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身体測定ー11
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たしかに大きくは無いが、最近ぷくっと膨らんできたベルの乳房に口付ける。
「大体、78cmなのは仕方ないのだぞ? アモーレは身体そのものがとても小さいのだから」
口に含んだら、フラヴィオは宮廷料理長フィコの絶品プリンでも食べているような錯覚が起きる。
「あっ」と声を漏らしたベルが、狼狽した様子で戸口に顔を向けた。
「外は気にするな。鍵は掛けてあるし、皆は4階で朝餉中だ。使用人たちがすっかり起きて騒がしくなって来たし、よほど大きな声でも出さない限り猫耳にも聞こえぬだろう」
「し、しかし、その朝餉のお時間なのです。私は先ほど、フラヴィオ様のお腹の虫が鳴いているのを聞きました」
「大丈夫だ、少し食べてきたから。食卓に女たちがいないと華が無さすぎて、食が進まないからここに戻って来たところだったのだ」
そんなことを話しながら、絹のような触り心地の肌に手を滑らせる。
ベルの乳房を包み込むと、フラヴィオの大きな手の中にはすっぽり収まる。でも、ぎゅっと寄せれば谷間は出来る。
「落ち込む必要など無いぞ、アモーレ。そなたは魅力的だ」
とフラヴィオは、いつもいつも伝えているのだが。
最近はフラヴィオの本来の好み――故・王妃ヴィットーリアのような身体――を目指して努力し、少しずつ成果が出て来て前向きになっていたのに、失態を犯してしまった。
見るなと命を下してでも測定結果を見せるべきではなかった。
ベルが「ありがとうございます」と返しながらも、口を尖らせてまたこんなことを言い始める。
「しかし、実はドルフ様の乳房を弄る方がマシだと思っていらっしゃるのでは」
「気色悪いことを言うんじゃない。余に胸筋を愛でる趣味は無いぞ」
ベルが尚のこと口を尖らせて「だって」と言った。
その様は不貞腐れた子供のようで、幼く映る。ここ最近、すっかり三十路越えの雰囲気を醸し出しているだけに、尚のこと。
フラヴィオの表情を見たベルが、今度は頬を膨らませた。
「何かおかしいのですか?」
どうやら笑んでしまっていたらしい。
フラヴィオは「すまんすまん」と言いながらも、「ふふふ」と笑ってしまう。
「おかしいのではなく、愛らしいと思っていた。機嫌を直してくれ、アモーレ。愛している」
と、本人は不服らしいが、フラヴィオにとっては愛おしい胸元を愛撫する。
フラヴィオがこれから先を生きていく上で、ベルは必要不可欠なほどに愛している女だが、そうでなかったとしても、ベルの身体はとても魅力的だった。
亡くなった妻の王妃ヴィットーリアといえば珠の肌で有名だったが、ベルだって劣っていない。
絹のような触り心地の肌は、明るいところで見ると発光しているかのごとく白く、シミやホクロ、虫刺されひとつない。
それがどれだけ美しいかって、眩暈と本物の天使を穢しているような罪悪感に襲われるほどだ。
仰向けに寝てしまうとまだ胸元はほぼ平地になってしまうが、とても細い腰から臀部、少し肉が付いてきた腿へと繋がる曲線は女っぽい。
そんな身体が愛している女のものとなったら、酒池肉林王は精根尽き果てたってまだ愛したい。
愛しているだけでも愛でたいのだから、愛でても愛でても愛したりない。
「あ、あの、フラヴィオ様っ…? も、もう結構ですっ……やはり朝餉にしましょう」
「機嫌直ったのか?」
「スィー」と返事をしたベルの下半身の下着の中に、フラヴィオの指が潜り込んでいく。
「そのようだな」
「フ、フラヴィオ様っ……!」
と真っ赤になったベルが、抵抗するようにフラヴィオの肩を叩き出してから間もなく、その小さな爪先が反り返った。
――その頃、脱衣所の扉に耳をくっ付けていたのは料理長フィコと、カーネ・ロッソのテンテン。
