星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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エピローグ(4)ーー木漏れ日の下。

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 いつか見た夢の様に、花を通して陽の光が、皆んなの上にマーブル模様の影を描いている。
 俺たちに模様をつけているのは中央の大きな木で、これはやはり木蓮だった。一つの花に白と濃いピンクの花弁がついてる。
 その他にも花が咲いているが、多分俺たちが来た頃と咲いてる花は違ってる。俺には良く判らないけど。
 そして変わらず今日もその周りを魚たちが優雅に泳いでいる。

「これ恥ずかしいからやめてくんない?」
 ガッチリ俺の身体をホールドしているリロイの腕をツンツンする。
「嫌だ」
 幼少期のトラウマのせいか、元々執着心が強いのか。
 キッカケは外出先で、ジョバンニ=カスティーリャにお茶ご馳走になった事なんだが。
 話さなきゃよかったのだろーか。でも話さないのも変だし。
 俺たちの油断もあったから怒られるのは構わない。キールは怒るというより心配してくれたんだけど。リロイも心配だから怒るのだろうけど。
 あの拉致まがいに連れ込まれたカフェからそのまま拉致かと思ったらすんなり解放されて俺たちは。帰って大人な人達にその事を話して怒られ嗜められてから、リロイにずっと殆ど抱きつかれてる状態なのだ。

「やっぱり外出なんて許すんじゃなかった」
 上っ面だけの深刻な表情で、真似をしてる訳じゃないんだろうけど(見た事ないだろうし)、有名な彫刻の格好で宣う王太子殿下の外出許可は難なく出るみたいだけどね?!
 何故、一国の王太子殿下がこんなに自由を許されているのか?
 外出許可という概念すらこの人にはないんではなかろうか?
 魔法を掛けて周りから見えなくして守るという前提条件あったとしても放任過ぎないか?
 そこ迄になるどんな事してだんだろう?
 俺もそこ迄行けるのか?
 行ったら、お終いか?
 悩むな?

 クエスチョンマークだらけだな?!

「ヒヨリの誕生日パーティーの間だけでも離れてよ。あと好きにして良いから」
 恥ずかしいけどリロイの気持ちも解るし俺も悪い気はしないのでしたい様にさせてたが、もういい加減いいのじゃないのだろうか?

 ヒヨリの誕生日はとつくにすぎてしまっていた。
 が、状況が状況で大変だったし、ヒヨリはそんな事あんまり気にしない。パーティーなんて恥ずかしい、くらいに思ってるから、俺とライトだけなら良いんだろうけど。そういう事を何も言わなくても察してくれるお爺ちゃんやクライヴさんが慮って、最小人数での誕生日だ。

 今屋敷には俺たちしか居ない。
「久し振りに会いたいわあ。大きくなったでしょうね」
 息子に会いたい、ぽあぽあ言うお婆ちゃんの意を汲んで。と言うより、ヒヨリの意を汲んでお婆ちゃんがそう言ってくれたので、
「五十年経ちましたから」
 などと言う、可愛げのない孫息子を華麗に無視して、向こうが来れないんなら会いに行っちゃえばという事で、屋敷の者総出で公爵家領地に行ってしまった。

 長い間行方不明だった母上が現れても、領地を放ったらかしにして会いには来れない現公爵の息子の為、イヴとリリーの婚約の報告も兼ね屋敷の全ての者を連れて行ってしまったのだ。
 忙しくて休暇の取れない人々に慰労を兼ねた旅行だったりもする。仕事である事はあるんだけど皆ウキウキしてたな。それでも瑣末な雑事はあるらしいのだが、何かあったら直ぐ連絡取れるし、リロイとキールで事足りるらしい。

 料理人も全て居なくなって、今テーブルの上のご馳走はほぼお祝いされる本人の手作りだ。
「なんかやっぱりこっちの方がしっくり来る」
 ヒヨリは楽しそうだった。

「リロイは行かなくていいの?」
「ああ、イヴの婚約式だけ、こいつらと行って直ぐ帰って来る。お前は行かないのか? イヴもリリーもお前には出て欲しいんじゃないのか?」
「こっちでもやるでしょ?」
 この国の二つの公爵家が結び付くのだ、水面下でエラい騒ぎなのだ。それがまだ噂だった頃からえげつない駆け引きが行われててるらしい。謀略と言って良い。
 国を揺るがす大事件が起こってたのに。ま、やる事ない人はこっちの大事件に手を打つよな。暇だからただ祈ってるだけではこの世知辛い世の中生き残れないもんね。

 パーティーのメニューの大本命のケーキをテーブルの真ん中に据える。
 そんなに大きくはないチョコとホイップの茶色と白のケーキ。これもヒヨリのお手製だ。
「俺の知らないレパートリー増えてる」
 いつの間にか五つ上になって、いつの間にか背が高くなっていた幼馴染み。
 仲直りどころか二度と会えないと思っていた。
 蝋燭は歳の数立てない。
「ひと息に吹き消さないといけないのも一緒だな」
 こちらにも誕生日ケーキはあって、願い事しながら蝋燭の炎をひと息に吹き消すのも一緒。
「バースデー・ソング? はないですね」
 俺とライトで披露する予定だ。
 恥ずかしいけどこの面子ならいいか。
 頑張るよ、最愛の幼馴染みの為にね。









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