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新婚旅行-1(本編35.5話・後編)
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――7月上旬に王都オルキデーアで、オルランド16歳・アヤメ17歳の誕生日パラータが行われ。
中旬に、その2人の結婚式及びパラータが行われた。
結婚式はマストランジェロ王家の霊廟から見える――故・王妃ヴィットーリアから見える――南の海でオルキデーア式で行われ、翌日に王都オルキデーアでパラータが開催された。
その後すぐに主役の2人と親類、天使たちは、マサムネの猫4匹のテレトラスポルトで、アヤメの出身国レオーネへと飛び。
オルランドは『紋付袴』、アヤメは『白無垢』と呼ばれる真っ白な花嫁衣裳をまとい、レオーネ式で再びの結婚式。
それが終わった現在、アヤメの方は桃色の『色打掛』にお色直しをし、レオーネ国の宮廷の畳の間で盛大に祝宴が行われている。
主役の2人に祝福の言葉を贈りに来てくれる列席者がようやっと途切れたところで、アヤメが「ふう」と息を吐いた。
「嬉しいけど、疲れるなぁランド?」
「そうだね」
その言葉にはそぐわない表情があった。
アヤメの深い茶色の瞳よりも、気持ち明るい色の瞳が恍惚としている。
「私の妻はなんて美しく、愛らしいんだ。白無垢も良いけど、この可憐な花柄のピンクの衣装も似合ってるよ、アヤメ。君はレオーネ国の天使だったんだね」
アヤメは「もう」と頬を染める。
「レオーネ国には天上界とか天使とか無いんよ、ランドっ……。神様はおるけど」
「そういえばそうだったね。じゃあ、君はレオーネ国の女神だ。えーと、何だっけ……あ、そうそう。君はエビス様だ」
「おっちゃんか」
と突っ込まれたオルランドが、「ええ?」と少し驚いた声を出してアヤメを膝の上に抱っこする。
「ごめん、知らなかったよ。エビス様って、女神じゃなくておじさんだったんだ。怒った?」
「怒ってへんよ。それより、ランドっ……!」
とアヤメが周りの目を気にして膝の上から降りると、オルランドが再び「ごめん」と言った。
「レオーネ国では人前での愛情表現は禁じられてたね」
「き、禁止されてるとかそういうんちゃうけど……ごめん」
「良いんだ。新婚旅行でレオーネ国にいるあいだは従うよ」
と言ったその横顔が悄気ていると分かって、アヤメは少し狼狽する。
オルランドがアヤメに対して募らせていた不満を打ち明けたのは、約半月前のパオラの結婚式の日のこと。
あれからアヤメなりに努力しようとしたが、文化の違いから来る愛情表現の差を埋めるのは難しく。
何の進歩も無く、今日という日を迎えた。
(明日からは新婚旅行や。恥ずかしがってないで、頑張るんやでウチっ……!)
と、改めて気合を入れ直した矢先のこと。
ふと、女の声が聞こえて来た。
「ご結婚おめでとうございます、アヤメ殿下、オルランド殿下。お久しぶりです。今日は兄弟を代表して、わたくしがお祝いに参りました」
オルランドとアヤメに一瞬の硬直が訪れる。
何故なら誰だか忘れた。
その後すぐ、その浅黒い肌と目鼻立ちのくっきりとした美人顔、ヴィルジネ語訛りのレオーネ語、そして『サリー』というヴィルジネ国の民族衣装を着ていることから、アヤメが察した。
「――あ、はい、ありがとうございますー。ほんま久々です。えと……」
また固まってしまう。名前が思い出せない。
マサムネの第一夫人(正室)スミレの長女がアヤメで、この彼女はおそらく第二夫人(側室)アーシャの兄の娘――姪に当たり、アヤメの血の繋がっていない従姉妹ということになる。
そのアーシャの兄はヴィルジネ国の王太子なのだが、増えていなければ現在妻が10人いて子供の数がとても多く、名前なんてまるで覚えられていなかった。
そんなに会うことも無い故に、10人いる妻のうちのどれの娘なのかさえも見当が付かない。
困り果て、アヤメが助けを求めて見たのは近くの席にいる酒池肉林王。一度でも会ったことのある女の顔と名は忘れないように出来ているため、こういうとき大変頼りになる。
