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第五章 コウノトリと受胎告知
第百七十一話 どきどきウサギコスチューム(ハロウィンネタⅡ)
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翌日からセレスティナは収穫祭用の魔道具を設計し始めた。完全な遊びであるが、クラスメイト達に喜んで貰いたい一心である。
「煙を作って遊ぶのか?」
「煙のお化けを作るのよ」
シリウスの問いにセレスティナが楽しそうに笑う。食卓の前での会話だ。その様子を端から見ていたイザークが、セレスティナの手元を覗き込めば、やっぱりそこには頭が痛くなるような魔道数式がびっしりで、早々に退散した。
あの数と記号の羅列で、作ろうとしているのが煙だとどうして分かるんだ?
イザークの脳内にはそんな疑問しか湧かない。魔道数式を組み合わせ、魔法を発動させる魔工式をまったく理解出来ず、イザークは閉口する。
収穫祭が三日後と迫った休日の朝、オルモード公爵邸の朝食の場で、セレスティナは完成した魔道具をお披露目した。セレスティナがパイプ型の魔道具を掲げてみせる。
「ね、見て? 『お化けパイプ』よ? このパイプを吹くと、中から煙のお化けが出てくるの」
セレスティナがぷうっとパイプ型の魔道具を勢いよく吹くと、お化け型の白い煙がたくさん出てくる。お化け達の中心はピカピカ光っていて、なんとも楽しく心躍る光景だ。それらがふわりふわりと漂うように上へ昇っていく。シャーロットが目を輝かせた。
「うわぁ! おもしろーい!」
「これを収穫祭の仮装パーティーで希望者に配ろうと思うの」
セレスティナの提案にシャーロットは賛成する。
「あら、いいわね。これって、会場の飾りにもうってつけよ」
「でも、お化けスモークは数分で消えてしまうのよ?」
「皆遊びまくるから、きっと消えないわよ」
シャーロットがウィンクし、セレスティナはそうねと思い直す。パーティーの参加者達が代わる代わる遊べば、きっと会場の天井はぴかぴか光る煙のお化け達でいっぱいになるに違いない。
お化けパイプを手にしたジャネットが、イザークと一緒になってはしゃいだ。
「ほらほら、イザーク、見ろ見ろ! ゆっくり吹くと、お化けが大きくなるぞ!」
「おお、本当だ! 俺もやる!」
そう「お化けパイプ」はシャボン玉をイメージして作ったので、シャボン玉のようにゆっくり吹けば、大きなお化けの出来上がりだ。童心に返ったように「お化けパイプ」で遊ぶイザークとジャネットの二人を見て、セレスティナはくすくすと笑う。
学園の皆も同じように喜んでくれるといいのだけれど……
その様子を見守るシリウスの目はやはり糖蜜のように甘い。
午後、オルモード公爵邸にセレスティナ宛ての荷物が届いた。セレスティナが箱を開ければ、そこにあったのはフリルのたくさん付いたピンクのエプロンドレスだ。ふさふさのウサギ耳のカチューシャ付きである。
「セレスティナ様、これは?」
私室で箱の中身を確認し、困ったように固まっているセレスティナに妖蛇のペロが問う。
「これは、その……クジで特等を当ててしまって……」
もそもそと、セレスティナは事情を説明した。
そう、シャーロットと一緒に行ったランジェリーショップで、クジを引いたら何と、特等が当たってしまったのである。収穫祭が近いので、賞品は全て仮装ネタだった。引き当てたのはウサギをイメージした可愛いデザインの衣装で、試着するとシャーロットは似合う似合うと褒めてくれたが、なにぶん露出が高い。これを着て出歩くのは勇気がいる。
胸の辺りがきつかったので、それを理由に辞退しようとしたところ、サイズを直しますと店員に言われてしまい、断るに断れなくなってしまった。そのサイズ直しをした衣装が今目の前にある。ピラリと妖蛇のペロに衣装を広げてみせると、ショートケーキのようなドレスである。露出が高いという点を除けば、女の子が喜びそうな可愛らしいデザインだ。
「とっても可愛いですよ?」
「胸元が開いていて、人に見せるのが恥ずかしいの」
そう、恥ずかしい。スカートの丈もやたらと短くて、足を覆うのは白いガーターストッキングだ。何気にいろいろきわどいと思う。みんなは可愛い可愛いと褒めてくれるけれど……
「だったら、マスターにだけ見せたらどうですか?」
ペロにそう言われて、セレスティナは思案する。
シリウスにだけ……
「可愛い衣装ですし、マスターは喜ばれると思いますよ?」
喜ぶ……そう、かしら?
