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第44話ー5
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夕餉と入浴を終えた夜9時前。
4階の階段脇にある、すっかり女王仕様にされた自室の中。
机に着き、積まれている書類一枚一枚に目を通し、カンクロ国の玉璽を押していくベル。
その手が、ふと止まった。
(ルフィーナ王妃陛下……)
その顔が脳裏に浮かぶ。
ここのところルフィーナの様子がどこかおかしいように感じていたが、リエンの言葉で確信した気がする。
(お子を産むことを戸惑っている……?)
部屋の扉が叩かれた。
「どうぞ」と返したら、フラヴィオが入ってきた。
「アモーレ、2時間後にはカンクロの朝廷だ」
「スィー」
「だからハイ」
と、フラヴィオがレットを叩く。
ベルに刹那の硬直が訪れた。
頬が染まる。
それがレットで『眠れ』の命ではないと分かる故に。
(ひ、久しぶりなのです……)
少しばかり照れ臭くて、ベルが机から離れられないでいると、フラヴィオの顔が悄気ていった。
「分かったのだ……」
「え?」
「余に抱かれたい気分ではないのだろう? リンリー殿がそんなことを言っていた。良いのだ、我慢するのだ」
と、フラヴィオが意気消沈してレットに横臥すると、ベルが少し狼狽して立ち上がった。
小走りでフラヴィオの下へ向かっていく。
「ち、違うのです、フラヴィオ様っ……」
「良いのだ、気にしないでくれ。少し仮眠を取ることにする」
とフラヴィオが目を閉じると、ベルが焦ってその肩を揺すった。
「フラヴィオ様、起きてください。フラヴィオ様っ……」
少ししてフラヴィオに目を空ける様子がないと分かると、ベルの唇が尖っていった。
肩を掴んで、仰向けにして、上に乗っかって、唇に唇を押し付ける。
フラヴィオが噴き出した。
「犯る気か?」
赤面しながらも「スィー」と返事をしたベルが、フラヴィオの衣類を脱がしていく。
こっちに帰って来てから見ていなかったわけではないが、芸術品のような身体が現れたら、指先が戸惑った。
どきどきしてしまって直視出来なくなり、思わず目を逸らしてしまう。
そしたら突如ぐるんと回って位置が変わり、フラヴィオが上になった。
少し鋭い碧眼に見下ろされたら、顔を通り越して耳まで熱くなっていく。
フラヴィオが「ふふふ」と笑った。
「母になっても女だな」
ベルがなんとなく「ごめんなさい」と呟く。
「何を謝っているのだ? そなたは良い母でもあるのだし、嬉しい限りだ。妻が子供中心すぎて放置される男は、とても寂しい想いをするのだぞ」
唇を交わしているうちに、懐かしい感覚が戻ってくる。
フラヴィオと離れているあいだ、1日1日がとても長く感じて、もう何百年、何千年も離れ離れになっていたような気分だった。
改めてこの男の下に帰ってきたのだと実感が湧いたら、涙が込み上げた。
「――…愛しています、フラヴィオ様……」
「ハイ、待った」
と、返したのはフラヴィオではない。
いつの間にか部屋に入って来ていた家政婦長ピエトラだった。
「ピ、ピエトラ様っ?」
今度は別の意味で赤くなったベルが、慌てて身体を起こす。
ピエトラが「陛下」と戸口で手招きした。
「まずはルフィーナ王妃陛下の方で子種を出してください? 危険日に入りましたから」
「そうか」
と返事をしたフラヴィオだったが、動こうとはしなかった。
「行って来てください、フラヴィオ様」
とベルが言っても、「うん……」と乗り気でない様子で頷くだけ。
ピエトラが痺れを切らした様子で寄って来る。
「ほら陛下、お願いしますよ。先月は授からなかったようですから、魔法使い」
「それはそうだ。先月も魔法使い作りをしていないのだから」
「なんですって? 私は作るようお願い申し上げたはずですが?」
「うむ、申し訳ない。だが、ルフィーナが嫌がるのだ。レオーネ国のおっさんが言う『嫌よ嫌よも好きのうち』とかそういうんじゃないぞ? 本気で拒むのだ。すぐ出すって言ってるのに」
ベルは改めて確信した。
ルフィーナはやはり、子を産むことを戸惑っているのだ。
ピエトラが「ともかく」とフラヴィオの腕を引っ張ってレットから降ろした。
「今度は拒まれないかもしれませんから、義務を果たして来てください?」
フラヴィオは溜め息交じりに「分かった」と答えると、ベルに「すぐ戻って来る」と言って部屋を後にした。
そのあいだ仕事を再開しようと、ベルが机に着いてから5分――
「ただいま」
フラヴィオが戻ってきた。
「すぐ過ぎますよ?」
「余は義務を果たせる気がしなくなってきた」
またルフィーナに拒まれたらしい。
「ちょっとルフィーナ王妃陛下のところへ行ってきます」
と、机から立ち上がって戸口へ行こうとしたベルの足が浮く。
意志とは関係なしに、身体がレットの方へと向かっていく。
「ルフィーナはもう寝た」
「まだ9時です」
「眠いんだそうだ。余の部屋でもあるのに、追い出されて来た」
「重症ですね……」
とベルがルフィーナを心配して呟くや否や、ふわっとレットの上に寝かされる。
脱がしの達人・酒池肉林王に一瞬で身ぐるみを剥がされ、ヴェスティートや下着が宙を舞う。
「Oh……美しさに加えてちょっと美味しそうになってるのだ」
「や、止めてください……」
当たり前だが、妊娠中に太った。
帰って来て体重を測ってみたら8kg増えていて、まだ半分しか戻っていない。
「いただきますなのだっ……!」
と恍惚として両手を合わせた酒池肉林王が、食らい付いて来た。
4階の階段脇にある、すっかり女王仕様にされた自室の中。
机に着き、積まれている書類一枚一枚に目を通し、カンクロ国の玉璽を押していくベル。
その手が、ふと止まった。
(ルフィーナ王妃陛下……)
その顔が脳裏に浮かぶ。
ここのところルフィーナの様子がどこかおかしいように感じていたが、リエンの言葉で確信した気がする。
(お子を産むことを戸惑っている……?)