「ん?」とアヤメの視線を感じて振り返ったフラヴィオが、彼女の姿に気付くなり「おお」と笑顔を見せた。
「大きくなったなー、ノール」
「お久しぶりです、カプリコルノ陛下」
顔を見合わせたオルランドとアヤメの互いの顔が困惑する。
オルランドの方は名を聞いてもまったく思い出せなく、アヤメの方はたしかに名は聞いたことがあるものの、話した記憶が無い。
「ランドと同い年だから、今年で16か」
アヤメは小さく「えっ」と言って彼女――ノールを見つめた。
オルランドと同い年ということは、アヤメの1つ下だ。レオーネ人のアヤメはカプリコルノ人と比較してもそうだが、ノールの方がずっと大人っぽく見えた。
「覚えているだろう、ランド? ほら、12年前だ」
「12年前? 私が4つの頃ですか……?」
とオルランドがやはり思い出せないでいると、フラヴィオが突如呆れ顔になった。
「それはないだろう、ランド。おまえノールに求婚させておいて」
「へ?」
と、オルランドとアヤメの声がハモッた。
顔を見合わせた2人のうち、片方は狼狽し、もう片方は驚愕していく。
「きゅ、求婚…!? ウチ、その話知らへんよランド……!?」
「ま、待ってアヤメ。何かの誤解だよ。何故なら12年前、私は妹にメロメロだった。他の女の子など眼中になかった。それは君も知っているだろう?」
「うん、知っとるよ。ウチも眼中から外されとったから。なのに、求婚て……ノール殿下には気を持たせるようなことしたってこと……!?」
「ち、違うよ、してないよ。私にそんな記憶はない」
「せやけど――」
フラヴィオが「アヤメ」と口を挟んだ。
「あれはここの宮廷の庭で、子供たち皆で遊んでいたときの話だ。だからそのとき、そなたも一緒にいたぞ?」
「ウチも? うそやん」
と思い出せずにいるアヤメの傍ら、ノールが慌てたように「ごめんなさい」と言った。
「あのとき、わたくしがオルランド殿下に一目惚れをしてしまったのです。その勢いで、将来お嫁さんにしてくださいとお願いしてしまっただけのことです」
「あ、そゆこと」
とアヤメが安堵すると、オルランドもほっとしたようだった。
「あのとき、わたくしはアヤメ殿下を泣かせてしまいました。ごめんなさい」
「え、そうなん?」
とアヤメの方は思い出せなかったが、オルランドは思い出したようだった。
「そういえばあったねー、そんなこと。あのとき私たち子供皆で、カプリコルノでいうナンコンディーノ――レオーネ国の『かくれんぼ』をしていたんだよね」
「そうです。わたくしのこと思い出してくださったのですね、オルランド殿下。ありがとうございます」
「いや、むしろごめんね。大きくなったから分からなかったよ。本当に久しぶりだね」
「はい、またお会いできて光栄です。実はわたくしも一瞬分かりませんでした。あの頃もオルランド殿下は大人びていて優しくて、あんなに素敵だったのに、今はそれ以上になっているなんて」
「ありがとう、ノール殿下。君もとても素敵な女性になったよ。ヴィルジネ国って君みたいな美人が多いよね」
そんな快談をしている2人の傍ら、アヤメが俯いていく。
居心地が悪かった。
美人で大人っぽく、どうやら思ったことを素直に口に出せる様子のノールは、アヤメには無いものを沢山持っているように思えた。
アヤメはもともと自信がある方ではない故に、つい劣等感に苛まれる。
例え社交辞令だったとしても、オルランドがノールを褒めたから尚のことだ。
「8番目の天使よ」
とフラヴィオに呼ばれて、そちらを見る。明るく優しい笑顔があった。
「仕事の時間だぞ」
と、胡坐を掻いている自身の膝を叩く。
アヤメは心が少し和むのを感じながら「スィー」と答え、その指令に従った。
マストランジェロ一族の男の中でも酒池肉林王は女心に敏感で鋭く、甘く優しく出来ているように思う。
またよく幼児扱いされているフラヴィオだが、父親とほぼ同じ年齢だし、子供の頃から実の娘のように可愛がってくれたしで、アヤメにとって憧れの存在であると同時に第二の父親みたいなものだった。