セレスティナは今一度甘いスイーツのような衣装に目を向ける。ピンクのピラピラとした衣装は、確かに可愛いと思う。胸の露出が気になるだけで……
――ティナは胸の大きさもチャームポイントなんだから、これくらい大丈夫よ。
シャーロットの言葉が耳に蘇り、もじもじする。
胸の大きさも魅力の一つだと言われても、セレスティナとしては実感出来なかった。大きすぎるのが逆に恥ずかしいからだ。注目されれば、痴女みたいだと言われているようで、いたたまれない。
やっぱり恥ずかしい……
どうしよう……
悩んだ結果、ベテランの侍女メリーに手伝って貰い、セレスティナは例の衣装を着てみることにする。衣装に似合う甘めの化粧を施すと、メリーは柔和な顔をほころばせ、とっても可愛らしいですよと褒めてくれた。鏡の中のセレスティナは、ウサギ耳の甘いスイーツのような女の子に変身だ。ピンクの唇にはたっぷりとグロスが塗られ、つやつやである。
「セレスティナ様、綺麗ですよ」
ペロがそう言って後押ししてくれた。
セレスティナはありがとうと口にし、他の人には見られないよう、研究室まで白いもこもこのコートを羽織ることにする。焼きたてのカボチャのパウンドケーキを載せたトレイを手に、セレスティナが研究室を訪れると、魔道具の調整をしているシリウスがいた。
大きな背にそっと近寄ると、セレスティナに気が付いたシリウスの顔に笑みが浮かびかけるも、その顔がふっと怪訝そうに曇った。
「……外出するのか?」
シリウスがそう口にし、セレスティナははたと気が付く。邸内でコートを着ているので、外出する予定なのかと訝ったようだ。セレスティナはさっと視線を逸らす。
「いえ、その……仮装用の衣装を着てみたのだけれど、似合うかどうか自信がなかったので、コートを着ているの。あ、後で見せるわ」
シリウスが笑った。
「君なら何を着ても似合うと思うがな。テラスへ行こうか?」
ちゅっと唇にキスをされ、ふわりと心が温かくなる。シリウスはセレスティナが菓子を焼くと、必ず研究室を出る。きちんと彼女が作ったケーキを味わいたいからだそう。
「今日は肌寒いわ。温室はどうかしら?」
温室のサロンはセレスティナのお気に入りの場所だ。セレスティナがそう提案すると、シリウスが了承する。カボチャの甘みだけで作ったパウンドケーキはシリウスの口に合ったようで、セレスティナはほっとする。切り分けたパウンドケーキをせっせとシリウスの口へ運んだ。
「暑くはないのか?」
ケーキを食べ終えたシリウスにそう問われ、セレスティナはもじもじ恥じらった。温室なので、確かにコートを着ていると暑い。暑いのだが……大胆すぎるドレスを身に着けて来たことを、少し後悔し始めてもいた。
「シリウス、あの……似合わなかったら似合わないと言ってね?」
小さな声でそう前置きして、セレスティナはするりとコートを脱ぐも、シリウスからはなんの反応もない。勇気を出してセレスティナが俯いていた顔をあげれば、真顔のシリウスがこちらを凝視していた。そう、真顔である。少し怖いくらいだ。
もしかして、気に入らない、とか?
すっと血の気が引いた。
「……それを王立魔道学園の仮装パーティーで着る気なのか?」
そう指摘され、ボンッとセレスティナの顔が上気する。
あぁ! 仮装用の衣装だって言ったから!
