13 / 51
4番目の天使の結婚式の日(本編35.5話・中編)
しおりを挟む
――2日後。
4番目の天使パオラ19歳の誕生日及び結婚式当日。
オルキデーアの農村のほぼ真ん中にある、頑丈な石造りのパオラの屋敷の中。
「よろしいですか、パオラさん。ついでに天使の皆様方」
天使軍元帥の厳粛な栗色の瞳が、花嫁衣裳を纏った本日のプルプル肌の主役や天使たちを見つめていた。
淡々としながらも威厳に満ちた声に、花嫁も天使も、近くにいる花婿も直立不動になる。
その小さな口から指令が出る前から、拒否することは努々許されないと悟る。
「本日は皆様に、ちょっとしたお芝居をしていただきます――」
――時刻が午後0時を回ると、主役の2人がパオラの自宅から出て来た。
天使の中でも特に村天使を愛して止まないオルキデーア農民たちの盛大な拍手の中、結婚式が行われるパオラの自宅付近にある広場へと向かっていく。
カプリコルノ国の結婚式には『オルキデーア式』と『プリームラ式』があり、2人は前者を選んだ。
それはあれやこれやと決まりがあるプリームラ式と比較すると、ひたすらに自由なものだった。
よって2人は拍手喝采の中、花嫁・花婿衣装に身を包んで登場した後、皆の前で「永遠の愛を誓いますだー」の宣誓をしてキスを交わし、指輪交換はとっくの前にしてるので省略。
式はわずか1分で終了した。
「さ、食うべー」
の花婿ファビオの一言で、マサムネの猫4匹とアラブ、テンテンが承知の返事をした。
テレトラスポルトで宮廷の厨房から、料理長フィコやその一番弟子――7番目の天使ベルお手製のご馳走やワイン、ビールをせっせと運んで来る。
広場の全面に配置した円卓よりも、主役2人の席よりも、高いところに用意された豪奢な席には国王フラヴィオが腰掛けている。
笑顔を作っていながらも、碧眼にどこか寂しそうな色が浮かんで見えた。
そこへ、天使軍元帥がパチンと指を鳴らす。
すると散らばっていた天使たちが一斉にフラヴィオの下へと集まっていった。
「フラヴィオ様」と花嫁パオラがフラヴィオの膝の上に座ると、その碧眼が少し動揺した。
「ど……どうしたのだ、パオラ?」
「おらファビオ兄と結婚したことは嬉しいけんども、なんだか切ないだよ。本当はちょっとフラヴィオ様のお嫁さんになりたかったからね」
「――Oh……!」
とフラヴィオが瞼を押さえた一方、他の天使たちも続く。
「私も小さい頃、将来は父上と結婚したいと思ってたのよ?」
「ほんとはビアンカもなのよ、伯父上」
「あたしも初恋はフラヴィオ様だったけど、あたしはフラヴィオ様の6つ年上じゃない? だからずっと先に結婚適齢期に入っちゃったし……ね?」
「ほんまはウチもやねん、フラビー陛下。昔も今もフラビー陛下が一番かっこいいもん」
「ワタシも本当は昔フラヴィオ様が好きだったんだけど、お姉様もフラヴィオ様のこと好きだったから。ワタシは仕方なくフェーデでいっかーみたいな?」
「フェーデには内緒だけど、実はわたしもなのよフラヴィオ様。でもお義姉様には敵わないって分かってから」
フラヴィオが手の中からぽろぽろと涙を落としていく様を、遠くから複雑そうな表情で眺める天使たちの夫やら婚約者やらの男たち。
マストランジェロ一族の男はひとりが泣き出すと連鎖反応が起きるようになっているが、本日それはなかった。
やがて物言いたげに近くにいる天使軍元帥に注目する。
まるで美しい月でも眺めているかのようにフラヴィオを見つめ、上品な仕草で女子供用のワインを傾けていた。
きっと一番複雑な心境であろう花婿が、おそるおそる声を掛ける。
「あ、あの天使軍元帥閣下……オ、オイラの嫁さんをそろそろ……」
「スィー、ファビオさん。もう少々お待ちください」
ベルはそれから感涙するフラヴィオの姿を肴に10分掛けてグラスのヴィーノを飲み干すと、男たちに向かって「ご協力ありがとうございました」と言った。
近くいた執事ファウストに空になったビッキエーレを渡し、フラヴィオの方へと歩いていく。
するとパオラが「大変だべ!」と言いながら、フラヴィオの膝から立ち上がった。
「フラヴィオ様の彼女様のお出ましだべ!」
「やばいわ! 処刑される前に逃げましょう!」