そういう意味で昔から素直に甘えられる対象なのだが、結婚してからというもの、それがオルランドにとっては面白くないらしい。
アヤメがフラヴィオの膝の上に座ってから間もなく、ノールと会話していたオルランドの言葉が不自然なところで途切れる。
「いや、ちょっと……パオラの結婚式に続き、またもや花婿から花嫁を略奪しますか酒池肉林王は」
「人聞きが悪いぞ、ランド。良いではないか、ちょっとくらい。天使の中でもレオーネ人のアヤメは可憐で愛らしく、またとても美しい黒髪をしているから愛でたくなるのだ」
と言いながらフラヴィオがアヤメの腰の下まである黒髪を撫でると、オルランドの眉がたちまち吊り上がっていった。
「あまりベタベタと私の妻に触らないでください。アヤメも無理しなくていい、父上の膝の上から降りるんだ」
アヤメが「いやや」と答えると、オルランドが尚のこと腹を立てたのが分かった。
「どうして。さっきは私の膝の上から降りたじゃないか」
「こっちは天使の仕事やもん。せなあかんもん」
「しなくていいよ、こんな日まで。早く降りて」
「いやや」
「私より父上の方が好きだから?」
「そういうんちゃうけど」
「じゃあ、早く降りて」
「いやや」
「どうして」
「いややもん」
「だからどうして」
とオルランドの語調が強くなると、アヤメが閉口した。
オルランドから溜め息が漏れる。
「ちゃんと話してくれなきゃ分からないよ。分からないから私はどうしようも出来ない。君はときどき言葉足らずだ」
余計にむっつりと黙り込んでしまったアヤメを、ノールが小首を傾げて不思議そうに見つめる。
フラヴィオがアヤメの頭を撫でながら口を開いた。
「知ってるか、ノール。レオーネ人はな、『以心伝心』という技を持っているのだ。なんと、わざわざ言葉にしなくても通じ合えてしまうのだ。アヤメはその技を修得している。凄いだろう?」
ノールが驚いた顔をした。
「本当に凄いですね、アヤメ殿下――レオーネ人って。言葉にしなくても、心と心で話すことができるなんて。でも……」
とオルランドを一瞥する。
「レオーネ人同士はそれで良いのでしょうが、普通は口に出して言わないと分からないものです、アヤメ殿下。増してや、喧嘩で黙られてしまっては解決しようにも出来ません」
言い返そうとしたアヤメだったが、すぐに口を閉じる。
図星だった。
フラヴィオはさっきアヤメを庇ってああ言ってくれたが、レオーネ人同士でも口で言わないと分からないときだってあるし、言うべきときだってある。
それが喧嘩にしたって、愛情表現にしたって、ド直球文化で育ったオルランドを困惑させてしまっているのは、もう分かっている。
だから明日の新婚旅行から頑張ろうと張り切っていたところだったのに、ノールの出現は最悪だった。
劣等感で一杯になっただけでなく、責められて胸が苦しくなり、言葉は余計に喉の奥に引っ込んでいって、代わりに「あーん」と泣き出してしまう。
おまけに自身が悪いと分かっているのに、幼いことに理不尽な憎まれ口まで出てくる。
「ランドのどあほっ…! どあほっ……!」
すると、女の涙や泣き声に敏感なマストランジェロ一族の男たちがすぐに「あっ」と声を上げて集合し、大騒ぎになる。
「フェーデ、ちょっと頼む」
とアヤメはフラヴィオの膝から、フェデリコの膝へ。
「よしよし、どうしたんだアヤメ? どこか痛いのか?」
とフェデリコに小さな子供をあやすように宥められるアヤメの一方、オルランドはフラヴィオに首根っこを掴まれて部屋の外へと引きずられていった。
一撃目に力の王の拳を頭に食らい、二撃目に木の床を額に食らい、あまりの激痛に「ぐあぁ」と呻いて蹲る。
「何をしているのだ、おまえは! 新婚ホヤホヤの妻の前で、他の女を褒める奴があるか! おまえはマストランジェロ一族の男として失格だ!」
とフラヴィオに怒号されると、オルランドがむっとして顔を上げた。