「い、いえ、違うわ! 二人っきりの時だけよ! これはシリウス専用なの!」
「私専用……」
「ほ、ほら! 胸元が開きすぎているから他の人に見せるのは恥ずかしいの! で、でも、可愛い衣装だから仕舞いっぱなしはもったいないってペロが! マスターにだけ見せればって! だから、その! ご、ごめんなさい! 気に入らないのなら捨てるわ!」
パニック寸前だ。やっぱり止めれば良かったと後悔しきりである。自分はシリウスに嫌われるのが何よりも怖い。半べそで脱いだコートを手に、その場から逃げ出そうとするも、シリウスに手を掴まれ押しとどめられた。そのままくいっと引っ張られて膝抱っこだ。
「大丈夫、似合っている」
声も仕草もいつも通り優しい。
「ただ、びっくりしたんだ。大勢の前にその姿をさらすのかと……」
優しく髪を撫でられ、セレスティナは身を縮めた。
「それは、無理、だわ……そもそも、これ、景品なの」
「景品……成る程な。もし、その格好でパーティーに参加されたら、男子学生を全員抹消しなければならないところだった」
シリウスの呟きはやはり物騒である。くいっと顎を持ち上げられ、もたらされた口付けは熱く官能的なもの……。服の上から乳房を鷲掴みにされて、セレスティナの体がびくりと震えた。セレスティナの柔らかな膨らみがゆっくりと形を変える。
「シリウス……」
「嫌、か?」
「だ、だって、誰かに見られたら……」
セレスティナが弱々しい声で抗議する。けれど、シリウスの手の動きは止まらない。耳を甘噛みされ、「きゃう」と声が漏れてしまう。楽しそうに笑われて、ますます縮こまった。
「本当、可愛いな……」
堅くなった胸の突起をつままれ、体がびくりと跳ねた。くりくりと指先で刺激され、じわりと体の芯が熱くなる。きゅっと震える手でシリウスの服を掴んだ。
「だ、め……最後までしたくなっちゃう、から……」
熱い吐息混じりにそう訴えて、はっとなる。かぁっと顔が熱くなった。ちょ……なんかとんでもない事言っちゃったわ!
「煙を作って遊ぶのか?」
「煙のお化けを作るのよ」
シリウスの問いにセレスティナが楽しそうに笑う。食卓の前での会話だ。その様子を端から見ていたイザークが、セレスティナの手元を覗き込めば、やっぱりそこには頭が痛くなるような魔道数式がびっしりで、早々に退散した。
あの数と記号の羅列で、作ろうとしているのが煙だとどうして分かるんだ?
イザークの脳内にはそんな疑問しか湧かない。魔道数式を組み合わせ、魔法を発動させる魔工式をまったく理解出来ず、イザークは閉口する。
収穫祭が三日後と迫った休日の朝、オルモード公爵邸の朝食の場で、セレスティナは完成した魔道具をお披露目した。セレスティナがパイプ型の魔道具を掲げてみせる。
「ね、見て? 『お化けパイプ』よ? このパイプを吹くと、中から煙のお化けが出てくるの」
セレスティナがぷうっとパイプ型の魔道具を勢いよく吹くと、お化け型の白い煙がたくさん出てくる。お化け達の中心はピカピカ光っていて、なんとも楽しく心躍る光景だ。それらがふわりふわりと漂うように上へ昇っていく。シャーロットが目を輝かせた。
「うわぁ! おもしろーい!」
「これを収穫祭の仮装パーティーで希望者に配ろうと思うの」
セレスティナの提案にシャーロットは賛成する。
「あら、いいわね。これって、会場の飾りにもうってつけよ」
「でも、お化けスモークは数分で消えてしまうのよ?」
「皆遊びまくるから、きっと消えないわよ」
シャーロットがウィンクし、セレスティナはそうねと思い直す。パーティーの参加者達が代わる代わる遊べば、きっと会場の天井はぴかぴか光る煙のお化け達でいっぱいになるに違いない。
お化けパイプを手にしたジャネットが、イザークと一緒になってはしゃいだ。
「ほらほら、イザーク、見ろ見ろ! ゆっくり吹くと、お化けが大きくなるぞ!」
