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身体測定ー3
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12人の鍛錬場所は、上・中・下と3つある中庭のうち、真ん中にある『中の中庭』にて。
寒い季節は布鎧を装備して行うが、動いているうちにすぐ火照ってくるこの季節は、半裸の者も出て来る。
本格的な鍛錬は朝餉後から始まるので、この時間は準備運動を終えたあと、ゆっくり軽く走る程度だ。
そしてそれが終わったら、今度は汗を流すためにまた1階の浴場に戻って来る。
この国には現在、アラブの他にもうひとりだけ魔法が使える者――人型犬耳モストロであるカーネ・ロッソのテンテン(12歳の少年)がいて、それがすべての浴槽に湯張りを完了しておいてくれる。
フラヴィオとそれ似の子供たちは豪快に飛び込んで水飛沫を上げ、フェデリコとそれ似の子供たち、ガリバルディ親子、アラブは普通に入っていく。
昼休みもそうだが、この時間はゆっくり浸かっていられないので、頭と身体の汗を流したらすぐに脱衣所に出る。
すると12人の使用人がタオルを広げて待っているので、浴室から出て来た順番にそれに包まれていく。
「本日は身体測定ですので、このあと4階の食堂に向かわず、ここでお待ちくださいとのことです」
と、ひとりの使用人に告げられると、12人がそれぞれに承知した。
何故ここ――一階の将兵専用の浴場の脱衣所かといったら、端っこには体重を量るための大きな天秤が吊るされているからだ。近くには、身長を測るための柱も立てられている。
使用人たちは、12人に下半身の下着だけを穿かせ終わると、すぐに次の仕事へと向かって行った。
「身体そくていかー。まだかなー」
と、第四王子ティートが、天秤がある方とは逆の壁際へと向かって行った。
そこには大きな姿見が設置されており、脱衣所全体が映るようになっている。
「おれ腹へって死にそー」
と、言いながら姿見の前で、両腕に力瘤を作る。フラヴィオとそれ似の子供たちの日課だった。
子供の頃から鍛えており、脂肪が付かなく筋肉が付きやすい体質のマストランジェロ一族の男は、子供でも立派な力瘤が出来、割れた腹筋はくっきりと浮いている。
また、同い年くらいの子供と比べると、骨格も身長も大きかった。
「小さいのから身体測定してもらえば? んで、終わるの遅くなるようだったら先に朝餉食っててもいいんじゃないか?」
と、ティートの横に並んで同じく両腕に力瘤を作るは、フェデリコの長男リナルド。
確認するように、伯父――フラヴィオの顔を鏡越しに見た。
「いいぞー」と答えたそれは、アラブが起こした魔法の風に当たり、火照った身体を冷やしている。
第二王子コラードが「リナルド」と呼びながら、その隣に並んだ。
「おまえ、15で結婚するまでにちゃんと鍛えておけよ。サジッターリオ国王女――ていうか、今年オレの娘になるマヤと結婚すんだから」
と言いながら、やはり両腕に力瘤を作ると、ティートとリナルドが「おおーっ」と感嘆の声を上げた。
「コラード兄上、さいきん筋肉すげー!」
「コラード殿下、身長もえらい伸びたよなー。最終的に190cm近くなるんじゃないか? てか、私はまだマヤ殿下を口説いてすらいないんだけど」
「6月の舞踏会でちゃんと口説いとけ。なんかさ、まーだフテ腐れてるらしいんだよ、マヤが……」
「そりゃ、マヤ殿下はコラード殿下に口説かれるはずだったのに、まさかの母親の方が口説かれ結婚となったら仕方ないって。どんだけお姉様が好きなんだんよ」
「はははっ、悪い悪い。でもおまえはありがたく思えよ、リナルド。だってオレのお陰で王女と結婚出来るんだから」
「そうだなぁ。はははっ」
そこへやって来た『力の王』が、コラードの隣に並ぶ。
「良いか、おまえたち」
と当然、両腕に力瘤を作る。
コラードとティート、リナルドが「うおぉ」とどよめいた。
「さすが父上! 力の王! 毎日見てるけど、やっぱすげーっ!」