「私は3歳から必読の『マストランジェロ王家男子家訓の書・第一巻』の1頁目に書かれている『女と言葉を交わした際は必ず褒めるべし』に従ったまでのことです! 父上からだって直接そう教え込まれましたし、父上だって母上の前で堂々と他の女性を褒めていましたし、父上は今でも――ベルの前でもそうではありませんか!」
「馬鹿か、おまえは! 余は幸いヴィットーリアやベルのような器の広すぎる女に恵まれたからであって、大抵はそうは行かぬのだぞ! そんなことわざわざ言わずとも『マストランジェロ王家男子家訓の書・第一巻』の3頁目に書かれている『デート中は決して他の女を見るべからず』から察することが出来るだろう!」
「そ…それはたしかに……すみませんでした」
と反省したオルランドだったが、その後すぐに激昂する。
「――って、ちょっと待った! 他の女を見るべからずに関しては、父上は偉そうに言わないでくださいよ!? 父上はどんなときだって美幼女・美少女・美女・美熟女・巨乳・巨尻を見かければ振り返るんですから! 私より父上の方がずっとマストランジェロ一族の男として失格だ!」
「ああ、余はたしかに振り返る、認めよう! だがな、マストランジェロ王家の中でも酒池肉林王を謳われる余には、おまえには計り知れぬほどのオスの子孫繁栄本能が備わっているのだ! どうにもこうにも身体が勝手に動いてしまうのだ! 余だってやってしまう度にアモーレに嫌われたらと戦慄するが、ほぼ不可抗力に等しく逆らえないのだ! でも余はな、おまえのように妻に恥を掻かせ、俯かせたことなど一度も無いぞ! 恥を知れ、この馬鹿息子!」
「ええ、反省しましたよ! でも息子の妻にベタベタと必要以上に触る父上だって反省してくださいよ! 恥を知ってくださいよ! 酒池肉林王っていうか、この変態痴漢オヤジ!」
「なっ、何だと!? 『オヤジ』じゃなくて『お兄様』と言えコラァァァっ!」
とフラヴィオがオルランドの胸倉を引っ掴もうかとき、
「ソコですか?」
と、割り込んできた冷静な声。
ベルだった。
「――アモーレ!」
とオルランドの胸倉を掴もうとしていた手は方向転換し、ベルを優しく抱っこする。
「どこへ行っていたのだ? そなたが傍にいてくれないと、どんなに楽しく賑やかな宴だって心細くなってしまうではないか」
「申し訳ございません。ティーナ様と共に、お花摘みへ行って参りました」
それはつまり厠へ行って来たという意味であるが、フラヴィオは言葉そのままを受け止めて恍惚とする。
「そうかそうか。愛らしいな、余の天使たちは」
と頬にバーチョされながら、ベルが少し当惑した様子で「ところで」とオルランドを見た。
「アヤメ殿下が泣いておられるようですが……」
「うん……私が悪いんだ。謝って来るよ。でも……」
ベルが「スィー」と相槌を打つと、オルランドが小さな溜め息を吐いた。
「文化の違いって、思ったより大きいものだね」
と、宴の間へと戻っていく。
フラヴィオとベルが顔を見合わせた。少し不安げな互いの顔がある。
「どうもあの2人、先日のパオラの結婚式からギクシャクするときがあるな」
「そうですね。しかし、明日からの新婚旅行ではアヤメ殿下がオルランド様のためにご尽力されるようですし、オルランド様もアヤメ殿下をいつも気遣われていらっしゃいますから、私は大丈夫だと存じますが……」
と、ベルが閉まり切っていなかった襖から宴の間を覗き込んだ。
アヤメの頭を撫でるオルランドやマストランジェロ一族の男たち、マサムネ、呆れ顔でアヤメを叱っている様子のスミレの他、ノールの姿が見えた。
「あちらのヴィルジネ国の女性はどちら様でしょうか」
「彼女はノールといって、ヴィルジネ王太子殿下の第三夫人の次女――王女だ」
「ヴィルジネ国の王女殿下……ということは、あながち冗談でも無いということでしょうか。いえ、でも、本日の夕餉の希望を出すかのように軽い口調でしたし、やはり冗談なのでしょうか……?」
フラヴィオが「うん?」とベルの顔を覗き込むと、困惑した栗色の瞳があった。
「フラヴィオ様はどう思われますか? 先ほどノール殿下がアヤメ殿下に、オルランド様の第二夫人になりたいと仰っていたのですが」