とベラドンナが続くと、天使たちが慌てたように逃げていった。
そしてフラヴィオも狼狽したようだった。
「アモモモモモモ……アモーレ、プンプンか? プンプンなのかっ?」
ベルが「いいえ」と答えると、フラヴィオはほっと胸を撫で下ろした。
「そ、そうか」
「スィー」
と自ら膝の上に座って来たベルを、少し不思議に思って見る。
普段ベルは、ヴァレンティーナがいるだけでなく、これだけの人前でこういうことをしない故に。
「フラヴィオ様、しつこいようですが」
フラヴィオが「うん?」と相槌を打つと、まさに天使のような微笑が表れた。
「ベルナデッタは誰よりも何よりも、他の天使の皆様よりも、フラヴィオ様を愛しています。他の天使の皆様は別の男性と結婚や婚約をしていらっしゃいますが、ベルナデッタは生涯フラヴィオ様だけのものでございます。何がありましても、別の男性を愛することはございません」
「――……うむ」
と微笑したフラヴィオが、ベルを大切そうに抱き締めてバーチョする。
小芝居の仕事を終えた天使たちが、遠くからその様子を見つめて微笑ましそうに囁き合う。
「なんだかんだ、フラヴィオ様にはやっぱりベルちゃんだべね」
「ワタシたちが小芝居する必要なんてなかったんだけど……少しでもフラヴィオ様を喜ばせたくて仕方ないんでしょうね、あの子」
結婚式に招待した北隣のサジッターリオ国女王シャルロッテが、「そうね」と同意しながら寄って来た。傍らには婚約者のここカプリコルノ国第二王子コラードもいる。
「ベルにとって、フラヴィオはつくづく『主』なのね。私、自分のオトコが他の女にチヤホヤされてる様を肴にヴィーノ傾ける女を初めて見たわよ。あの子のフラヴィオ愛には感心……ていうか尊敬しちゃう。やっぱり私も、今からでもベルに協力してあげようかしら」
それを聞いたコラードが「駄目だって」と怒声混じりに口を開いた。
「ロッテはオレの女神で、父上の天使じゃないじゃん」
「分かってるわよ、コラード。私が愛しているのはあなただけだから。だから演技よ、演技」
「駄目だって! 演技だって腹立つよ!」
「ベルを見てると協力してあげたくなるのよ」
「駄目だってば!」
セレーナが小さく咳払いして、シャルロッテに耳打ちする。
「王子殿下たちの年頃では、何を言っても無理かと。フェーデ閣下やアドルフォ閣下は大人ですから我慢出来たのでしょうけど」
「まぁ、そうよね」
とシャルロッテが溜め息を吐いた傍ら、ベラドンナとアリーチェが苦笑しながら王太子オルランドとアヤメを指差した。
2人は喧嘩しているらしく、遠目にもピリピリとした空気が伝わってくる。
「アッチ大丈夫かしらねぇ? ランドは女性に対しては、露骨には怒らないとはいえ」
「コラード殿下の怒り方がフラヴィオ様似だとしたら、ランド殿下はフェーデ似なのよね。あまり表には出さないけど、ヤキモチ焼きなところは変わらない気がするわ」
「当たり前じゃん!」
と、口を挟んだコラードが不服を漏らす。
「父上を喜ばせるのは天使の仕事なんだろうけど、オレたちからすればひたすら迷惑だ!」
「別に大したことしてないじゃない」
とシャルロッテが呆れ顔で言うと、コラードの口が尚のこと尖っていった。
「たしかにしてはいないし、演技だけど、気持ち良いと思う男なんていない! これはガキでも大人でもそうだ!」
「ハイハイ、分かったわよもう。文句があるなら天使軍元帥に直接言えば?」
コラードに一瞬の硬直が訪れた。
その後、顔色を失って戦慄していく。
「ど…どうしてそういうこと言うんだよロッテ……! オレが処刑されてもいいの!?」
「ベルの存在凄まじいことになってるわねー」
ベラドンナとアリーチェが、「あっ」とまたオルランド・アヤメを指差した。
「いよいよ喧嘩が本気になってきたんじゃない?」
「大丈夫かしら……」
と心配する一同の視線の先、オルランドがアヤメの手を引っ張って木のある方へと歩いていく。
カプリコルノ国の女たちよりも一回り小柄な身体をしているアヤメは、オルランドが普通の速度で歩いてしまうと追い付くことが出来ず、小走りになっていた。
「ラ、ランドっ…! 落ち着いてやっ……!」
と、アヤメは狼狽する。
