やさしい竜と金の姫

白乃いちじく

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番外編

おまけのイチャイチャ編(シーラ視点)**注意:多分R15**

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 どうしよう……
 シーラは目の前の光景にひたすら固まっていた。ここはいろいろな店が建ち並ぶ大きな街だ。行き交う人々もお洒落である。
 ケインが子供用品の前から離れない……
 そう、先程からべったりと、ずーっと子供用品が並べられたショーウィンドウに張り付いて離れないのだ。

「あ、あの、ケイン? そろそろ行かないと……」

 わたしはくいくい彼のコートを引っ張った。
 日が暮れる、わたしはそう言いかけるも、気のよさそうな女性店員が、ショーウィンドウに張り付いたケインに気が付いたのだろう、わざわざ表まで出て来た。

「あらぁ、いいわねぇ。若い夫婦は。そろそろマタニティドレスが欲しいのかしら?」

 女性定員の言葉に、わたしは顔が赤くなるのを感じた。
 そろそろもなにも! まだ、何にもしていません! これで出来ていたら奇跡だわ!

「ん? ああ、そうだな。マタニティドレス、シーラ、どれがいい?」

 ケインが嬉しそうに同調する。
 そこ! そこで嬉しそうにしない! 出来ているわけないでしょう! 店員さんはどう見ても子供が出来ている前提で話しているわよ!
 でも、結局買ってしまった……
 水色の綺麗なマタニティドレス……いらないって言えなくて……

「他に欲しいものは?」

 ケインにそう言われ、彼の顔を見上げる。ボサボサの髪の向こうに見える黒い瞳は相変わらず温かい。とくんと心臓が波打った。
 他……結婚するなら指輪、よね? おずおずとそう言うと、ケインは渋い顔だ。嫌なのかしら?

「……シーラだけならいいけど、な」

 どうして?

「万が一ドラゴンの姿になったときに、指輪が壊れる」

 ああ、そうよ、ね……

「同じデザインの耳飾りならどうかしら?」

 わたしがそう提案しても、ケインはやっぱり渋い顔だ。なくすのが嫌みたいね。

「こういう時、魔術師なら紛失しないように出来るんだろうが……」

 ぼそりとケインがそう言った。

「魔術で紛失しないようにしてもらうってこと?」
「そう、ヒューがいればなぁ……」

 ぽつりと言ったケインの言葉た気になった。
 ヒュー?

「俺と仲が良かった魔術師だよ」

 ケインがそう言って笑った。

「え、ドラゴンと仲良しの魔術師なんていたの?」

 わたしは目を丸くしてしまう。魔術師は天敵だって言っていたのに。

「ああ、だから俺はいまこうして生きている」

 友達だった魔術師が助けてくれたから、ケインはこうして生き残ったらしい。でなければ、仲間共々殺されていたんだとか……

「ごめんなさい」
「どうしてシーラが謝るんだ?」
「だって、人間のせいで……」

 仲間がいなくなってしまった。わたしがそう言うと、ケインがふわりと笑った。少し寂しげで、やっぱり胸がずきりと痛んだ。

「そうだな。けど、そうじゃない人間もたくさんいるって知っている。そもそも俺を育ててくれたのも人間だったし。俺を拾って育ててくれたのは、年老いた木こりだったんだ」

 わたしはびっくりしてしまった。驚いて見上げれば、ケインが笑う。

「俺は多分、いろいろ特殊なんだろうな。生まれた時に親がいないなんてのは、まずありえないから……」

 捨てドラゴンということかしら?
 ケインが首を捻った。

「さあ? 生まれたら、周囲に親の姿がなかったってだけだから、詳しい事情は分からない。でも、はは、そうそう、それで一生懸命、俺は人間の真似をしたな。人に変化できるような年になると、人間らしく振る舞って、育ての親を喜ばせようとした」
「育ての親はケインを愛してくれたのね?」
「そうだな。優しかったよ。ケインって名前もじっちゃんにつけて貰ったんだ。ドラゴンの名前は人に発音は無理だから、今はそれを名乗っている」
「あら……ドラゴンの名前なんてあるの?」
「ああ、ある。後からもらった名前だけれど」
「どんな名前?」
「あー……」

 ケインの口から漏れた、キィィーという甲高い音にびっくりして、わたしは思わず耳を押さえてしまった。驚いたわたしの顔を見て、ケインが苦笑する。

「な? 聞こえないだろ? 人間には識別不可らしい」
「そう、少し残念ね」

 ケインが笑う。

「ケインって呼んでくれ。じっちゃんからもらった自慢の名前だから」
「ええ、そうするわ」
「そうだ、指輪だけどな。この中に気に入った宝石はあるか?」

 そう言ってケインが広げた手のひらには、キラキラと輝く宝石がのっていた。

「え? これ……」
「人間はこういったものが好きだろう?」
「ええ、とっても素敵。どうしたの?」
「俺のおやつ」

 え?
 目を丸くすると、ケインが笑った。

「ドラゴンにとって宝石は食い物なんだよ。はは、知らなかったか? だから美味しそうな宝石を見つけたら、巣に貯蔵しておくんだ。俺の場合、人間に漁られると分かって、貯蔵するのはやめたけどな。気に入ったものがあったら、それで指輪を作ろう。これなんかどうだ? 青い……シーラの目の色と同じだ」