「え」
とノールに顔を向けたフラヴィオの顔に、苦笑が浮かんでいった。
「それは冗談…………じゃ、ないかもな……――」
中旬に、その2人の結婚式及びパラータが行われた。
結婚式はマストランジェロ王家の霊廟から見える――故・王妃ヴィットーリアから見える――南の海でオルキデーア式で行われ、翌日に王都オルキデーアでパラータが開催された。
その後すぐに主役の2人と親類、天使たちは、マサムネの猫4匹のテレトラスポルトで、アヤメの出身国レオーネへと飛び。
オルランドは『紋付袴』、アヤメは『白無垢』と呼ばれる真っ白な花嫁衣裳をまとい、レオーネ式で再びの結婚式。
それが終わった現在、アヤメの方は桃色の『色打掛』にお色直しをし、レオーネ国の宮廷の畳の間で盛大に祝宴が行われている。
主役の2人に祝福の言葉を贈りに来てくれる列席者がようやっと途切れたところで、アヤメが「ふう」と息を吐いた。
「嬉しいけど、疲れるなぁランド?」
「そうだね」
その言葉にはそぐわない表情があった。
アヤメの深い茶色の瞳よりも、気持ち明るい色の瞳が恍惚としている。
「私の妻はなんて美しく、愛らしいんだ。白無垢も良いけど、この可憐な花柄のピンクの衣装も似合ってるよ、アヤメ。君はレオーネ国の天使だったんだね」
アヤメは「もう」と頬を染める。
「レオーネ国には天上界とか天使とか無いんよ、ランドっ……。神様はおるけど」
「そういえばそうだったね。じゃあ、君はレオーネ国の女神だ。えーと、何だっけ……あ、そうそう。君はエビス様だ」
「おっちゃんか」
と突っ込まれたオルランドが、「ええ?」と少し驚いた声を出してアヤメを膝の上に抱っこする。
「ごめん、知らなかったよ。エビス様って、女神じゃなくておじさんだったんだ。怒った?」
「怒ってへんよ。それより、ランドっ……!」
とアヤメが周りの目を気にして膝の上から降りると、オルランドが再び「ごめん」と言った。
「レオーネ国では人前での愛情表現は禁じられてたね」
「き、禁止されてるとかそういうんちゃうけど……ごめん」
「良いんだ。新婚旅行でレオーネ国にいるあいだは従うよ」
と言ったその横顔が悄気ていると分かって、アヤメは少し狼狽する。
オルランドがアヤメに対して募らせていた不満を打ち明けたのは、約半月前のパオラの結婚式の日のこと。
あれからアヤメなりに努力しようとしたが、文化の違いから来る愛情表現の差を埋めるのは難しく。
何の進歩も無く、今日という日を迎えた。
(明日からは新婚旅行や。恥ずかしがってないで、頑張るんやでウチっ……!)
と、改めて気合を入れ直した矢先のこと。
ふと、女の声が聞こえて来た。
「ご結婚おめでとうございます、アヤメ殿下、オルランド殿下。お久しぶりです。今日は兄弟を代表して、わたくしがお祝いに参りました」
オルランドとアヤメに一瞬の硬直が訪れる。
何故なら誰だか忘れた。
その後すぐ、その浅黒い肌と目鼻立ちのくっきりとした美人顔、ヴィルジネ語訛りのレオーネ語、そして『サリー』というヴィルジネ国の民族衣装を着ていることから、アヤメが察した。
「――あ、はい、ありがとうございますー。ほんま久々です。えと……」
また固まってしまう。名前が思い出せない。
マサムネの第一夫人(正室)スミレの長女がアヤメで、この彼女はおそらく第二夫人(側室)アーシャの兄の娘――姪に当たり、アヤメの血の繋がっていない従姉妹ということになる。
そのアーシャの兄はヴィルジネ国の王太子なのだが、増えていなければ現在妻が10人いて子供の数がとても多く、名前なんてまるで覚えられていなかった。
そんなに会うことも無い故に、10人いる妻のうちのどれの娘なのかさえも見当が付かない。
困り果て、アヤメが助けを求めて見たのは近くの席にいる酒池肉林王。一度でも会ったことのある女の顔と名は忘れないように出来ているため、こういうとき大変頼りになる。
「ん?」とアヤメの視線を感じて振り返ったフラヴィオが、彼女の姿に気付くなり「おお」と笑顔を見せた。
「大きくなったなー、ノール」
「お久しぶりです、カプリコルノ陛下」