来月で16歳という年齢ながら背丈は180cm弱あり、アヤメの生まれ育ったレオーネ国の男たちよりも大きな骨格をし、また落ち着いていることから最近はすっかり20歳を超えているように見えるオルランド。
アヤメよりも1つ下のはずなのだが、一度もそう思ったことはない。
アヤメが物心付いた頃から、アヤメよりいつだって大人で、いつだって優しく、いつだって穏やかだった。
こっちの女たちよりも小股気味で、ちょこちょこと歩いて見えるアヤメの足に合わせてくれないのは、これが初めてのことのような気がする。
アヤメが完全に引っ張られながら木陰へと辿り着き、周りから見えなくなると、オルランドがアヤメの頬を両手で包み込んだ。
アヤメの深い茶色の瞳には、むっとしていると分かるオルランドの顔が映る。
「アヤメ」
と苛立った様子で溜め息を吐かれると、オルランドの手の中のプルプルもちもちポチャポチャの頬がプクっと膨らんだ。
「私は怒っているのに、何故君は可愛い顔をする」
「何のことやねん」
と突っ込んだ後、アヤメが声高になった。
「ウチは8番目の『天使』なんやから、仕事はちゃんとやらなあかん言うてるやろっ…! 分かってや、もうっ……!」
「だから分かってるよ」
「分かってないやん、怒っとるやん」
「だってアヤメだけは天使の仕事だから仕方なくとか、そういうんじゃなかった。あれは本心だった」
「なんやねん、それ」
「私の知っているアヤメは、子供の頃から父上とフェーデ叔父上のことをかっこいい、かっこいい言ってキャーキャーしてた。さっき今も昔も父上が一番かっこいいって言ってたけど、それって本心なんだろう? 何故なら私は君にそんなに言われたことがなく、キャーキャーされた記憶もほとんど無い」
「それはっ……」
とアヤメが頬を染めた。
「て……照れかくしや。言ったやん、ウチは子供の頃からランドが好きやったって。レオーネ国の女の子は、こっちの女の子みたいに何でもかんでもド直球ちゃうねん。好きやからこそ恥ずかしくて逆に言葉が出てこんこともあるっ……! せやからウチ、ずーっとずーっとランドに想いを伝えられへんかったんやで?」
オルランドの返事が無かった。
その顔が不服に染まっていく。
「私は君のすべてが好きだと思う。でも、そういうところは正直少し寂しいんだ」
というオルランドの気持ちを、アヤメは今初めて知った。
そして堰を切ったように、オルランドが早口気味になって心の内を打ち明ける。
「私は君に愛を伝えない日は無いのに、君はほとんど言ってくれない。どうして? 私はもっと言って欲しいんだ。バーチョだって私からしてばかりで、君からしてくれた記憶が無い。したくないってこと? それにベッドに誘ってくれたことも無いって、私は本当に君の中で夫になれているの?」
「ちょ、待ってや! 言葉とバーチョはまだしも、レ、レットに誘うて……無理無理無理! ウチには絶対無理っ……!」
とアヤメは茹で蛸になるが、オルランドの不満げな声は続く。
「私は先日、こんなことを小耳に挟んだ。ベルは最近、畏怖してしまうど強い女性になったけど、レットの中では父上に『おねだり』するんだそうだ」
「お、おねだ…おねだり……!?」
「私はとても羨ましかった。私も君におねだりされたい」
「あかんあかんあかん! 無理無理無理!」
「嫌だ、されたい」
「無理!」
「されたい」
「無理や!」
「さぁぁぁれぇぇぇたぁぁぁいぃぃぃぃぃ」
「無理やあぁぁぁあ!」
そこへ、フラヴィオの哄笑が割り込んできた。
振り返ると、その本人と赤面してるベルがいた。
「お、お二方が私のせいで喧嘩をされているようだとお聞きしたので、やって来たのですが……」
とベルの小さな唇が尖る。
「な、なんのお話をされているのですかっ…! わ、わた、わたたたしは、『おねだり』など致しませんっ……!」
「なぁ、したことなど無いよなぁアモーレ? 毎度のこと『おねだり』しちゃったりしてないよなぁ?」
とニヤニヤしているフラヴィオを見れば、その言葉に嘘があることは一目瞭然。
しかしアヤメが、「ほら!」とベルを指差しながらオルランドに食って掛かる。