「やっぱり『力の王』って言われる伯父上と、『力の王弟』って言われる父上は、私たちとは違うよな。コレおかしいだろ……」
「まあ、一番意味不明なのは『人間卒業生』のドルフ叔父上として…………筋肉強化と武術の鍛錬だけならともかく、毎日30kmは走ってんのに何でこんな身体になるんだよ。普通もっと筋肉削れてるだろ。なんでオレが華奢に見えるんだ……」
フラヴィオが力瘤を作ったまま姿見に背を向けると、子供3人も続いた。4人で自身の背面の筋肉を確認する。
「コラードは今年の9月で15歳となり成人となったら、北隣のサジッターリオ国の女王シャルロッテと結婚し、同時にサジッターリオ国王となる。『力の王』の息子、『力の王弟』の甥として、しっかり務めを果たせ」
「スィー、父上!」
フラヴィオが姿態を変えると、子供3人も同じ姿態になる。今度は4人で、自身の胸の厚みや腕の太さ、脚の太さなどを確認していく。
「リナルドは、6月の舞踏会にサジッターリオ国王女マヤも招いているから、しっかり口説いておけ。マヤはおまえの4つ上だから、おまえから見たらお姉様かもしれないが心配するな。今この鏡の前に並んでいるお前たちは将来、女と破廉恥大好き『酒池肉林王』の血を濃く受け継いでいるのだから。コラードなんて酒池肉林王2世と囁かれるほどだが、リナルドおまえも負けていない。余はおまえの性教育中、おまえの熱心さや技術修得の速さには度々感心してしまうほどなのだぞ。だからお姉様だろうとなんだろうと恐れず口説きに行き、まずは婚約しろ。その後は身体を鍛え上げ、武術を極め、そして15になったらマヤと結婚し、おまえもサジッターリオ国に行け。そして国王コラードの手助けとなれ」
「スィー、伯父上!」
フラヴィオが腹筋と脚の筋肉を強調する姿態に移る。子供3人も移る。
「で、ティートはどうするか。おまえは第四王子だから別に自由にして良いが……そういえばマヤには妹――サジッターリオ国第二王女のエーベルがいるがどうする? おまえの4つ上だ。早くしないと向こうの貴族に取られるぞ」
「うーん。おれはそのエーベル殿下と結婚しないかな。だっておれがエーベル殿下と結婚したら、おれもサジッターリオにいけって、父上言うんでしょ?」
「そうだな。サジッターリオ国のことを想えば、その方が安心するからな」
「じゃーおれはエーベル殿下と結婚しない。おれまでいなくなったら、こっちが暗くなるってゆーの? おれたち3人以外はフェーデ叔父上似で、なんつーかマジメ君じゃん? つまんねーオトコってゆーか――」
王太子オルランドの拳が、ティートの頭上に炸裂した。「いってぇ!」と声が上がる。
「父上、この馬鹿もサジッターリオに追放しましょう」
「しかし、言われてみればティートの言うことも一理ある……」
「心配しないでください? 永遠の幼児は父上ひとりだけで充分なんですよ、いわゆるフェーデ叔父上とそれ似の賢く真面目な性格を受け継いだ私たちはね。物心付いた頃から、ずっと父上の世話をしてきたフェーデ叔父上を想うと可哀想で私は泣けて来ますよ」
「たしかに…! ボクは父上のことを尊敬していますが、想像すると涙が……!」
と、第3三王子レンツォが言葉通り涙ぐむ。
そこにさらに、フェデリコ次男ガルテリオが「僕も」、フェデリコ三男エルネストが「ぼくも」と続く。
今度は、頬を膨らませたフラヴィオの拳が4人の頭上に降り注いでいった。それらは呻き声を上げて蹲っていく。
「可愛くないぞ、おまえたち!」
「いや兄上、可愛いでしょう私似の子供たちは。真面目で良い子で手が掛からないし、私の苦労をよく分かってくれているから、私が兄上の世話をしているのを見ると飛んできてくれたりする。ああ、可愛い」
「何を言っているのだ、フェーデ! 今は兎も角、子供の頃は確実に余がおまえの面倒を見ていた!」
「記憶にありませんが?」
「なんだと!」
と、マストランジェロ一族の男たちの喧嘩が始まると、大将アラブが苦笑してアドルフォの黒い顔を見上げた。