「おお、本当だ! 俺もやる!」
そう「お化けパイプ」はシャボン玉をイメージして作ったので、シャボン玉のようにゆっくり吹けば、大きなお化けの出来上がりだ。童心に返ったように「お化けパイプ」で遊ぶイザークとジャネットの二人を見て、セレスティナはくすくすと笑う。
学園の皆も同じように喜んでくれるといいのだけれど……
その様子を見守るシリウスの目はやはり糖蜜のように甘い。
午後、オルモード公爵邸にセレスティナ宛ての荷物が届いた。セレスティナが箱を開ければ、そこにあったのはフリルのたくさん付いたピンクのエプロンドレスだ。ふさふさのウサギ耳のカチューシャ付きである。
「セレスティナ様、これは?」
私室で箱の中身を確認し、困ったように固まっているセレスティナに妖蛇のペロが問う。
「これは、その……クジで特等を当ててしまって……」
もそもそと、セレスティナは事情を説明した。
そう、シャーロットと一緒に行ったランジェリーショップで、クジを引いたら何と、特等が当たってしまったのである。収穫祭が近いので、賞品は全て仮装ネタだった。引き当てたのはウサギをイメージした可愛いデザインの衣装で、試着するとシャーロットは似合う似合うと褒めてくれたが、なにぶん露出が高い。これを着て出歩くのは勇気がいる。
胸の辺りがきつかったので、それを理由に辞退しようとしたところ、サイズを直しますと店員に言われてしまい、断るに断れなくなってしまった。そのサイズ直しをした衣装が今目の前にある。ピラリと妖蛇のペロに衣装を広げてみせると、ショートケーキのようなドレスである。露出が高いという点を除けば、女の子が喜びそうな可愛らしいデザインだ。
「とっても可愛いですよ?」
「胸元が開いていて、人に見せるのが恥ずかしいの」
そう、恥ずかしい。スカートの丈もやたらと短くて、足を覆うのは白いガーターストッキングだ。何気にいろいろきわどいと思う。みんなは可愛い可愛いと褒めてくれるけれど……
「だったら、マスターにだけ見せたらどうですか?」
ペロにそう言われて、セレスティナは思案する。
シリウスにだけ……
「可愛い衣装ですし、マスターは喜ばれると思いますよ?」
喜ぶ……そう、かしら?
セレスティナは今一度甘いスイーツのような衣装に目を向ける。ピンクのピラピラとした衣装は、確かに可愛いと思う。胸の露出が気になるだけで……
――ティナは胸の大きさもチャームポイントなんだから、これくらい大丈夫よ。
シャーロットの言葉が耳に蘇り、もじもじする。
胸の大きさも魅力の一つだと言われても、セレスティナとしては実感出来なかった。大きすぎるのが逆に恥ずかしいからだ。注目されれば、痴女みたいだと言われているようで、いたたまれない。
やっぱり恥ずかしい……
どうしよう……
悩んだ結果、ベテランの侍女メリーに手伝って貰い、セレスティナは例の衣装を着てみることにする。衣装に似合う甘めの化粧を施すと、メリーは柔和な顔をほころばせ、とっても可愛らしいですよと褒めてくれた。鏡の中のセレスティナは、ウサギ耳の甘いスイーツのような女の子に変身だ。ピンクの唇にはたっぷりとグロスが塗られ、つやつやである。
「セレスティナ様、綺麗ですよ」
ペロがそう言って後押ししてくれた。
セレスティナはありがとうと口にし、他の人には見られないよう、研究室まで白いもこもこのコートを羽織ることにする。焼きたてのカボチャのパウンドケーキを載せたトレイを手に、セレスティナが研究室を訪れると、魔道具の調整をしているシリウスがいた。
大きな背にそっと近寄ると、セレスティナに気が付いたシリウスの顔に笑みが浮かびかけるも、その顔がふっと怪訝そうに曇った。
「……外出するのか?」
シリウスがそう口にし、セレスティナははたと気が付く。邸内でコートを着ているので、外出する予定なのかと訝ったようだ。セレスティナはさっと視線を逸らす。