「聞いたやろ! ベルちゃん、おねだりしたこと無いって! せやからウチもしない! そんなん羞恥心で羞恥死するわ!」
「どうしてだい? 私はときどき君に愛されてないんじゃないかって、不安になるよ」
「レオーネ人はそういうものやねん!」
フラヴィオが「ランド」と口を挟んだ。
「アヤメはまだ初心なのだ。それにアヤメを始め、レオーネ国の女は慎ましいものなのだ。そりゃアモーレに『おねだり』されるとそれはもう嬉しいが――あーいやいや、きっと嬉しいことだろうが、強引に要求しては駄目だ」
「ベルに朝・昼・晩と「愛してる」と言わせている父上が仰いますか」
「え?」とフラヴィオの声が裏返る。
「何言ってるのだおまえは? 余は言わせてなどないぞ? 朝・昼・晩と愛していると伝えてもらわないと不安になるからって、アモーレにお願いしてわざわざ言ってもらったりなどしていな――」
「あ、もうお昼ですね。さっきも申しましたが、ベルナデッタはフラヴィオ様を愛しています」
「Oh、アモーレっ……!」
と目前で猛烈に接吻をかまされるベルを見ながら、アヤメが「凄いわ」と呟いて赤面した。
いつもベルは、何の照れも戸惑いも無く「愛している」の言葉を愛する男に伝えている。
またこっちの町を歩くと夫婦や恋人たちが愛の言葉を囁き合っていたり、堂々とバーチョしていたり、アモーレアモーレと呼んでいるのを頻繁に目撃するが、レオーネ国ではあまり見ない光景だった。
それ故、アヤメにはそういったことが気恥ずかしく、増してやレットの中で『おねだり』なんて考えるだけで顔から火が出そうだった。
頭上から視線を感じて顔を上げると、またオルランドの不服そうな顔がある。
「な…なんやの……」
とアヤメが肩を竦めると、オルランドが「分かったよ」と溜め息を吐いた。
「ランド、ちょっと来てくれ。手伝って欲しいことがあるのだ」
とフラヴィオがオルランドを引っ張って、木陰から離れていく。
アヤメの方はベルに呼ばれてその顔を見ると、優しい微笑があった。
きっとフラヴィオはオルランドに手伝って欲しいことは特になく、ベルとアヤメを2人にさせるためのようだと察した。
「ベ…ベルちゃん、ランド怒ったかな……?」
「いいえ、それは無いかと。しかし、残念に思われたようには見えました」
アヤメが困り果てた様子で「ううぅ」と唸ると、ベルがこう問うてきた。
「アヤメ殿下は、オルランド様に愛を言葉や行動で伝えられたとき、幸せではないのですか?」
「それはもちろん幸せやで……めっちゃ」
「では、オルランド様も同じように存じます」
「うん……」
とアヤメは頷いた。
きっとそうだった。
考えてみれば、オルランドが不満を抱いても仕方の無いように思う。
「難しく考える必要はありません。ただ、ご自身のお心に素直になれば良いだけのこと。私はフラヴィオ様を愛しているので、愛していると伝えます。私がフラヴィオ様に朝・昼・晩とそれを伝えているのは、フラヴィオ様に強制されているからではありません。愛しているから伝えているのです。また私にはフラヴィオ様がどうにもこうにも愛しく、愛されているのにもっと愛して頂きたいときがあり、そういうときは自然と求めています」
「ベルちゃんやっぱしてるんやね……『おねだり』」
赤面したベルが咳払いをして続ける。
「た、たしかに後になると少し恥ずかしかったりするのですが……でも、フラヴィオ様は必ず私に応えてくださいますから」
と微笑したベルを見て、アヤメの鼓動が少しばかり上がる。
愛する男に骨の髄まで愛されている女だけに与えられたような、幸福な女の表情がそこにあった。
自身は今とても幸せだが、それでもそんな表情をしたことがないように思う。
「オルランド様だってきっとそうですよ、アヤメ殿下。オルランド様を愛されているのなら、それを素直に言葉や行動で示されてみては? オルランド様はとてもとてもお喜びになりますよ」
ベルがそう優しく語り掛けると、「うん……」と頷いたアヤメ。
少しすると、「よし」と腹を決めたように胸を張った。
「もうすぐ新婚旅行でランドと2人きりになるんやし、ウチもベルちゃんみたいに素直になって、ランドを喜ばせてくるっ…! そしてもっともっと愛される女になってくる……でーーーっ!」