「自分じゃ止められないので、アドルフォ閣下が止めてください。これじゃ、ベルさんと家政婦長が来ても身体測定を始められませんから」
「だなぁ。しかし、どうやって止めるべきか」
とアドルフォが腕組みをすると、ムサシが、糸のように細い目を輝かせた。
アドルフォの正面に立ち、さっきのフラヴィオたちのように両腕に力瘤を作ってみせながら、こんなことを言う。
「拙者、おとんのコレが見てみたいでござる。筋肉でおとんの右に出る者はござらぬからね」
「おう、そうかムサシ。よしよし、見てろ。さっきの陛下たちとは天と地ほどの差を見せてやるからな」
とアドルフォはムサシの黒いボサボサ頭を撫でると、姿見の方へと歩いていった。
大きく咳払いをし、喧嘩中だったマストランジェロ一族の男たちの注目を集める。
「力自慢の王家マストランジェロ一族の皆々様、とくとご覧あれ」
一体、何かと小首を傾げるマストランジェロ一族の傍ら、ムサシから飛ぶ興奮気味の声援。
「もうデカいござるよ、天下一! 拙者のおとんの筋肉、天下無双!」
と愛息子の声援に触発されたのか、「ふっふっふ」と妙に誇らしげな表情で笑ったアドルフォ。
「良いですかな? これが、真の……肉・体・美っ!」
と先ほどフラヴィオたち同様、「ふんんんんーーーっ!」と、そのバケモノじみた肉体を力ませ、各筋肉を強調させる姿態を取り始める。
それまでで一番のどよめきが、脱衣所の中を包み込んだ。
ムサシが飛び跳ねてはしゃぐ。
「カメキチ(ペットの巨大亀モストロ)の甲羅が乗ってると思ったでござるよ、三角筋! ガローファノ鉱山より大きな上腕二頭筋!」
「ふんんんんーーーっ!」
「わぁ! ムササビのように滑空できるでござるよ広背筋! 袴も破れるでござるね、大腿筋! 子持ちシシャモ飼ってるでござるか、ふくらはぎ!」
「ふんんんんーーーっ!」
「おおおっ! 砲弾すら跳ね返す腹直筋は、防護壁! オルキデーア石の研磨機にできるでござるね、腹斜筋!」
「ふんんんんーーーっ!」
「えええっ! 腕の太さはもはや腰! すっ……すごいでござるね、大胸筋! 宰相閣下の胸元より膨らんでござるよ、大胸筋! 明らかに巨乳でござるね、宰相閣下より――」
「左様でございますね」
と、ムサシの言葉を遮ったは、宰相の声。
冷然と響いたその声に、一斉に顔色を失い、硬直し、頭皮から冷や汗が溢れ出し、戦慄する男たち。
まだ振り返っていないが、脳裏に浮かぶは『処刑天使』。『天使』っていうか『堕天使』。
誰よりも何よりも愛する主フラヴィオのため、時に自ら処刑執行人になり、時に敵の首を跳ね、また自身が侍女を担当する王女ヴァレンティーナを守るためなら、構わず自身の手を血で汚す忠実で冷酷なその姿。
ひとり何も分かっていないらしいムサシが――とんでもないことを言ってしまった張本人が、無邪気な笑顔でベルの下へ駆けて行く。
「見てくださいでござる、宰相閣下! おとんの乳房は宰相閣下より豊かでござりま――」
「ムサシーっ!」と絶叫したアドルフォ。
肌が黒くて分かり辛いが、真っ白になっている。やはり真っ黒だが、真っ白になっている。
その巨体を飛び出し、周りのマストランジェロ一族の男たちにぶつかって吹っ飛ばし、愛息子のまだ小さな身体をベルから守るように抱きかかえる。
「ゆ、許してくれ、ベルっ……! 俺の息子に悪気は無いんだ!」
「そそそ、そうだぞアモーレ!」
と、フラヴィオが狼狽してアドルフォとムサシを背に庇う。
「こんな無邪気な子供には、何の悪気もないのだ! それに最近アモーレの乳房がぷくっとして来たことは、余はちゃんと知っているだろう? ただ服着てると、分かり辛いってだけで――」
「別に」と、ベルの冷然と響く淡々口調が、フラヴィオの声を遮った。
「私は、微塵も怒ってなどおりません?」
ムサシを除く一同が「嘘だ」と心の中で突っ込んだとき、口に出して突っ込めないから敢えて心の中で突っ込んだとき、天の助けのように家政婦長ピエトラが脱衣所に現れた。
「はーい、身体測定を始めます。順番に整列してください」