フィコは「何してんの?」と小首を傾げているテンテンの犬耳を両手で塞ぐと、そのまま同じ一階にある医務室に向かって行った。
本日フラヴィオたちが脱衣所で身体測定をやっているらしいと聞き、成長期真っ只中のテンテンも計測してやったら良いのではないかと、朝餉作りの仕事を終えた後に急いで連れて来たのだが。
「ありゃ、しばらーく入れねぇわ」
「陛下と宰相天使閣下、何してたの?」
「おめぇさんにゃ、まだ早いことでい」
「ふーん?」
医務室に入ると、夜勤と日勤の医者が交代したところだった。フィコが「お疲れさん」と言うと、夜勤の医者は「おやすみなさい」と欠伸をしながら医務室を後にした。
ここには天秤は無いが、身長を測る柱はある。その前にテンテンを立たせようと思ったフィコだったが、ふと「待てよ」と思い止まり、自身が立った。
「ちょっと俺も測ってくれい。最後に測ったのがもう10年以上前でなぁ」
「縮んでないといいな」
「おう」と返事をした後、フィコが咳払いをして胸を張った。
「俺ぁ、料理長のフィコ・ロッシ!」
「知ってるよ。なんで今さら自己紹介してるんだ?」
「突っ込むんじゃねぇよ。なんか皆やったらしいんだよ。俺にもやらせてくれい」
と言った後、フィコがもう一度咳払いをして仕切り直した。
「俺ぁ、料理長フィコ・ロッシ! 趣味はこの剛腕の筋肉強化! 特技は包丁技だ! おっと、料理だけじゃねぇぜ? 俺のは対敵用の技さ。初恋と好みの女は――」
「どうでもいいよ」
「なんでい」
宮廷オルキデーア城の料理長フィコ・ロッシ(満55歳)は――
ピエトラがフラヴィオ・フェデリコ兄弟の『第二の母』ならば、こちらは『第二の父』。2人はこの男の絶品料理を食べて育ってきた。
毎日寝る前に欠かさず身体を鍛えており、大変逞しい腕の持ち主。腕の太さだけなら、一見してマストランジェロ一族を上回っているのが分かるほど。
髪と瞳は暗めの茶色で、顎は髭が覆っている。
料理長というのは王女の侍女であるベルとほぼ同格で、家政婦長ピエトラとこのフィコだけが使用人の中でベルを呼び捨てにしている。
また、フェデリコがベルの『先生』ならば、こちらはベルの『師匠』といったところ。
ベルに対敵用の包丁技を叩き込み、3日で習得して見せたベルを一番弟子と言って心底可愛がっている。いつかは弟子と一緒に戦いたい。
その身体測定の結果は、身長が175cmでほぼ平均。
天秤が無くて体重は分からないが、中年太り気味で腹がでかいので80kgはありそう。
自慢の剛腕は、55cmだった。
「ふってえぇぇぇ」
とフィコの腕に巻尺を当てていたテンテンの目が丸くなる。
フィコは誇らしげに「まぁな」と歯を見せて笑うと、「ほらよ」とテンテンを身長を測る柱の前に立たせた。
「おれもすんの? 自己紹介? んじゃ、えーと……」
と、テンテンが咳払いをしてから続けた。
「おれはカンクロ国出身、カーネ・ロッソのテンテン。苗字はない。趣味は泥遊び。カーネ・ロッソは好きなんだ、土属性だから。特技は……うーん?」
「魔法じゃねえのかい?」
「魔法はただ使えるだけだよ。カーネ・ロッソって魔力低い方だし、腕っぷしや牙の方が優れてるんだ。だからおれも『下の中庭』で民兵と一緒に軍事訓練頑張ってるんだけど、どうやら戦う方じゃなくて治癒や支援魔法の担当みたいなんだ。あと移動の際のテレトラスポルトと」
「不服かい? 仕方ねぇのよ。おめぇさんの他に魔法使えるっつったら、今はアラブ将軍しかいねぇからな」
「まぁ……あの濃い人ってティグラートの三分の一のメッゾサングエらしいけど、半々くらいの魔力あるし、腕っぷしの方もおれより強いし、おれが支援に回った方がいっか」
と残念そうに溜め息を吐いた後、テンテンが「それから」と自己紹介を続ける。
「初恋? うーん……まだ無いと思うけど。好みのメスは、うーん……とりあえず、宰相天使閣下みたいな人は怖いなぁ」
元は敵国カンクロの兵士で、現在はここカプリコルノ国のオルキデーア軍に所属するカーネ・ロッソのテンテン(満12歳)は――
茶色い髪と瞳に、赤犬の耳と尻尾。
