけでなく、気を付けなさい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...