左腕には絶世の美幼児・フェデリコ四男レオナルド(あと数日で満1歳)を抱き、背中には黒の巨大幼児・アドルフォの次男ジルベルト(あと数日で満1歳)を背負っていた。
真っ先に承知の返事をしたのはアドルフォで、ムサシを先頭にし、自身はその後に並ぶ。
この2人を先にここから逃がしてやることは暗黙の了解で、その後からさっき話していた通り年齢の小さいほうから順に並んでいく。よって、最後尾はフラヴィオだった。
「では……んー、まずはレオ様とジル様からにしようかね」
「そうですね」
と同意したベルが、レオナルドをピエトラから受け取って抱っこする。
すると氷のような無表情だった堕天使の顔が、ぱっと『天使』の顔に塗り替えられた。
「よしよし、レオ様ー。身長を測りますからねー。ここに立っちしてくださーい。はい、80cmでーす」
レオナルドの父フェデリコが、振り返ってフラヴィオの顔を見る。
「やはりレオも大きめですよね。マストランジェロ一族の男は小さめになることはないんでしょうね……って、兄上?」
「レオずるいのだ……」
とフラヴィオが口を尖らせ、羨望の眼差しで見つめているのはレオナルドを身体測定しているベル。
フェデリコの前に並んでいるアラブは、「羨ましい」と呟いて鼻血を垂らす。
「余だって、ベルにあんな接し方してもらったことないのに」
「いや、当たり前でしょう兄上。何を言っているんですか、良い年した男が。アラブ、おまえもだ」
と、フェデリコは呆れ顔になった後、我が子の計測に目を戻した。
自身の子も甥っ子も、親友アドルフォの子も皆可愛く、大切に想っている。
ジルベルトに関してもそうだが、レオナルドには生まれた頃から特別なものを感じていた。
ここカプリコルノ国の未来をしかと支えてくれる、とても大きく、輝かしい何かだ。
「はい、ここにお座りしていてくださいねー、レオ様。良い子ですから、おとなしくしていてくださいねー」
吊るされている天秤で体重を量るのは、結構な大掛かりだった。
ベルが天秤の片方の台にレオナルドを乗せたら、次に反対側のもう片方の台に重りを乗せていって、体重を量る。
釣り合いが取れてから揺れが収まるまで待つので、少し時間の掛かる作業だった。
「はーい、良い子でしたー。レオ様の体重は11kgでーす。大きくなりましたねー。え? お腹空きましたか? まぁ大変、すぐにご飯にしましょうねー」
と、ベルが一旦脱衣所から出て行く。
フェデリコ四男レオナルド・マストランジェロ(ほぼ満1歳)は――
一見して、絶世の美男と言っても過言ではない父や伯父そっくりの、端整な顔立ちをし。
そこに、母親である2番目の天使アリーチェの深い金の髪と、優しい目元、榛色の瞳を譲り受けた。
この絶世の美幼児はすでに罪作りで、将来確実に世界中の女を思うがまま。
ひとたび破顔一笑すれば、視線の先々にいる女たちの腰が抜けていく。
現在の時点で分かることは、生き物が好きで、虫一匹殺せないほど心優しい母親譲りの性格をしているかもしれないということ。
その身体測定の結果は、身長80cm・体重11kgだった。
「はい、次はジル様だねー」
とピエトラが、黒い巨大幼児の身体測定を始める。これは父アドルフォと兄ムサシだけでなく、一同で凝視してしまう。
身長の測定はすぐに終わったが、まったくおとなしくないもので、体重を量り終えるのに5分も掛かった。
アドルフォ次男ジルベルト・ガリバルディ(ほぼ満1歳)は――
体型・顔立ち以外にも、凶器以外の何にも見えない逆立った銀髪や黒い肌、狼のような鋭い琥珀色の瞳や鰐口など、そのまま父親を縮小化している。
すでに『人間卒業生2世』と謳われ、将来は確実にプリームラ軍元帥である父を継ぐ実力を持つ。
その身体測定の結果は、筋骨隆々の身長95cm・体重35kgだった。
「さらに大きくなりましたね、ジル様。素晴らしいことです」
ピエトラは微笑ましそうにしているが、他は絶句する。
レオナルドに続いてジルベルトも食事にせねばと、ピエトラが「よっこらしょ」とジルベルトを背負って脱衣所から出て行く。
それと入れ替わりに戻って来たベルが、顔面蒼白していた。