タロウやハナ、ナナ・ネネにぶっ飛ばされる気がして言わないが、ガットたちの猫耳・猫尻尾よりも、モフモフしている犬耳・犬尻尾が自慢。
カーネ・ロッソのもうひとつの特徴である大きな牙は、口を閉じていても見える。
カンクロ国では普通カーネ・ロッソを飼えるのは王侯貴族や将軍といった金持ちだけだが、テンテンは兵士50人に拾われ、少ない給料の中から少しずつ出し合って大切に育てられてきた。
そのうち24人の飼い主は死んでしまったが、残りの26人の飼い主と共にここカプリコルノ国の兵士として務め、平穏無事で幸せな日々を送っている今日この頃。
テレトラスポルトがそれなりに使えるので、主にベルからカンクロ王太子ワン・ジンへの手紙送達業務を担っている。
その身体測定の結果は、身長155cmで人間の少年の平均といったところだった。
ただし体重の方はやはりモストロで、フィコが持ち上げてみると見た目より重さがあった。
「155かぁ。おれ、小さいのかなぁ」
「王子殿下たちがでかいだけで、こんなもんさ。男はこれからぐんと伸びるんでい。って、カーネ・ロッソのことは知らねぇけど。ガットのオスみたいに、160cmくらいで止まったりすんのかい?」
「いや、野生にはデカいオスが結構いるよ。逆にガットのオスみたいに小さい成犬はほとんど見ないから、平均は170cmは超えてると思うけど……ワン・ジンだって175cm以上ありそうだし」
フィコが「ワン・ジン」と鸚鵡返しにした。職業は料理長なものだから、一瞬誰だったか考えた。
「カンクロ王太子か」
テンテンがうんと頷いて続ける。
「身長ってさ、たぶんある程度は親から遺伝するだろ? ワン・ジンの父親――カンクロ国王ワン・ファンは、横にはでかいけど縦はそうでもないんだ。ずんぐりむっくりって感じで。でもワン・ジンの母親はスラッと高くて、綺麗な人――あ、犬か。ワン・ジンて柄悪いけど顔もそこそこだし、母親似なんだろうなぁ」
そんなことを話していたときのこと――
「頼もーっ! カプリコルノ陛下、並びにマサムネ殿下!」
と突如、レオーネ語が廊下から響いて来た。あまり聞き慣れていない声だ。
「なんだ? 誰だ?」
と2人で医務室から出てみると、廊下の北端――宝石加工職人の部屋の前に、レオーネ国の袴を穿いた外見年齢30歳前後のガット・ネーロのオスが立っていた。
テンテンは完全に初見で、フィコは記憶にあるような無いような。とりあえず2人に分かったのは、その身なりから宮廷ガットということだった。
そしてテンテンが「やばばばば」と尻尾の毛を逆立たせた。
「なんだ、あの異常な魔力…! ってことは、あれがレオーネ国の陛下付きガットか……!」
「レオーネ陛下の? ああ、そういやあんなんだったか。渋くてかっけぇなぁ」
1階の浴場の脱衣所からは、フラヴィオの声が聞こえてくる。
「すまん、今出れん!」
まだベルと何かやっているらしい。
そして呼ばれたマサムネが、4階の食堂からタロウのテレトラスポルトで現れる。
「どうしたん、タナカ」
それが名前らしい。
「カンクロ国王ワン・ファンが、死去致し申した――」
※本編34話へ
「大体、78cmなのは仕方ないのだぞ? アモーレは身体そのものがとても小さいのだから」
口に含んだら、フラヴィオは宮廷料理長フィコの絶品プリンでも食べているような錯覚が起きる。
「あっ」と声を漏らしたベルが、狼狽した様子で戸口に顔を向けた。
「外は気にするな。鍵は掛けてあるし、皆は4階で朝餉中だ。使用人たちがすっかり起きて騒がしくなって来たし、よほど大きな声でも出さない限り猫耳にも聞こえぬだろう」
「し、しかし、その朝餉のお時間なのです。私は先ほど、フラヴィオ様のお腹の虫が鳴いているのを聞きました」
「大丈夫だ、少し食べてきたから。食卓に女たちがいないと華が無さすぎて、食が進まないからここに戻って来たところだったのだ」
そんなことを話しながら、絹のような触り心地の肌に手を滑らせる。