部屋の扉が叩かれた。
「どうぞ」と返したら、フラヴィオが入ってきた。
「アモーレ、2時間後にはカンクロの朝廷だ」
「スィー」
「だからハイ」
と、フラヴィオがレットを叩く。
ベルに刹那の硬直が訪れた。
頬が染まる。
それがレットで『眠れ』の命ではないと分かる故に。
(ひ、久しぶりなのです……)
少しばかり照れ臭くて、ベルが机から離れられないでいると、フラヴィオの顔が悄気ていった。
「分かったのだ……」
「え?」
「余に抱かれたい気分ではないのだろう? リンリー殿がそんなことを言っていた。良いのだ、我慢するのだ」
と、フラヴィオが意気消沈してレットに横臥すると、ベルが少し狼狽して立ち上がった。
小走りでフラヴィオの下へ向かっていく。
「ち、違うのです、フラヴィオ様っ……」
「良いのだ、気にしないでくれ。少し仮眠を取ることにする」
とフラヴィオが目を閉じると、ベルが焦ってその肩を揺すった。
「フラヴィオ様、起きてください。フラヴィオ様っ……」
少ししてフラヴィオに目を空ける様子がないと分かると、ベルの唇が尖っていった。
肩を掴んで、仰向けにして、上に乗っかって、唇に唇を押し付ける。
フラヴィオが噴き出した。
「犯る気か?」
赤面しながらも「スィー」と返事をしたベルが、フラヴィオの衣類を脱がしていく。
こっちに帰って来てから見ていなかったわけではないが、芸術品のような身体が現れたら、指先が戸惑った。
どきどきしてしまって直視出来なくなり、思わず目を逸らしてしまう。
そしたら突如ぐるんと回って位置が変わり、フラヴィオが上になった。
少し鋭い碧眼に見下ろされたら、顔を通り越して耳まで熱くなっていく。
フラヴィオが「ふふふ」と笑った。
「母になっても女だな」
ベルがなんとなく「ごめんなさい」と呟く。
「何を謝っているのだ? そなたは良い母でもあるのだし、嬉しい限りだ。妻が子供中心すぎて放置される男は、とても寂しい想いをするのだぞ」
唇を交わしているうちに、懐かしい感覚が戻ってくる。
フラヴィオと離れているあいだ、1日1日がとても長く感じて、もう何百年、何千年も離れ離れになっていたような気分だった。
改めてこの男の下に帰ってきたのだと実感が湧いたら、涙が込み上げた。
「――…愛しています、フラヴィオ様……」
「ハイ、待った」
と、返したのはフラヴィオではない。
いつの間にか部屋に入って来ていた家政婦長ピエトラだった。
「ピ、ピエトラ様っ?」
今度は別の意味で赤くなったベルが、慌てて身体を起こす。
ピエトラが「陛下」と戸口で手招きした。
「まずはルフィーナ王妃陛下の方で子種を出してください? 危険日に入りましたから」
「そうか」
と返事をしたフラヴィオだったが、動こうとはしなかった。
「行って来てください、フラヴィオ様」
とベルが言っても、「うん……」と乗り気でない様子で頷くだけ。
ピエトラが痺れを切らした様子で寄って来る。
「ほら陛下、お願いしますよ。先月は授からなかったようですから、魔法使い」
「それはそうだ。先月も魔法使い作りをしていないのだから」
「なんですって? 私は作るようお願い申し上げたはずですが?」
「うむ、申し訳ない。だが、ルフィーナが嫌がるのだ。レオーネ国のおっさんが言う『嫌よ嫌よも好きのうち』とかそういうんじゃないぞ? 本気で拒むのだ。すぐ出すって言ってるのに」
ベルは改めて確信した。
ルフィーナはやはり、子を産むことを戸惑っているのだ。
ピエトラが「ともかく」とフラヴィオの腕を引っ張ってレットから降ろした。
「今度は拒まれないかもしれませんから、義務を果たして来てください?」
フラヴィオは溜め息交じりに「分かった」と答えると、ベルに「すぐ戻って来る」と言って部屋を後にした。
そのあいだ仕事を再開しようと、ベルが机に着いてから5分――
「ただいま」
フラヴィオが戻ってきた。
「すぐ過ぎますよ?」
「余は義務を果たせる気がしなくなってきた」
またルフィーナに拒まれたらしい。
「ちょっとルフィーナ王妃陛下のところへ行ってきます」
と、机から立ち上がって戸口へ行こうとしたベルの足が浮く。
意志とは関係なしに、身体がレットの方へと向かっていく。
「ルフィーナはもう寝た」
「まだ9時です」
「眠いんだそうだ。余の部屋でもあるのに、追い出されて来た」
「重症ですね……」
とベルがルフィーナを心配して呟くや否や、ふわっとレットの上に寝かされる。
脱がしの達人・酒池肉林王に一瞬で身ぐるみを剥がされ、ヴェスティートや下着が宙を舞う。
「Oh……美しさに加えてちょっと美味しそうになってるのだ」
「や、止めてください……」
当たり前だが、妊娠中に太った。
帰って来て体重を測ってみたら8kg増えていて、まだ半分しか戻っていない。
「いただきますなのだっ……!」
と恍惚として両手を合わせた酒池肉林王が、食らい付いて来た。
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