「タロウさんとナナさん・ネネさんご夫妻に、お子様がお生まれになりました……」
寒い季節は布鎧を装備して行うが、動いているうちにすぐ火照ってくるこの季節は、半裸の者も出て来る。
本格的な鍛錬は朝餉後から始まるので、この時間は準備運動を終えたあと、ゆっくり軽く走る程度だ。
そしてそれが終わったら、今度は汗を流すためにまた1階の浴場に戻って来る。
この国には現在、アラブの他にもうひとりだけ魔法が使える者――人型犬耳モストロであるカーネ・ロッソのテンテン(12歳の少年)がいて、それがすべての浴槽に湯張りを完了しておいてくれる。
フラヴィオとそれ似の子供たちは豪快に飛び込んで水飛沫を上げ、フェデリコとそれ似の子供たち、ガリバルディ親子、アラブは普通に入っていく。
昼休みもそうだが、この時間はゆっくり浸かっていられないので、頭と身体の汗を流したらすぐに脱衣所に出る。
すると12人の使用人がタオルを広げて待っているので、浴室から出て来た順番にそれに包まれていく。
「本日は身体測定ですので、このあと4階の食堂に向かわず、ここでお待ちくださいとのことです」
と、ひとりの使用人に告げられると、12人がそれぞれに承知した。
何故ここ――一階の将兵専用の浴場の脱衣所かといったら、端っこには体重を量るための大きな天秤が吊るされているからだ。近くには、身長を測るための柱も立てられている。
使用人たちは、12人に下半身の下着だけを穿かせ終わると、すぐに次の仕事へと向かって行った。
「身体そくていかー。まだかなー」
と、第四王子ティートが、天秤がある方とは逆の壁際へと向かって行った。
そこには大きな姿見が設置されており、脱衣所全体が映るようになっている。
「おれ腹へって死にそー」
と、言いながら姿見の前で、両腕に力瘤を作る。フラヴィオとそれ似の子供たちの日課だった。
子供の頃から鍛えており、脂肪が付かなく筋肉が付きやすい体質のマストランジェロ一族の男は、子供でも立派な力瘤が出来、割れた腹筋はくっきりと浮いている。
また、同い年くらいの子供と比べると、骨格も身長も大きかった。
「小さいのから身体測定してもらえば? んで、終わるの遅くなるようだったら先に朝餉食っててもいいんじゃないか?」
と、ティートの横に並んで同じく両腕に力瘤を作るは、フェデリコの長男リナルド。
確認するように、伯父――フラヴィオの顔を鏡越しに見た。
「いいぞー」と答えたそれは、アラブが起こした魔法の風に当たり、火照った身体を冷やしている。
第二王子コラードが「リナルド」と呼びながら、その隣に並んだ。
「おまえ、15で結婚するまでにちゃんと鍛えておけよ。サジッターリオ国王女――ていうか、今年オレの娘になるマヤと結婚すんだから」
と言いながら、やはり両腕に力瘤を作ると、ティートとリナルドが「おおーっ」と感嘆の声を上げた。
「コラード兄上、さいきん筋肉すげー!」
「コラード殿下、身長もえらい伸びたよなー。最終的に190cm近くなるんじゃないか? てか、私はまだマヤ殿下を口説いてすらいないんだけど」
「6月の舞踏会でちゃんと口説いとけ。なんかさ、まーだフテ腐れてるらしいんだよ、マヤが……」
「そりゃ、マヤ殿下はコラード殿下に口説かれるはずだったのに、まさかの母親の方が口説かれ結婚となったら仕方ないって。どんだけお姉様が好きなんだんよ」
「はははっ、悪い悪い。でもおまえはありがたく思えよ、リナルド。だってオレのお陰で王女と結婚出来るんだから」
「そうだなぁ。はははっ」
そこへやって来た『力の王』が、コラードの隣に並ぶ。
「良いか、おまえたち」
と当然、両腕に力瘤を作る。
コラードとティート、リナルドが「うおぉ」とどよめいた。
「さすが父上! 力の王! 毎日見てるけど、やっぱすげーっ!」
「やっぱり『力の王』って言われる伯父上と、『力の王弟』って言われる父上は、私たちとは違うよな。コレおかしいだろ……」