ベルの乳房を包み込むと、フラヴィオの大きな手の中にはすっぽり収まる。でも、ぎゅっと寄せれば谷間は出来る。
「落ち込む必要など無いぞ、アモーレ。そなたは魅力的だ」
とフラヴィオは、いつもいつも伝えているのだが。
最近はフラヴィオの本来の好み――故・王妃ヴィットーリアのような身体――を目指して努力し、少しずつ成果が出て来て前向きになっていたのに、失態を犯してしまった。
見るなと命を下してでも測定結果を見せるべきではなかった。
ベルが「ありがとうございます」と返しながらも、口を尖らせてまたこんなことを言い始める。
「しかし、実はドルフ様の乳房を弄る方がマシだと思っていらっしゃるのでは」
「気色悪いことを言うんじゃない。余に胸筋を愛でる趣味は無いぞ」
ベルが尚のこと口を尖らせて「だって」と言った。
その様は不貞腐れた子供のようで、幼く映る。ここ最近、すっかり三十路越えの雰囲気を醸し出しているだけに、尚のこと。
フラヴィオの表情を見たベルが、今度は頬を膨らませた。
「何かおかしいのですか?」
どうやら笑んでしまっていたらしい。
フラヴィオは「すまんすまん」と言いながらも、「ふふふ」と笑ってしまう。
「おかしいのではなく、愛らしいと思っていた。機嫌を直してくれ、アモーレ。愛している」
と、本人は不服らしいが、フラヴィオにとっては愛おしい胸元を愛撫する。
フラヴィオがこれから先を生きていく上で、ベルは必要不可欠なほどに愛している女だが、そうでなかったとしても、ベルの身体はとても魅力的だった。
亡くなった妻の王妃ヴィットーリアといえば珠の肌で有名だったが、ベルだって劣っていない。
絹のような触り心地の肌は、明るいところで見ると発光しているかのごとく白く、シミやホクロ、虫刺されひとつない。
それがどれだけ美しいかって、眩暈と本物の天使を穢しているような罪悪感に襲われるほどだ。
仰向けに寝てしまうとまだ胸元はほぼ平地になってしまうが、とても細い腰から臀部、少し肉が付いてきた腿へと繋がる曲線は女っぽい。
そんな身体が愛している女のものとなったら、酒池肉林王は精根尽き果てたってまだ愛したい。
愛しているだけでも愛でたいのだから、愛でても愛でても愛したりない。
「あ、あの、フラヴィオ様っ…? も、もう結構ですっ……やはり朝餉にしましょう」
「機嫌直ったのか?」
「スィー」と返事をしたベルの下半身の下着の中に、フラヴィオの指が潜り込んでいく。
「そのようだな」
「フ、フラヴィオ様っ……!」
と真っ赤になったベルが、抵抗するようにフラヴィオの肩を叩き出してから間もなく、その小さな爪先が反り返った。
――その頃、脱衣所の扉に耳をくっ付けていたのは料理長フィコと、カーネ・ロッソのテンテン。
フィコは「何してんの?」と小首を傾げているテンテンの犬耳を両手で塞ぐと、そのまま同じ一階にある医務室に向かって行った。
本日フラヴィオたちが脱衣所で身体測定をやっているらしいと聞き、成長期真っ只中のテンテンも計測してやったら良いのではないかと、朝餉作りの仕事を終えた後に急いで連れて来たのだが。
「ありゃ、しばらーく入れねぇわ」
「陛下と宰相天使閣下、何してたの?」
「おめぇさんにゃ、まだ早いことでい」
「ふーん?」
医務室に入ると、夜勤と日勤の医者が交代したところだった。フィコが「お疲れさん」と言うと、夜勤の医者は「おやすみなさい」と欠伸をしながら医務室を後にした。
ここには天秤は無いが、身長を測る柱はある。その前にテンテンを立たせようと思ったフィコだったが、ふと「待てよ」と思い止まり、自身が立った。
「ちょっと俺も測ってくれい。最後に測ったのがもう10年以上前でなぁ」
「縮んでないといいな」
「おう」と返事をした後、フィコが咳払いをして胸を張った。
「俺ぁ、料理長のフィコ・ロッシ!」
「知ってるよ。なんで今さら自己紹介してるんだ?」
「突っ込むんじゃねぇよ。なんか皆やったらしいんだよ。俺にもやらせてくれい」
と言った後、フィコがもう一度咳払いをして仕切り直した。