 わたしはじっとケインを見上げた。ケインの瞳は黒いけれど、ドラゴンになると金色になるのよね。

「金色の宝石は……」
「金色? ああ……トパーズがある。これがいいか? この中では一番うまそうだ」
「美味しそうって……」
「おやつだって言ったろ? 何故か俺達がうまそうだと思うものに人間は高値をつける。俺達と価値観が妙に一致するから、貯蔵庫が荒らされて困るんだ」

 わたしはつい笑ってしまった。
 欲深なドラゴンというより、やっぱり欲深なのは人間よね。

「他に欲しいものは?」
「そろそろお腹がすいたわ?」
「よし、宿を取って酒場へ行こう」

 ケインに手を引かれて歩き出す。
 わたしは口元をほころばせた。わたしはこれがとっても好き。ケインの大きな手にすっぽり自分の手が包まれると、心がとっても温かくなる。
 宿を取って酒場へ行くと、注目の的だ。客達の視線が一斉にこっちに向くのが分かる。さわさわという囁きが広がった。わたしはつい、ヒビの入った壁をじっと見つめてしまう。
 ケインがとっても大きいから目立つんだわ。ドアの上に額をゴツッとぶつけるのは、彼くらい、よね。

「何にいたしましょう?」

 テーブルに着くと、注文を取りにきたふくよかな酒場の女将さんが、愛想良く笑った。

「元気な子を産むには、どういったメニューがいいんだ?」

 ケインが大真面目にそんな事を言い出し、わたしは飛び上がりそうになった。
 ケイン! そこから離れて! 絶対誤解されるわ!

「あらあ? でしたら、栄養たっぷり? こちらなんかいかがでしょう?」

 ちらりと送られた、女将さんの意味ありげな視線が痛いわ。
 大きな体をゆすりながら、酒場の女将さんが立ち去ると、わたしはそろりと言った。

「あの、ケイン? まだ、子供は出来てないわ?」

 だって、何にもしていないんだもの。顔が熱い……

「ああ、それなら、心配は……いや、心配か? そうだよな。種族が違うから……だ、大丈夫だ。精一杯がんばるから、毎日やっていればちゃんと……」

 ひいぃ!

「ストップーぅうううう! まだ、まだだから!」
「うん、これからだな?」

 ケインににっこり笑われて、何も言えない。
 分かってない、分かってないわよね、これ……そして極めつけが……

「一緒にはいるか?」

 風呂に入る段になって、ケインにさらりとそう言われ、わたしは卒倒しそうになる。風呂は別料金で個室に用意してくれるので、一緒に入ろうと思えば入れるのだろうけれど……入りません! 敷居高すぎるわ!
 ケインが言う。

「ちっちゃい頃はくるくる洗ってやったろ?」
「子供と大人は違いますぅ!」

 え? もしかしてまだ子供扱い? それはそれで嫌なんだけど……

「んー……俺達は服を着る習慣なんてないから、裸で普通なんだが……人間は恥ずかしがるんだよなぁ……何でだ?」

 ケインに不思議そうにそう言われ、はたと気が付く。裸が普通?

「あのう……」
「ん?」
「ケインは、その……女性の裸に欲情しない、の?」
「しない」

 きっぱり言われて、青ざめた。え? じゃあ、わたしの裸を見ても何にも感じない?

「いや? シーラの裸は綺麗だから見惚れる」

 それは、嬉しい、けど……あら、じゃあ、性交はどんな風に?

「人間にあわせるけど?」
「でも、欲情はしないのよね?」
「ドラゴン同士の場合は好いた相手のフェロモンで欲情する。そういった匂いを出すんだよ。俺はシーラが好きだから、多分、シーラの体液に反応すると思う」

 た……は? え? 体液?

「人間は欲情すると濡れるだろ? キスも気持ちいいって感じるのも同じかな? だからあれで……」
「ちょ、ストップストープ! それ以上言わなくていいわ!」

 さらっと言わないでぇ!