「まあ、一番意味不明なのは『人間卒業生』のドルフ叔父上として…………筋肉強化と武術の鍛錬だけならともかく、毎日30kmは走ってんのに何でこんな身体になるんだよ。普通もっと筋肉削れてるだろ。なんでオレが華奢に見えるんだ……」
フラヴィオが力瘤を作ったまま姿見に背を向けると、子供3人も続いた。4人で自身の背面の筋肉を確認する。
「コラードは今年の9月で15歳となり成人となったら、北隣のサジッターリオ国の女王シャルロッテと結婚し、同時にサジッターリオ国王となる。『力の王』の息子、『力の王弟』の甥として、しっかり務めを果たせ」
「スィー、父上!」
フラヴィオが姿態を変えると、子供3人も同じ姿態になる。今度は4人で、自身の胸の厚みや腕の太さ、脚の太さなどを確認していく。
「リナルドは、6月の舞踏会にサジッターリオ国王女マヤも招いているから、しっかり口説いておけ。マヤはおまえの4つ上だから、おまえから見たらお姉様かもしれないが心配するな。今この鏡の前に並んでいるお前たちは将来、女と破廉恥大好き『酒池肉林王』の血を濃く受け継いでいるのだから。コラードなんて酒池肉林王2世と囁かれるほどだが、リナルドおまえも負けていない。余はおまえの性教育中、おまえの熱心さや技術修得の速さには度々感心してしまうほどなのだぞ。だからお姉様だろうとなんだろうと恐れず口説きに行き、まずは婚約しろ。その後は身体を鍛え上げ、武術を極め、そして15になったらマヤと結婚し、おまえもサジッターリオ国に行け。そして国王コラードの手助けとなれ」
「スィー、伯父上!」
フラヴィオが腹筋と脚の筋肉を強調する姿態に移る。子供3人も移る。
「で、ティートはどうするか。おまえは第四王子だから別に自由にして良いが……そういえばマヤには妹――サジッターリオ国第二王女のエーベルがいるがどうする? おまえの4つ上だ。早くしないと向こうの貴族に取られるぞ」
「うーん。おれはそのエーベル殿下と結婚しないかな。だっておれがエーベル殿下と結婚したら、おれもサジッターリオにいけって、父上言うんでしょ?」
「そうだな。サジッターリオ国のことを想えば、その方が安心するからな」
「じゃーおれはエーベル殿下と結婚しない。おれまでいなくなったら、こっちが暗くなるってゆーの? おれたち3人以外はフェーデ叔父上似で、なんつーかマジメ君じゃん? つまんねーオトコってゆーか――」
王太子オルランドの拳が、ティートの頭上に炸裂した。「いってぇ!」と声が上がる。
「父上、この馬鹿もサジッターリオに追放しましょう」
「しかし、言われてみればティートの言うことも一理ある……」
「心配しないでください? 永遠の幼児は父上ひとりだけで充分なんですよ、いわゆるフェーデ叔父上とそれ似の賢く真面目な性格を受け継いだ私たちはね。物心付いた頃から、ずっと父上の世話をしてきたフェーデ叔父上を想うと可哀想で私は泣けて来ますよ」
「たしかに…! ボクは父上のことを尊敬していますが、想像すると涙が……!」
と、第3三王子レンツォが言葉通り涙ぐむ。
そこにさらに、フェデリコ次男ガルテリオが「僕も」、フェデリコ三男エルネストが「ぼくも」と続く。
今度は、頬を膨らませたフラヴィオの拳が4人の頭上に降り注いでいった。それらは呻き声を上げて蹲っていく。
「可愛くないぞ、おまえたち!」
「いや兄上、可愛いでしょう私似の子供たちは。真面目で良い子で手が掛からないし、私の苦労をよく分かってくれているから、私が兄上の世話をしているのを見ると飛んできてくれたりする。ああ、可愛い」
「何を言っているのだ、フェーデ! 今は兎も角、子供の頃は確実に余がおまえの面倒を見ていた!」
「記憶にありませんが?」
「なんだと!」
と、マストランジェロ一族の男たちの喧嘩が始まると、大将アラブが苦笑してアドルフォの黒い顔を見上げた。
「自分じゃ止められないので、アドルフォ閣下が止めてください。これじゃ、ベルさんと家政婦長が来ても身体測定を始められませんから」
「だなぁ。しかし、どうやって止めるべきか」
とアドルフォが腕組みをすると、ムサシが、糸のように細い目を輝かせた。