4番目の天使パオラ19歳の誕生日及び結婚式当日。
オルキデーアの農村のほぼ真ん中にある、頑丈な石造りのパオラの屋敷の中。
「よろしいですか、パオラさん。ついでに天使の皆様方」
天使軍元帥の厳粛な栗色の瞳が、花嫁衣裳を纏った本日のプルプル肌の主役や天使たちを見つめていた。
淡々としながらも威厳に満ちた声に、花嫁も天使も、近くにいる花婿も直立不動になる。
その小さな口から指令が出る前から、拒否することは努々許されないと悟る。
「本日は皆様に、ちょっとしたお芝居をしていただきます――」
――時刻が午後0時を回ると、主役の2人がパオラの自宅から出て来た。
天使の中でも特に村天使を愛して止まないオルキデーア農民たちの盛大な拍手の中、結婚式が行われるパオラの自宅付近にある広場へと向かっていく。
カプリコルノ国の結婚式には『オルキデーア式』と『プリームラ式』があり、2人は前者を選んだ。
それはあれやこれやと決まりがあるプリームラ式と比較すると、ひたすらに自由なものだった。
よって2人は拍手喝采の中、花嫁・花婿衣装に身を包んで登場した後、皆の前で「永遠の愛を誓いますだー」の宣誓をしてキスを交わし、指輪交換はとっくの前にしてるので省略。
式はわずか1分で終了した。
「さ、食うべー」
の花婿ファビオの一言で、マサムネの猫4匹とアラブ、テンテンが承知の返事をした。
テレトラスポルトで宮廷の厨房から、料理長フィコやその一番弟子――7番目の天使ベルお手製のご馳走やワイン、ビールをせっせと運んで来る。
広場の全面に配置した円卓よりも、主役2人の席よりも、高いところに用意された豪奢な席には国王フラヴィオが腰掛けている。
笑顔を作っていながらも、碧眼にどこか寂しそうな色が浮かんで見えた。
そこへ、天使軍元帥がパチンと指を鳴らす。
すると散らばっていた天使たちが一斉にフラヴィオの下へと集まっていった。
「フラヴィオ様」と花嫁パオラがフラヴィオの膝の上に座ると、その碧眼が少し動揺した。
「ど……どうしたのだ、パオラ?」
「おらファビオ兄と結婚したことは嬉しいけんども、なんだか切ないだよ。本当はちょっとフラヴィオ様のお嫁さんになりたかったからね」
「――Oh……!」
とフラヴィオが瞼を押さえた一方、他の天使たちも続く。
「私も小さい頃、将来は父上と結婚したいと思ってたのよ?」
「ほんとはビアンカもなのよ、伯父上」
「あたしも初恋はフラヴィオ様だったけど、あたしはフラヴィオ様の6つ年上じゃない? だからずっと先に結婚適齢期に入っちゃったし……ね?」
「ほんまはウチもやねん、フラビー陛下。昔も今もフラビー陛下が一番かっこいいもん」
「ワタシも本当は昔フラヴィオ様が好きだったんだけど、お姉様もフラヴィオ様のこと好きだったから。ワタシは仕方なくフェーデでいっかーみたいな?」
「フェーデには内緒だけど、実はわたしもなのよフラヴィオ様。でもお義姉様には敵わないって分かってから」
フラヴィオが手の中からぽろぽろと涙を落としていく様を、遠くから複雑そうな表情で眺める天使たちの夫やら婚約者やらの男たち。
マストランジェロ一族の男はひとりが泣き出すと連鎖反応が起きるようになっているが、本日それはなかった。
やがて物言いたげに近くにいる天使軍元帥に注目する。
まるで美しい月でも眺めているかのようにフラヴィオを見つめ、上品な仕草で女子供用のワインを傾けていた。
きっと一番複雑な心境であろう花婿が、おそるおそる声を掛ける。
「あ、あの天使軍元帥閣下……オ、オイラの嫁さんをそろそろ……」
「スィー、ファビオさん。もう少々お待ちください」
ベルはそれから感涙するフラヴィオの姿を肴に10分掛けてグラスのヴィーノを飲み干すと、男たちに向かって「ご協力ありがとうございました」と言った。
近くいた執事ファウストに空になったビッキエーレを渡し、フラヴィオの方へと歩いていく。
するとパオラが「大変だべ!」と言いながら、フラヴィオの膝から立ち上がった。
「フラヴィオ様の彼女様のお出ましだべ!」
「やばいわ! 処刑される前に逃げましょう!」
とベラドンナが続くと、天使たちが慌てたように逃げていった。
そしてフラヴィオも狼狽したようだった。