顔を見合わせたオルランドとアヤメの互いの顔が困惑する。
オルランドの方は名を聞いてもまったく思い出せなく、アヤメの方はたしかに名は聞いたことがあるものの、話した記憶が無い。
「ランドと同い年だから、今年で16か」
アヤメは小さく「えっ」と言って彼女――ノールを見つめた。
オルランドと同い年ということは、アヤメの1つ下だ。レオーネ人のアヤメはカプリコルノ人と比較してもそうだが、ノールの方がずっと大人っぽく見えた。
「覚えているだろう、ランド? ほら、12年前だ」
「12年前? 私が4つの頃ですか……?」
とオルランドがやはり思い出せないでいると、フラヴィオが突如呆れ顔になった。
「それはないだろう、ランド。おまえノールに求婚させておいて」
「へ?」
と、オルランドとアヤメの声がハモッた。
顔を見合わせた2人のうち、片方は狼狽し、もう片方は驚愕していく。
「きゅ、求婚…!? ウチ、その話知らへんよランド……!?」
「ま、待ってアヤメ。何かの誤解だよ。何故なら12年前、私は妹にメロメロだった。他の女の子など眼中になかった。それは君も知っているだろう?」
「うん、知っとるよ。ウチも眼中から外されとったから。なのに、求婚て……ノール殿下には気を持たせるようなことしたってこと……!?」
「ち、違うよ、してないよ。私にそんな記憶はない」
「せやけど――」
フラヴィオが「アヤメ」と口を挟んだ。
「あれはここの宮廷の庭で、子供たち皆で遊んでいたときの話だ。だからそのとき、そなたも一緒にいたぞ?」
「ウチも? うそやん」
と思い出せずにいるアヤメの傍ら、ノールが慌てたように「ごめんなさい」と言った。
「あのとき、わたくしがオルランド殿下に一目惚れをしてしまったのです。その勢いで、将来お嫁さんにしてくださいとお願いしてしまっただけのことです」
「あ、そゆこと」
とアヤメが安堵すると、オルランドもほっとしたようだった。
「あのとき、わたくしはアヤメ殿下を泣かせてしまいました。ごめんなさい」
「え、そうなん?」
とアヤメの方は思い出せなかったが、オルランドは思い出したようだった。
「そういえばあったねー、そんなこと。あのとき私たち子供皆で、カプリコルノでいうナンコンディーノ――レオーネ国の『かくれんぼ』をしていたんだよね」
「そうです。わたくしのこと思い出してくださったのですね、オルランド殿下。ありがとうございます」
「いや、むしろごめんね。大きくなったから分からなかったよ。本当に久しぶりだね」
「はい、またお会いできて光栄です。実はわたくしも一瞬分かりませんでした。あの頃もオルランド殿下は大人びていて優しくて、あんなに素敵だったのに、今はそれ以上になっているなんて」
「ありがとう、ノール殿下。君もとても素敵な女性になったよ。ヴィルジネ国って君みたいな美人が多いよね」
そんな快談をしている2人の傍ら、アヤメが俯いていく。
居心地が悪かった。
美人で大人っぽく、どうやら思ったことを素直に口に出せる様子のノールは、アヤメには無いものを沢山持っているように思えた。
アヤメはもともと自信がある方ではない故に、つい劣等感に苛まれる。
例え社交辞令だったとしても、オルランドがノールを褒めたから尚のことだ。
「8番目の天使よ」
とフラヴィオに呼ばれて、そちらを見る。明るく優しい笑顔があった。
「仕事の時間だぞ」
と、胡坐を掻いている自身の膝を叩く。
アヤメは心が少し和むのを感じながら「スィー」と答え、その指令に従った。
マストランジェロ一族の男の中でも酒池肉林王は女心に敏感で鋭く、甘く優しく出来ているように思う。
またよく幼児扱いされているフラヴィオだが、父親とほぼ同じ年齢だし、子供の頃から実の娘のように可愛がってくれたしで、アヤメにとって憧れの存在であると同時に第二の父親みたいなものだった。
そういう意味で昔から素直に甘えられる対象なのだが、結婚してからというもの、それがオルランドにとっては面白くないらしい。
アヤメがフラヴィオの膝の上に座ってから間もなく、ノールと会話していたオルランドの言葉が不自然なところで途切れる。