アドルフォの正面に立ち、さっきのフラヴィオたちのように両腕に力瘤を作ってみせながら、こんなことを言う。
「拙者、おとんのコレが見てみたいでござる。筋肉でおとんの右に出る者はござらぬからね」
「おう、そうかムサシ。よしよし、見てろ。さっきの陛下たちとは天と地ほどの差を見せてやるからな」
とアドルフォはムサシの黒いボサボサ頭を撫でると、姿見の方へと歩いていった。
大きく咳払いをし、喧嘩中だったマストランジェロ一族の男たちの注目を集める。
「力自慢の王家マストランジェロ一族の皆々様、とくとご覧あれ」
一体、何かと小首を傾げるマストランジェロ一族の傍ら、ムサシから飛ぶ興奮気味の声援。
「もうデカいござるよ、天下一! 拙者のおとんの筋肉、天下無双!」
と愛息子の声援に触発されたのか、「ふっふっふ」と妙に誇らしげな表情で笑ったアドルフォ。
「良いですかな? これが、真の……肉・体・美っ!」
と先ほどフラヴィオたち同様、「ふんんんんーーーっ!」と、そのバケモノじみた肉体を力ませ、各筋肉を強調させる姿態を取り始める。
それまでで一番のどよめきが、脱衣所の中を包み込んだ。
ムサシが飛び跳ねてはしゃぐ。
「カメキチ(ペットの巨大亀モストロ)の甲羅が乗ってると思ったでござるよ、三角筋! ガローファノ鉱山より大きな上腕二頭筋!」
「ふんんんんーーーっ!」
「わぁ! ムササビのように滑空できるでござるよ広背筋! 袴も破れるでござるね、大腿筋! 子持ちシシャモ飼ってるでござるか、ふくらはぎ!」
「ふんんんんーーーっ!」
「おおおっ! 砲弾すら跳ね返す腹直筋は、防護壁! オルキデーア石の研磨機にできるでござるね、腹斜筋!」
「ふんんんんーーーっ!」
「えええっ! 腕の太さはもはや腰! すっ……すごいでござるね、大胸筋! 宰相閣下の胸元より膨らんでござるよ、大胸筋! 明らかに巨乳でござるね、宰相閣下より――」
「左様でございますね」
と、ムサシの言葉を遮ったは、宰相の声。
冷然と響いたその声に、一斉に顔色を失い、硬直し、頭皮から冷や汗が溢れ出し、戦慄する男たち。
まだ振り返っていないが、脳裏に浮かぶは『処刑天使』。『天使』っていうか『堕天使』。
誰よりも何よりも愛する主フラヴィオのため、時に自ら処刑執行人になり、時に敵の首を跳ね、また自身が侍女を担当する王女ヴァレンティーナを守るためなら、構わず自身の手を血で汚す忠実で冷酷なその姿。
ひとり何も分かっていないらしいムサシが――とんでもないことを言ってしまった張本人が、無邪気な笑顔でベルの下へ駆けて行く。
「見てくださいでござる、宰相閣下! おとんの乳房は宰相閣下より豊かでござりま――」
「ムサシーっ!」と絶叫したアドルフォ。
肌が黒くて分かり辛いが、真っ白になっている。やはり真っ黒だが、真っ白になっている。
その巨体を飛び出し、周りのマストランジェロ一族の男たちにぶつかって吹っ飛ばし、愛息子のまだ小さな身体をベルから守るように抱きかかえる。
「ゆ、許してくれ、ベルっ……! 俺の息子に悪気は無いんだ!」
「そそそ、そうだぞアモーレ!」
と、フラヴィオが狼狽してアドルフォとムサシを背に庇う。
「こんな無邪気な子供には、何の悪気もないのだ! それに最近アモーレの乳房がぷくっとして来たことは、余はちゃんと知っているだろう? ただ服着てると、分かり辛いってだけで――」
「別に」と、ベルの冷然と響く淡々口調が、フラヴィオの声を遮った。
「私は、微塵も怒ってなどおりません?」
ムサシを除く一同が「嘘だ」と心の中で突っ込んだとき、口に出して突っ込めないから敢えて心の中で突っ込んだとき、天の助けのように家政婦長ピエトラが脱衣所に現れた。
「はーい、身体測定を始めます。順番に整列してください」
左腕には絶世の美幼児・フェデリコ四男レオナルド(あと数日で満1歳)を抱き、背中には黒の巨大幼児・アドルフォの次男ジルベルト(あと数日で満1歳)を背負っていた。
真っ先に承知の返事をしたのはアドルフォで、ムサシを先頭にし、自身はその後に並ぶ。
