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第26話 不調な雲行き
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3日が経って約束の日の朝となった。
「今日は……ちょっと曇っているわね。大丈夫かしら?」
雨が降れば出発はできない。
不安なステラの心を映したように、窓から確認した空は暗く太陽を陰らせていたのだった。
「パラパラとした小雨程度なら出発すると言っていましたし……この分なら大丈夫じゃないですか?」
「そうかしら~」
この3日の間、旅支度の買い物をしたりして過ごしていたのだがステラは終始ソワソワと落ち着かない様子で……。
「まだまだ国境にも近いこの街から私たちも早く離れたいですし、分かりますけどね。もう少し落ち着いたらいかがですか?」
「えっ? えぇ。……そうね」
「まったく。まだまだ――えっ!?」
赤ん坊を抱き上げようとしたハンナの手はピタリと止まった。
「ん? どうしたの?」
「赤ん坊が――熱いんです! 少し前に熱っぽかった時の比ではなく――まるで茹でたての鶏肉みたいに」
そう言われてステラが赤ん坊の額に手をやると――。
「あつっ! な、なにこれ……えっ? えっ?」
「ど、どうしましょう~。お医者様に……」
赤ん坊の世話も少しは慣れてきたステラとハンナだったが、驚くほど熱くなっている赤ン坊に二人してパニックになっていた。
あの邸からの旅路の途中、何度か赤ん坊特有の熱を出したことはあったがここまでの高熱は初めての経験。
泣かずに大人しくしているなと思っていたそれもただグッタリとしているだけであったのだ。
「いえ、まだこの子は教会で洗礼も受けてない名無し。お医者様に正規に診てもらえるかどうか……分かりません」
「じゃあどうするのっ!? このままじゃあ」
「裏診療なら……。でもその代わり、高額な診察費がかかるとか」
「い、いくら? いくらなの!?」
「今あるだけのお金では、足りないかもしれません……」
医者に診てもらえない可能性が高いと分かるやステラは顔を青ざめさせて落胆した。
「と、とりあえずっ! えっと、えっと――私、水と手拭いをもらってくるわね!」
「そ、そうですね。体を冷やして水も飲ませましょう!」
「そうね。分かったわ」
そう返事をしたステラは慌てて一階へと降り、食堂で仕事をしていたこの宿の主人に頼んで水を入れた木桶やら手拭いをもらって帰ってきた。
「ただいま!」
冷たい水で濡らした布で体を拭いたり着替えさせたり、どうにか熱が下がらないものかと布で扇いでみたりとできることをやってみることにした。
と、そこへドアをノックする音が――。
「ユリシーズです。ステラさん、どうされました? 何やら慌てて部屋に戻られていましたが」
「今日は……ちょっと曇っているわね。大丈夫かしら?」
雨が降れば出発はできない。
不安なステラの心を映したように、窓から確認した空は暗く太陽を陰らせていたのだった。
「パラパラとした小雨程度なら出発すると言っていましたし……この分なら大丈夫じゃないですか?」
「そうかしら~」
この3日の間、旅支度の買い物をしたりして過ごしていたのだがステラは終始ソワソワと落ち着かない様子で……。
「まだまだ国境にも近いこの街から私たちも早く離れたいですし、分かりますけどね。もう少し落ち着いたらいかがですか?」
「えっ? えぇ。……そうね」
「まったく。まだまだ――えっ!?」
赤ん坊を抱き上げようとしたハンナの手はピタリと止まった。
「ん? どうしたの?」
「赤ん坊が――熱いんです! 少し前に熱っぽかった時の比ではなく――まるで茹でたての鶏肉みたいに」
そう言われてステラが赤ん坊の額に手をやると――。
「あつっ! な、なにこれ……えっ? えっ?」
「ど、どうしましょう~。お医者様に……」
赤ん坊の世話も少しは慣れてきたステラとハンナだったが、驚くほど熱くなっている赤ン坊に二人してパニックになっていた。
あの邸からの旅路の途中、何度か赤ん坊特有の熱を出したことはあったがここまでの高熱は初めての経験。
泣かずに大人しくしているなと思っていたそれもただグッタリとしているだけであったのだ。
「いえ、まだこの子は教会で洗礼も受けてない名無し。お医者様に正規に診てもらえるかどうか……分かりません」
「じゃあどうするのっ!? このままじゃあ」
「裏診療なら……。でもその代わり、高額な診察費がかかるとか」
「い、いくら? いくらなの!?」
「今あるだけのお金では、足りないかもしれません……」
医者に診てもらえない可能性が高いと分かるやステラは顔を青ざめさせて落胆した。
「と、とりあえずっ! えっと、えっと――私、水と手拭いをもらってくるわね!」
「そ、そうですね。体を冷やして水も飲ませましょう!」
「そうね。分かったわ」
そう返事をしたステラは慌てて一階へと降り、食堂で仕事をしていたこの宿の主人に頼んで水を入れた木桶やら手拭いをもらって帰ってきた。
「ただいま!」
冷たい水で濡らした布で体を拭いたり着替えさせたり、どうにか熱が下がらないものかと布で扇いでみたりとできることをやってみることにした。
と、そこへドアをノックする音が――。
「ユリシーズです。ステラさん、どうされました? 何やら慌てて部屋に戻られていましたが」
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