「俺ぁ、料理長フィコ・ロッシ! 趣味はこの剛腕の筋肉強化! 特技は包丁技だ! おっと、料理だけじゃねぇぜ? 俺のは対敵用の技さ。初恋と好みの女は――」
「どうでもいいよ」
「なんでい」
宮廷オルキデーア城の料理長フィコ・ロッシ(満55歳)は――
ピエトラがフラヴィオ・フェデリコ兄弟の『第二の母』ならば、こちらは『第二の父』。2人はこの男の絶品料理を食べて育ってきた。
毎日寝る前に欠かさず身体を鍛えており、大変逞しい腕の持ち主。腕の太さだけなら、一見してマストランジェロ一族を上回っているのが分かるほど。
髪と瞳は暗めの茶色で、顎は髭が覆っている。
料理長というのは王女の侍女であるベルとほぼ同格で、家政婦長ピエトラとこのフィコだけが使用人の中でベルを呼び捨てにしている。
また、フェデリコがベルの『先生』ならば、こちらはベルの『師匠』といったところ。
ベルに対敵用の包丁技を叩き込み、3日で習得して見せたベルを一番弟子と言って心底可愛がっている。いつかは弟子と一緒に戦いたい。
その身体測定の結果は、身長が175cmでほぼ平均。
天秤が無くて体重は分からないが、中年太り気味で腹がでかいので80kgはありそう。
自慢の剛腕は、55cmだった。
「ふってえぇぇぇ」
とフィコの腕に巻尺を当てていたテンテンの目が丸くなる。
フィコは誇らしげに「まぁな」と歯を見せて笑うと、「ほらよ」とテンテンを身長を測る柱の前に立たせた。
「おれもすんの? 自己紹介? んじゃ、えーと……」
と、テンテンが咳払いをしてから続けた。
「おれはカンクロ国出身、カーネ・ロッソのテンテン。苗字はない。趣味は泥遊び。カーネ・ロッソは好きなんだ、土属性だから。特技は……うーん?」
「魔法じゃねえのかい?」
「魔法はただ使えるだけだよ。カーネ・ロッソって魔力低い方だし、腕っぷしや牙の方が優れてるんだ。だからおれも『下の中庭』で民兵と一緒に軍事訓練頑張ってるんだけど、どうやら戦う方じゃなくて治癒や支援魔法の担当みたいなんだ。あと移動の際のテレトラスポルトと」
「不服かい? 仕方ねぇのよ。おめぇさんの他に魔法使えるっつったら、今はアラブ将軍しかいねぇからな」
「まぁ……あの濃い人ってティグラートの三分の一のメッゾサングエらしいけど、半々くらいの魔力あるし、腕っぷしの方もおれより強いし、おれが支援に回った方がいっか」
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茶色い髪と瞳に、赤犬の耳と尻尾。
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「いや、野生にはデカいオスが結構いるよ。逆にガットのオスみたいに小さい成犬はほとんど見ないから、平均は170cmは超えてると思うけど……ワン・ジンだって175cm以上ありそうだし」
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そんなことを話していたときのこと――
「頼もーっ! カプリコルノ陛下、並びにマサムネ殿下!」
と突如、レオーネ語が廊下から響いて来た。あまり聞き慣れていない声だ。
「なんだ? 誰だ?」
と2人で医務室から出てみると、廊下の北端――宝石加工職人の部屋の前に、レオーネ国の袴を穿いた外見年齢30歳前後のガット・ネーロのオスが立っていた。
テンテンは完全に初見で、フィコは記憶にあるような無いような。とりあえず2人に分かったのは、その身なりから宮廷ガットということだった。
そしてテンテンが「やばばばば」と尻尾の毛を逆立たせた。
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「レオーネ陛下の? ああ、そういやあんなんだったか。渋くてかっけぇなぁ」
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