「アモモモモモモ……アモーレ、プンプンか? プンプンなのかっ?」
ベルが「いいえ」と答えると、フラヴィオはほっと胸を撫で下ろした。
「そ、そうか」
「スィー」
と自ら膝の上に座って来たベルを、少し不思議に思って見る。
普段ベルは、ヴァレンティーナがいるだけでなく、これだけの人前でこういうことをしない故に。
「フラヴィオ様、しつこいようですが」
フラヴィオが「うん?」と相槌を打つと、まさに天使のような微笑が表れた。
「ベルナデッタは誰よりも何よりも、他の天使の皆様よりも、フラヴィオ様を愛しています。他の天使の皆様は別の男性と結婚や婚約をしていらっしゃいますが、ベルナデッタは生涯フラヴィオ様だけのものでございます。何がありましても、別の男性を愛することはございません」
「――……うむ」
と微笑したフラヴィオが、ベルを大切そうに抱き締めてバーチョする。
小芝居の仕事を終えた天使たちが、遠くからその様子を見つめて微笑ましそうに囁き合う。
「なんだかんだ、フラヴィオ様にはやっぱりベルちゃんだべね」
「ワタシたちが小芝居する必要なんてなかったんだけど……少しでもフラヴィオ様を喜ばせたくて仕方ないんでしょうね、あの子」
結婚式に招待した北隣のサジッターリオ国女王シャルロッテが、「そうね」と同意しながら寄って来た。傍らには婚約者のここカプリコルノ国第二王子コラードもいる。
「ベルにとって、フラヴィオはつくづく『主』なのね。私、自分のオトコが他の女にチヤホヤされてる様を肴にヴィーノ傾ける女を初めて見たわよ。あの子のフラヴィオ愛には感心……ていうか尊敬しちゃう。やっぱり私も、今からでもベルに協力してあげようかしら」
それを聞いたコラードが「駄目だって」と怒声混じりに口を開いた。
「ロッテはオレの女神で、父上の天使じゃないじゃん」
「分かってるわよ、コラード。私が愛しているのはあなただけだから。だから演技よ、演技」
「駄目だって! 演技だって腹立つよ!」
「ベルを見てると協力してあげたくなるのよ」
「駄目だってば!」
セレーナが小さく咳払いして、シャルロッテに耳打ちする。
「王子殿下たちの年頃では、何を言っても無理かと。フェーデ閣下やアドルフォ閣下は大人ですから我慢出来たのでしょうけど」
「まぁ、そうよね」
とシャルロッテが溜め息を吐いた傍ら、ベラドンナとアリーチェが苦笑しながら王太子オルランドとアヤメを指差した。
2人は喧嘩しているらしく、遠目にもピリピリとした空気が伝わってくる。
「アッチ大丈夫かしらねぇ? ランドは女性に対しては、露骨には怒らないとはいえ」
「コラード殿下の怒り方がフラヴィオ様似だとしたら、ランド殿下はフェーデ似なのよね。あまり表には出さないけど、ヤキモチ焼きなところは変わらない気がするわ」
「当たり前じゃん!」
と、口を挟んだコラードが不服を漏らす。
「父上を喜ばせるのは天使の仕事なんだろうけど、オレたちからすればひたすら迷惑だ!」
「別に大したことしてないじゃない」
とシャルロッテが呆れ顔で言うと、コラードの口が尚のこと尖っていった。
「たしかにしてはいないし、演技だけど、気持ち良いと思う男なんていない! これはガキでも大人でもそうだ!」
「ハイハイ、分かったわよもう。文句があるなら天使軍元帥に直接言えば?」
コラードに一瞬の硬直が訪れた。
その後、顔色を失って戦慄していく。
「ど…どうしてそういうこと言うんだよロッテ……! オレが処刑されてもいいの!?」
「ベルの存在凄まじいことになってるわねー」
ベラドンナとアリーチェが、「あっ」とまたオルランド・アヤメを指差した。
「いよいよ喧嘩が本気になってきたんじゃない?」
「大丈夫かしら……」
と心配する一同の視線の先、オルランドがアヤメの手を引っ張って木のある方へと歩いていく。
カプリコルノ国の女たちよりも一回り小柄な身体をしているアヤメは、オルランドが普通の速度で歩いてしまうと追い付くことが出来ず、小走りになっていた。
「ラ、ランドっ…! 落ち着いてやっ……!」
と、アヤメは狼狽する。