「いや、ちょっと……パオラの結婚式に続き、またもや花婿から花嫁を略奪しますか酒池肉林王は」
「人聞きが悪いぞ、ランド。良いではないか、ちょっとくらい。天使の中でもレオーネ人のアヤメは可憐で愛らしく、またとても美しい黒髪をしているから愛でたくなるのだ」
と言いながらフラヴィオがアヤメの腰の下まである黒髪を撫でると、オルランドの眉がたちまち吊り上がっていった。
「あまりベタベタと私の妻に触らないでください。アヤメも無理しなくていい、父上の膝の上から降りるんだ」
アヤメが「いやや」と答えると、オルランドが尚のこと腹を立てたのが分かった。
「どうして。さっきは私の膝の上から降りたじゃないか」
「こっちは天使の仕事やもん。せなあかんもん」
「しなくていいよ、こんな日まで。早く降りて」
「いやや」
「私より父上の方が好きだから?」
「そういうんちゃうけど」
「じゃあ、早く降りて」
「いやや」
「どうして」
「いややもん」
「だからどうして」
とオルランドの語調が強くなると、アヤメが閉口した。
オルランドから溜め息が漏れる。
「ちゃんと話してくれなきゃ分からないよ。分からないから私はどうしようも出来ない。君はときどき言葉足らずだ」
余計にむっつりと黙り込んでしまったアヤメを、ノールが小首を傾げて不思議そうに見つめる。
フラヴィオがアヤメの頭を撫でながら口を開いた。
「知ってるか、ノール。レオーネ人はな、『以心伝心』という技を持っているのだ。なんと、わざわざ言葉にしなくても通じ合えてしまうのだ。アヤメはその技を修得している。凄いだろう?」
ノールが驚いた顔をした。
「本当に凄いですね、アヤメ殿下――レオーネ人って。言葉にしなくても、心と心で話すことができるなんて。でも……」
とオルランドを一瞥する。
「レオーネ人同士はそれで良いのでしょうが、普通は口に出して言わないと分からないものです、アヤメ殿下。増してや、喧嘩で黙られてしまっては解決しようにも出来ません」
言い返そうとしたアヤメだったが、すぐに口を閉じる。
図星だった。
フラヴィオはさっきアヤメを庇ってああ言ってくれたが、レオーネ人同士でも口で言わないと分からないときだってあるし、言うべきときだってある。
それが喧嘩にしたって、愛情表現にしたって、ド直球文化で育ったオルランドを困惑させてしまっているのは、もう分かっている。
だから明日の新婚旅行から頑張ろうと張り切っていたところだったのに、ノールの出現は最悪だった。
劣等感で一杯になっただけでなく、責められて胸が苦しくなり、言葉は余計に喉の奥に引っ込んでいって、代わりに「あーん」と泣き出してしまう。
おまけに自身が悪いと分かっているのに、幼いことに理不尽な憎まれ口まで出てくる。
「ランドのどあほっ…! どあほっ……!」
すると、女の涙や泣き声に敏感なマストランジェロ一族の男たちがすぐに「あっ」と声を上げて集合し、大騒ぎになる。
「フェーデ、ちょっと頼む」
とアヤメはフラヴィオの膝から、フェデリコの膝へ。
「よしよし、どうしたんだアヤメ? どこか痛いのか?」
とフェデリコに小さな子供をあやすように宥められるアヤメの一方、オルランドはフラヴィオに首根っこを掴まれて部屋の外へと引きずられていった。
一撃目に力の王の拳を頭に食らい、二撃目に木の床を額に食らい、あまりの激痛に「ぐあぁ」と呻いて蹲る。
「何をしているのだ、おまえは! 新婚ホヤホヤの妻の前で、他の女を褒める奴があるか! おまえはマストランジェロ一族の男として失格だ!」
とフラヴィオに怒号されると、オルランドがむっとして顔を上げた。
「私は3歳から必読の『マストランジェロ王家男子家訓の書・第一巻』の1頁目に書かれている『女と言葉を交わした際は必ず褒めるべし』に従ったまでのことです! 父上からだって直接そう教え込まれましたし、父上だって母上の前で堂々と他の女性を褒めていましたし、父上は今でも――ベルの前でもそうではありませんか!」