この2人を先にここから逃がしてやることは暗黙の了解で、その後からさっき話していた通り年齢の小さいほうから順に並んでいく。よって、最後尾はフラヴィオだった。
「では……んー、まずはレオ様とジル様からにしようかね」
「そうですね」
と同意したベルが、レオナルドをピエトラから受け取って抱っこする。
すると氷のような無表情だった堕天使の顔が、ぱっと『天使』の顔に塗り替えられた。
「よしよし、レオ様ー。身長を測りますからねー。ここに立っちしてくださーい。はい、80cmでーす」
レオナルドの父フェデリコが、振り返ってフラヴィオの顔を見る。
「やはりレオも大きめですよね。マストランジェロ一族の男は小さめになることはないんでしょうね……って、兄上?」
「レオずるいのだ……」
とフラヴィオが口を尖らせ、羨望の眼差しで見つめているのはレオナルドを身体測定しているベル。
フェデリコの前に並んでいるアラブは、「羨ましい」と呟いて鼻血を垂らす。
「余だって、ベルにあんな接し方してもらったことないのに」
「いや、当たり前でしょう兄上。何を言っているんですか、良い年した男が。アラブ、おまえもだ」
と、フェデリコは呆れ顔になった後、我が子の計測に目を戻した。
自身の子も甥っ子も、親友アドルフォの子も皆可愛く、大切に想っている。
ジルベルトに関してもそうだが、レオナルドには生まれた頃から特別なものを感じていた。
ここカプリコルノ国の未来をしかと支えてくれる、とても大きく、輝かしい何かだ。
「はい、ここにお座りしていてくださいねー、レオ様。良い子ですから、おとなしくしていてくださいねー」
吊るされている天秤で体重を量るのは、結構な大掛かりだった。
ベルが天秤の片方の台にレオナルドを乗せたら、次に反対側のもう片方の台に重りを乗せていって、体重を量る。
釣り合いが取れてから揺れが収まるまで待つので、少し時間の掛かる作業だった。
「はーい、良い子でしたー。レオ様の体重は11kgでーす。大きくなりましたねー。え? お腹空きましたか? まぁ大変、すぐにご飯にしましょうねー」
と、ベルが一旦脱衣所から出て行く。
フェデリコ四男レオナルド・マストランジェロ(ほぼ満1歳)は――
一見して、絶世の美男と言っても過言ではない父や伯父そっくりの、端整な顔立ちをし。
そこに、母親である2番目の天使アリーチェの深い金の髪と、優しい目元、榛色の瞳を譲り受けた。
この絶世の美幼児はすでに罪作りで、将来確実に世界中の女を思うがまま。
ひとたび破顔一笑すれば、視線の先々にいる女たちの腰が抜けていく。
現在の時点で分かることは、生き物が好きで、虫一匹殺せないほど心優しい母親譲りの性格をしているかもしれないということ。
その身体測定の結果は、身長80cm・体重11kgだった。
「はい、次はジル様だねー」
とピエトラが、黒い巨大幼児の身体測定を始める。これは父アドルフォと兄ムサシだけでなく、一同で凝視してしまう。
身長の測定はすぐに終わったが、まったくおとなしくないもので、体重を量り終えるのに5分も掛かった。
アドルフォ次男ジルベルト・ガリバルディ(ほぼ満1歳)は――
体型・顔立ち以外にも、凶器以外の何にも見えない逆立った銀髪や黒い肌、狼のような鋭い琥珀色の瞳や鰐口など、そのまま父親を縮小化している。
すでに『人間卒業生2世』と謳われ、将来は確実にプリームラ軍元帥である父を継ぐ実力を持つ。
その身体測定の結果は、筋骨隆々の身長95cm・体重35kgだった。
「さらに大きくなりましたね、ジル様。素晴らしいことです」
ピエトラは微笑ましそうにしているが、他は絶句する。
レオナルドに続いてジルベルトも食事にせねばと、ピエトラが「よっこらしょ」とジルベルトを背負って脱衣所から出て行く。
それと入れ替わりに戻って来たベルが、顔面蒼白していた。
「タロウさんとナナさん・ネネさんご夫妻に、お子様がお生まれになりました……」
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