来月で16歳という年齢ながら背丈は180cm弱あり、アヤメの生まれ育ったレオーネ国の男たちよりも大きな骨格をし、また落ち着いていることから最近はすっかり20歳を超えているように見えるオルランド。
アヤメよりも1つ下のはずなのだが、一度もそう思ったことはない。
アヤメが物心付いた頃から、アヤメよりいつだって大人で、いつだって優しく、いつだって穏やかだった。
こっちの女たちよりも小股気味で、ちょこちょこと歩いて見えるアヤメの足に合わせてくれないのは、これが初めてのことのような気がする。
アヤメが完全に引っ張られながら木陰へと辿り着き、周りから見えなくなると、オルランドがアヤメの頬を両手で包み込んだ。
アヤメの深い茶色の瞳には、むっとしていると分かるオルランドの顔が映る。
「アヤメ」
と苛立った様子で溜め息を吐かれると、オルランドの手の中のプルプルもちもちポチャポチャの頬がプクっと膨らんだ。
「私は怒っているのに、何故君は可愛い顔をする」
「何のことやねん」
と突っ込んだ後、アヤメが声高になった。
「ウチは8番目の『天使』なんやから、仕事はちゃんとやらなあかん言うてるやろっ…! 分かってや、もうっ……!」
「だから分かってるよ」
「分かってないやん、怒っとるやん」
「だってアヤメだけは天使の仕事だから仕方なくとか、そういうんじゃなかった。あれは本心だった」
「なんやねん、それ」
「私の知っているアヤメは、子供の頃から父上とフェーデ叔父上のことをかっこいい、かっこいい言ってキャーキャーしてた。さっき今も昔も父上が一番かっこいいって言ってたけど、それって本心なんだろう? 何故なら私は君にそんなに言われたことがなく、キャーキャーされた記憶もほとんど無い」
「それはっ……」
とアヤメが頬を染めた。
「て……照れかくしや。言ったやん、ウチは子供の頃からランドが好きやったって。レオーネ国の女の子は、こっちの女の子みたいに何でもかんでもド直球ちゃうねん。好きやからこそ恥ずかしくて逆に言葉が出てこんこともあるっ……! せやからウチ、ずーっとずーっとランドに想いを伝えられへんかったんやで?」
オルランドの返事が無かった。
その顔が不服に染まっていく。
「私は君のすべてが好きだと思う。でも、そういうところは正直少し寂しいんだ」
というオルランドの気持ちを、アヤメは今初めて知った。
そして堰を切ったように、オルランドが早口気味になって心の内を打ち明ける。
「私は君に愛を伝えない日は無いのに、君はほとんど言ってくれない。どうして? 私はもっと言って欲しいんだ。バーチョだって私からしてばかりで、君からしてくれた記憶が無い。したくないってこと? それにベッドに誘ってくれたことも無いって、私は本当に君の中で夫になれているの?」
「ちょ、待ってや! 言葉とバーチョはまだしも、レ、レットに誘うて……無理無理無理! ウチには絶対無理っ……!」
とアヤメは茹で蛸になるが、オルランドの不満げな声は続く。
「私は先日、こんなことを小耳に挟んだ。ベルは最近、畏怖してしまうど強い女性になったけど、レットの中では父上に『おねだり』するんだそうだ」
「お、おねだ…おねだり……!?」
「私はとても羨ましかった。私も君におねだりされたい」
「あかんあかんあかん! 無理無理無理!」
「嫌だ、されたい」
「無理!」
「されたい」
「無理や!」
「さぁぁぁれぇぇぇたぁぁぁいぃぃぃぃぃ」
「無理やあぁぁぁあ!」
そこへ、フラヴィオの哄笑が割り込んできた。
振り返ると、その本人と赤面してるベルがいた。
「お、お二方が私のせいで喧嘩をされているようだとお聞きしたので、やって来たのですが……」
とベルの小さな唇が尖る。
「な、なんのお話をされているのですかっ…! わ、わた、わたたたしは、『おねだり』など致しませんっ……!」
「なぁ、したことなど無いよなぁアモーレ? 毎度のこと『おねだり』しちゃったりしてないよなぁ?」
とニヤニヤしているフラヴィオを見れば、その言葉に嘘があることは一目瞭然。
しかしアヤメが、「ほら!」とベルを指差しながらオルランドに食って掛かる。
「聞いたやろ! ベルちゃん、おねだりしたこと無いって! せやからウチもしない! そんなん羞恥心で羞恥死するわ!」