「馬鹿か、おまえは! 余は幸いヴィットーリアやベルのような器の広すぎる女に恵まれたからであって、大抵はそうは行かぬのだぞ! そんなことわざわざ言わずとも『マストランジェロ王家男子家訓の書・第一巻』の3頁目に書かれている『デート中は決して他の女を見るべからず』から察することが出来るだろう!」
「そ…それはたしかに……すみませんでした」
と反省したオルランドだったが、その後すぐに激昂する。
「――って、ちょっと待った! 他の女を見るべからずに関しては、父上は偉そうに言わないでくださいよ!? 父上はどんなときだって美幼女・美少女・美女・美熟女・巨乳・巨尻を見かければ振り返るんですから! 私より父上の方がずっとマストランジェロ一族の男として失格だ!」
「ああ、余はたしかに振り返る、認めよう! だがな、マストランジェロ王家の中でも酒池肉林王を謳われる余には、おまえには計り知れぬほどのオスの子孫繁栄本能が備わっているのだ! どうにもこうにも身体が勝手に動いてしまうのだ! 余だってやってしまう度にアモーレに嫌われたらと戦慄するが、ほぼ不可抗力に等しく逆らえないのだ! でも余はな、おまえのように妻に恥を掻かせ、俯かせたことなど一度も無いぞ! 恥を知れ、この馬鹿息子!」
「ええ、反省しましたよ! でも息子の妻にベタベタと必要以上に触る父上だって反省してくださいよ! 恥を知ってくださいよ! 酒池肉林王っていうか、この変態痴漢オヤジ!」
「なっ、何だと!? 『オヤジ』じゃなくて『お兄様』と言えコラァァァっ!」
とフラヴィオがオルランドの胸倉を引っ掴もうかとき、
「ソコですか?」
と、割り込んできた冷静な声。
ベルだった。
「――アモーレ!」
とオルランドの胸倉を掴もうとしていた手は方向転換し、ベルを優しく抱っこする。
「どこへ行っていたのだ? そなたが傍にいてくれないと、どんなに楽しく賑やかな宴だって心細くなってしまうではないか」
「申し訳ございません。ティーナ様と共に、お花摘みへ行って参りました」
それはつまり厠へ行って来たという意味であるが、フラヴィオは言葉そのままを受け止めて恍惚とする。
「そうかそうか。愛らしいな、余の天使たちは」
と頬にバーチョされながら、ベルが少し当惑した様子で「ところで」とオルランドを見た。
「アヤメ殿下が泣いておられるようですが……」
「うん……私が悪いんだ。謝って来るよ。でも……」
ベルが「スィー」と相槌を打つと、オルランドが小さな溜め息を吐いた。
「文化の違いって、思ったより大きいものだね」
と、宴の間へと戻っていく。
フラヴィオとベルが顔を見合わせた。少し不安げな互いの顔がある。
「どうもあの2人、先日のパオラの結婚式からギクシャクするときがあるな」
「そうですね。しかし、明日からの新婚旅行ではアヤメ殿下がオルランド様のためにご尽力されるようですし、オルランド様もアヤメ殿下をいつも気遣われていらっしゃいますから、私は大丈夫だと存じますが……」
と、ベルが閉まり切っていなかった襖から宴の間を覗き込んだ。
アヤメの頭を撫でるオルランドやマストランジェロ一族の男たち、マサムネ、呆れ顔でアヤメを叱っている様子のスミレの他、ノールの姿が見えた。
「あちらのヴィルジネ国の女性はどちら様でしょうか」
「彼女はノールといって、ヴィルジネ王太子殿下の第三夫人の次女――王女だ」
「ヴィルジネ国の王女殿下……ということは、あながち冗談でも無いということでしょうか。いえ、でも、本日の夕餉の希望を出すかのように軽い口調でしたし、やはり冗談なのでしょうか……?」
フラヴィオが「うん?」とベルの顔を覗き込むと、困惑した栗色の瞳があった。
「フラヴィオ様はどう思われますか? 先ほどノール殿下がアヤメ殿下に、オルランド様の第二夫人になりたいと仰っていたのですが」
「え」
とノールに顔を向けたフラヴィオの顔に、苦笑が浮かんでいった。
「それは冗談…………じゃ、ないかもな……――」
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