「いえ、その……仮装用の衣装を着てみたのだけれど、似合うかどうか自信がなかったので、コートを着ているの。あ、後で見せるわ」
シリウスが笑った。
「君なら何を着ても似合うと思うがな。テラスへ行こうか?」
ちゅっと唇にキスをされ、ふわりと心が温かくなる。シリウスはセレスティナが菓子を焼くと、必ず研究室を出る。きちんと彼女が作ったケーキを味わいたいからだそう。
「今日は肌寒いわ。温室はどうかしら?」
温室のサロンはセレスティナのお気に入りの場所だ。セレスティナがそう提案すると、シリウスが了承する。カボチャの甘みだけで作ったパウンドケーキはシリウスの口に合ったようで、セレスティナはほっとする。切り分けたパウンドケーキをせっせとシリウスの口へ運んだ。
「暑くはないのか?」
ケーキを食べ終えたシリウスにそう問われ、セレスティナはもじもじ恥じらった。温室なので、確かにコートを着ていると暑い。暑いのだが……大胆すぎるドレスを身に着けて来たことを、少し後悔し始めてもいた。
「シリウス、あの……似合わなかったら似合わないと言ってね?」
小さな声でそう前置きして、セレスティナはするりとコートを脱ぐも、シリウスからはなんの反応もない。勇気を出してセレスティナが俯いていた顔をあげれば、真顔のシリウスがこちらを凝視していた。そう、真顔である。少し怖いくらいだ。
もしかして、気に入らない、とか?
すっと血の気が引いた。
「……それを王立魔道学園の仮装パーティーで着る気なのか?」
そう指摘され、ボンッとセレスティナの顔が上気する。
あぁ! 仮装用の衣装だって言ったから!
「い、いえ、違うわ! 二人っきりの時だけよ! これはシリウス専用なの!」
「私専用……」
「ほ、ほら! 胸元が開きすぎているから他の人に見せるのは恥ずかしいの! で、でも、可愛い衣装だから仕舞いっぱなしはもったいないってペロが! マスターにだけ見せればって! だから、その! ご、ごめんなさい! 気に入らないのなら捨てるわ!」
パニック寸前だ。やっぱり止めれば良かったと後悔しきりである。自分はシリウスに嫌われるのが何よりも怖い。半べそで脱いだコートを手に、その場から逃げ出そうとするも、シリウスに手を掴まれ押しとどめられた。そのままくいっと引っ張られて膝抱っこだ。
「大丈夫、似合っている」
声も仕草もいつも通り優しい。
「ただ、びっくりしたんだ。大勢の前にその姿をさらすのかと……」
優しく髪を撫でられ、セレスティナは身を縮めた。
「それは、無理、だわ……そもそも、これ、景品なの」
「景品……成る程な。もし、その格好でパーティーに参加されたら、男子学生を全員抹消しなければならないところだった」
シリウスの呟きはやはり物騒である。くいっと顎を持ち上げられ、もたらされた口付けは熱く官能的なもの……。服の上から乳房を鷲掴みにされて、セレスティナの体がびくりと震えた。セレスティナの柔らかな膨らみがゆっくりと形を変える。
「シリウス……」
「嫌、か?」
「だ、だって、誰かに見られたら……」
セレスティナが弱々しい声で抗議する。けれど、シリウスの手の動きは止まらない。耳を甘噛みされ、「きゃう」と声が漏れてしまう。楽しそうに笑われて、ますます縮こまった。
「本当、可愛いな……」
堅くなった胸の突起をつままれ、体がびくりと跳ねた。くりくりと指先で刺激され、じわりと体の芯が熱くなる。きゅっと震える手でシリウスの服を掴んだ。
「だ、め……最後までしたくなっちゃう、から……」
熱い吐息混じりにそう訴えて、はっとなる。かぁっと顔が熱くなった。ちょ……なんかとんでもない事言っちゃったわ!
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