「心配いらないよ、大丈夫」

 ケインは満面の笑みだけど、まともに顔を見られないわ。体液に反応、体液に反応、体液に反応……ぐるぐる頭の中をその言葉がリフレインしてしまう。
 そして、どうなったかと言うと……

「ん……や……」

 夜、当然のようにベッドに押し倒されたのだけれど、ケインの舌の愛撫が凄い。逃れようとしても、足を大きく広げられたまま、がっちり押さえられて動けそうにない。淫靡な水音が静かな室内に響くから、羞恥と快楽でどうにかなりそうである。

 体液に反応ってこういうこと、なの?
 初めては痛いって聞いていたけれど違った。確かに痛いのだけれど、彼を受け入れてもなお快楽の感覚の方が強い。ケインが動くたんびにベッドがきしむ。思ったよりも激しくて、ベッドが壊れそう……

「痛い、か?」

 ケインに囁かれて、わたしは首を横に振る。振るしかない。これだと痛いどころか……駄目、駄目、またいっちゃう……

「痛いようなら、フェロモンをもう少し出そう……」
「フェロモン?」
「催淫剤みたいなもの? シーラは人間だから、分泌を少なくしているけれど……痛いようならもう少し多めに……体格がかなり違うから、痛みも相当だと思うし……」

 気遣わしげなケインの顔が直ぐ目の前にある。わたしは目を剥いた。
 ちょ、待って待って待って! 催淫剤! それでこんなに……駄目ぇ!
 ケインの動きがいっそう激しくなって、あっという間に達してしまう。

 気が付けば朝日が上っていた。
 わたし、いつの間に寝たんだろう?

 ケインに抱きしめられて目を覚ましたわたしは、チュンチュンという鳥達の声をぼんやり聞いていた。何回抱かれたか分からない。ケインの体力は底なしだと思う。
 あそこがちょっと痛い、けど……
 シーラと寝言でケインに名前を呼ばれ、何だかこそばゆい。何とも言えない幸福感に包まれる。ごそりと潜りこめば、大きな腕に抱きしめ直された。

 愛しているわ……
 微笑みながらわたしはそう呟いた。

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感想 13

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みんなの感想(13件)

みきざと瀬璃

番外編、ありがとうございます!

まずはシーラ編!
めっちゃケインに振り回されるのですね。天然なドラゴンさんめ…
…って、まだ致してないのにマタニティドレス送られるなんて、乙女心は「えーっっ??((照))」
でも全てを受け入れるいい女!!
おめでとう!


本編内に入ってないお話が気になります(飢)

2022.04.04 白乃いちじく

みきざと瀬璃 様
感想ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ

>番外編、ありがとうございます!
 いえいえ、どういたしましてw

>めっちゃケインに振り回されるのですね。天然なドラゴンさんめ…
 ええ、恥ずかしげもなくぐいぐい来ますねw(`-ω-´)キリッ✧

>乙女心は「えーっっ??((照))」
 で、す、よ、ねwww めっちゃ恥ずかしかったでしょうwww

>でも全てを受け入れるいい女!!
 (´ー`*)ウンウン ケインにとってはこれが結婚w 結婚式……は、後付けかな?w

>本編内に入ってないお話が気になります(飢)
 あ……Σ(|||▽||| ) しまったwww あっちはもうちょっと作り込まないと駄目なので、時間的に……(逃亡)w

解除
温泉ジャンボプリン

朝チュンご馳走さまでーす\(^o^)/ヤッタネwww

人間はドラゴンに比べたら脆弱で、短い時間しか生きられないかもしれないけれど、繁殖力だけならドラゴン以上だと思う。

心配する事は1つ!
どこに二人の愛の巣をかまえて子育てするかだと思う(真剣)
二人で安心して過ごせる場所と子育て出来る場所、大事よ(๑•̀д•́๑)キリッw

二人の間に多くの子供が産まれ、孫が産まれ、沢山の家族に囲まれて、未来までお幸せにっ(*`・ω・)ゞw

2022.04.04 白乃いちじく

温泉ジャンボプリン 様
こちらにも感想ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ

>朝チュンご馳走さまでーす\(^o^)/ヤッタネwww
 二人のいちゃこらを書きました(`-ω-´)キリッ✧

>繁殖力だけならドラゴン以上だと思う。
 うん、まぁ、そうねーwww 出来たらすっげー喜ぶw

>二人で安心して過ごせる場所と子育て出来る場所、大事よ(๑•̀д•́๑)キリッw
 ちなみに長編を書いていた頃は、とーってもいい場所に居を構えることが出来ましたw(詳しい場所は秘密w)

>二人の間に多くの子供が産まれ、孫が産まれ、沢山の家族に囲まれて、未来までお幸せにっ
 なる予定ーw がんばれーw 子供可愛いぞーwww(ケインは大の子供好きwww)

解除
せち
2022.03.25 せち

子供できるかなー?
続きがあれば楽しみにしています(*´▽`*)

2022.03.25 白乃いちじく

せち 様
感想ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ

>子供できるかなー?
 出来る予定ですヾ(*´∀`*)ノ ただ、もうちょっと先、かな?w

>続きがあれば楽しみにしています(*´▽`*)
 二人のイチャイチャ後日談を書きましょうねw

解除

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