「どうしてだい? 私はときどき君に愛されてないんじゃないかって、不安になるよ」
「レオーネ人はそういうものやねん!」
フラヴィオが「ランド」と口を挟んだ。
「アヤメはまだ初心なのだ。それにアヤメを始め、レオーネ国の女は慎ましいものなのだ。そりゃアモーレに『おねだり』されるとそれはもう嬉しいが――あーいやいや、きっと嬉しいことだろうが、強引に要求しては駄目だ」
「ベルに朝・昼・晩と「愛してる」と言わせている父上が仰いますか」
「え?」とフラヴィオの声が裏返る。
「何言ってるのだおまえは? 余は言わせてなどないぞ? 朝・昼・晩と愛していると伝えてもらわないと不安になるからって、アモーレにお願いしてわざわざ言ってもらったりなどしていな――」
「あ、もうお昼ですね。さっきも申しましたが、ベルナデッタはフラヴィオ様を愛しています」
「Oh、アモーレっ……!」
と目前で猛烈に接吻をかまされるベルを見ながら、アヤメが「凄いわ」と呟いて赤面した。
いつもベルは、何の照れも戸惑いも無く「愛している」の言葉を愛する男に伝えている。
またこっちの町を歩くと夫婦や恋人たちが愛の言葉を囁き合っていたり、堂々とバーチョしていたり、アモーレアモーレと呼んでいるのを頻繁に目撃するが、レオーネ国ではあまり見ない光景だった。
それ故、アヤメにはそういったことが気恥ずかしく、増してやレットの中で『おねだり』なんて考えるだけで顔から火が出そうだった。
頭上から視線を感じて顔を上げると、またオルランドの不服そうな顔がある。
「な…なんやの……」
とアヤメが肩を竦めると、オルランドが「分かったよ」と溜め息を吐いた。
「ランド、ちょっと来てくれ。手伝って欲しいことがあるのだ」
とフラヴィオがオルランドを引っ張って、木陰から離れていく。
アヤメの方はベルに呼ばれてその顔を見ると、優しい微笑があった。
きっとフラヴィオはオルランドに手伝って欲しいことは特になく、ベルとアヤメを2人にさせるためのようだと察した。
「ベ…ベルちゃん、ランド怒ったかな……?」
「いいえ、それは無いかと。しかし、残念に思われたようには見えました」
アヤメが困り果てた様子で「ううぅ」と唸ると、ベルがこう問うてきた。
「アヤメ殿下は、オルランド様に愛を言葉や行動で伝えられたとき、幸せではないのですか?」
「それはもちろん幸せやで……めっちゃ」
「では、オルランド様も同じように存じます」
「うん……」
とアヤメは頷いた。
きっとそうだった。
考えてみれば、オルランドが不満を抱いても仕方の無いように思う。
「難しく考える必要はありません。ただ、ご自身のお心に素直になれば良いだけのこと。私はフラヴィオ様を愛しているので、愛していると伝えます。私がフラヴィオ様に朝・昼・晩とそれを伝えているのは、フラヴィオ様に強制されているからではありません。愛しているから伝えているのです。また私にはフラヴィオ様がどうにもこうにも愛しく、愛されているのにもっと愛して頂きたいときがあり、そういうときは自然と求めています」
「ベルちゃんやっぱしてるんやね……『おねだり』」
赤面したベルが咳払いをして続ける。
「た、たしかに後になると少し恥ずかしかったりするのですが……でも、フラヴィオ様は必ず私に応えてくださいますから」
と微笑したベルを見て、アヤメの鼓動が少しばかり上がる。
愛する男に骨の髄まで愛されている女だけに与えられたような、幸福な女の表情がそこにあった。
自身は今とても幸せだが、それでもそんな表情をしたことがないように思う。
「オルランド様だってきっとそうですよ、アヤメ殿下。オルランド様を愛されているのなら、それを素直に言葉や行動で示されてみては? オルランド様はとてもとてもお喜びになりますよ」
ベルがそう優しく語り掛けると、「うん……」と頷いたアヤメ。
少しすると、「よし」と腹を決めたように胸を張った。
「もうすぐ新婚旅行でランドと2人きりになるんやし、ウチもベルちゃんみたいに素直になって、ランドを喜ばせてくるっ…! そしてもっともっと愛される女になってくる……でーーーっ!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる