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第五章 コウノトリと受胎告知
第百七十九話 天使は天使でも……
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シリウスの大きな手がセレスティナの栗色の髪をさらりと梳く。優しい手つきについ身を寄せれば、額にキスだ。嬉しくてくすぐったい。シリウスの遠隔操作はその後も続き、セレスティナの視線はシリウスの手元に釘付けだ。
凄いわ、機密情報が次々引き出されて……シリウスに隠し事なんて無理ね。どんな防御もこうしてこじ開けてしまうもの。
ざわりと周囲が揺れた。
セレスティナが顔を上げれば、こちらへ向かって歩いてくるのはなんと、中央パネルに映し出されている授与者、バイロン・カーターである。肩までのバターブロンドにサングラスをかけた垂れ目の美男子だ。指輪に時計にネックレスと、そこここにキラキラ輝く装身具を身に着けているので、研究者というより、やっぱり人気歌手のよう。
「やあやあ、サインの希望は後にしてくれたまえ!」
周囲の視線を一身に集めつつ、バイロンが声高に言う。
「何しに来たのよ、バイロン!」
「はっ、はっ、はっ、今回は君に用はないよ」
軽い口調でバイロンが言う。
「君が僕の助手を辞退してしまったので、新たな助手を探しに来ただけさ。王立魔道学園はいいねぇ。人材の宝庫だ」
「新たな助手?」
「そう。オルモード公と同じ天才と言われているセレスティナ・オルモード公爵夫人を引き抜こうと思ってね。彼女に是非僕の助手をしてもらいたい、そう思って直談判に来たんだ」
バイロンはにっこり笑い、勝手にシリウスの隣に腰掛けた。
「こんにちは、オルモード公爵閣下。何度も面会を申し込んでも撥ね付けられるので、迷惑かとも思いましたが、こうして押しかけさせていただきました」
「迷惑だ」
「ははは、そうおっしゃらずに。あなたはどうして公爵夫人を狭い世界に閉じ込めようとするのですか? もったいないですよ。王立研究所で彼女の才を思う存分発揮させてやれば、巨万の富を得られると言うのに。宝の持ち腐れでは?」
バイロンは成り上がりの伯爵令息に過ぎない。なのに、こうして公爵であるシリウスを前にしても、バイロンはひるまなかった。チャラチャラとした軽薄さがあるのに、中々どうして図太い男である。国軍とのパイプラインが太いせいかもしれない。そこへ、エイダが食ってかかった。
「馬鹿言わないで! 彼女をあなたみたいなハイエナの餌食になんてさせるもんですか!」
バイロンがエイダの態度を鼻で笑う。
「焼きもちはみっともないよ?」
「焼いてなんかいないわよ! あんたにはとっくのとうに愛想が尽きているわ!」
セレスティナがちらりとシリウスに目を向けると、彼は指令機の操作に余念がない。ヒートアップするバイロンとエイダの争いなどそっちのけである。
動作がもの凄く早いわ……
シリウスの場合、怒れば怒るほど指令機を操作する動きが速くなる。これは、ええっと……相当怒っている? でも、一体何をしようとしているのかまでは分からない。
セレスティナがシリウスの動きに注目していると、ふっと王家から発信されている映像が切り替わった。授与式の筈が、エイダが研究開発する様子が流れ始め、ざわりと周囲が揺れる。
――やった、やったわ、成功よ!
――凄いじゃないか、エイダ! 新薬の完成だ!
エイダとバイロンのやり取りである。
「え? これ……」
消されたはずのデータじゃない、とエイダが呟き、バイロンがぽかんと口を開けた。流石に余裕の笑いは吹っ飛んでいる。新薬開発の様子が延々流れ、周囲のざわめきが更に大きくなる。なにせこれでは、新薬を開発したのがエイダだと丸わかりだ。
「な、なんでこれが!」
「王家を謀った罪は重いな?」
シリウスの声が響き、バイロンの肩がびくりと震える。
「い、いや、これは何かの間違い……」
「言い訳は結構。申し開きは陛下の御前でしろ」
シリウスの指示でハロルドが動き、彼の襟首をがっちりつかまえる。そのままずりずり引きずられ始めると、バイロンが焦った声を張り上げた。
「ま、待ってくれ、オルモード公! 私と手を組めば、莫大な利益が得られるぞ!」
「莫大な損失の間違いだろう?」
シリウスはそう言って取り合わない。にぃっと笑う顔はやはり嘲笑だ。ハロルドに引きずられ、「これは何かの間違いなんだぁああああああ!」というバイロンの叫び声が遠ざかっていく。
「えっと、何がどうなって……」
エイダがぼんやりと呟き、膝抱っこされているセレスティナはちらりとシリウスを見る。さらりと栗色の髪をすくシリウスの手つきは優しく、いつもと変わりない。
多分、シリウスの仕業、よね?
そろりとそんなことを考える。
王立研究所にあるデータバンクに侵入して、消去されたはずのデータをそこから引っ張りだし、なおかつ王家の放送システムを乗っ取って、彼の悪事を暴露した、ということかしら? けど、無断ハッキングも犯罪よ、シリウス?
心の中だけでセレスティナは突っ込んだ。口には出せない、言いたくない。どちらにせよ、証拠など欠片も残していないのだろうけれど……
「まぁ、悪事がおおっぴらになってめでたし、めでたし?」
その場を取り繕ったのがシャーロットだ。彼女も何となく何が起こったのか理解したようだが、やはり何も言わない。シリウスのやったことが犯罪だと分かっているからだろう。
「そーだな、うん。今度はアシュトン先生の授与式が流れるんじゃね?」
そう言ったのはイザークだ。
その言葉通り、エイダ・アシュトンの授与式が後日執り行われることとなる。どうしてこうなったのか、未だに理解出来ていない節があったが、彼女は自分の受賞を素直に喜んだ。王家の発信映像を乗っ取ってくれた方、ありがとう、とまで。
犯罪を暴いたのは表彰ものだが、その方法がいただけない。王家の放送システムを乗っ取ったハッカーを受賞者のエイダに称賛され、憲兵を含めた王室関係者は苦笑いだ。
「アシュトン先生は研究所には戻らないのね」
後日、シャーロットがそう口にする。焼きたてのアップルパイを美味しそうに頬張った。アンジェラもいて、こちらも何やら幸せそうだ。
「ええ、ここで教師の仕事を続けるそうよ」
「いいんじゃないかしら、貴族女性も働く時代が来ていると思うの」
アンジェラがふんわりと笑う。
「いやいや、俺は可愛いお嫁さんも良いと思うぞ、うん」
そう口を挟んだのは、ちゃっかり料理クラブに顔を出したジャン・ドラン辺境伯令息だ。アンジェラから焼きたてのアップルパイを振る舞われ、ご満悦である。
料理教室にギャースと鳴く怪鳥が現れてつつかれても、ヒーロースーツのカチコチ機能を利用し、へいっちゃらだった。妙なところで頭が回る。が、ジャンはこの後、怪鳥にがっしりつかまえられ、遠くの山に捨てられる運命であることを知らない。
◇◇◇
「先日、王家の放送システムを乗っ取ったのはシリウス、君かな?」
アルフレッド王太子がそう言った。茶を入れた侍女は下がらせ、王太子の執務室にはシリウスと二人っきりである。
「さあ、なんのことだ?」
茶を飲むシリウスは、いつものように優美でそつがない。
アルフレッドはため息をついた。
「もう少し自重してくれると嬉しいんだけどなぁ。王立研究所のデータバンクからデータを引っ張り出されたって、副所長のカーターが騒ぎまくって、結局、防衛システムの見直しになったよ。ま、システムを見直して、よりよいものになるのはいいことだけどさ」
「く、ふふ、見直し、ね……」
面白そうにシリウスが笑う。
「面倒だからいっそ、やりたいようにやらせて、放置してしまおうかと考える時もある」
「放置って……国軍の開発を野放しにするって事か?」
「そう。ははは、どんな結果になるか見物だな? おごり高ぶった人間の仕出かすことなど破滅と相場が決まっている。人類滅亡のスイッチを入れても、本当に全てを失うまで気が付かない。私は、そうだな……別次元へ逃げようか」
「おいおい……」
「子供達がいるから、ティナがいるから守っている。私からあれらを奪うな?」
「はいはい、肝に銘じておきますよ」
アルフレッドはふと思う。
子供の時は父親がいたから、父親への思慕があったからシリウスは踏み止まった。ハチャメチャな破壊魔なのに一線を越えないのは、引き止める存在があるから?
もし、シリウスが暴走したら……人類滅亡? ははは、まさかね。
アルフレッドは手にした紅茶を一口口に含み、ソファに腰掛けたシリウスをじっと見た。威風堂々とした体躯の貫禄ある美男子だ。
白銀の天使様、か……けれど、残念ながらシリウスには天使のような寛容さと包容力はないんだよなぁ。あえて例えるなら……
「時代の節目に審判の天使が現れるって本当かな」
つい、そんなことを口にし、シリウスの笑いを誘った。そう、人類を裁く審判の天使ならぴったりだと、そう思ったのだ。あれは恐ろしく不寛容だ。
「預言の書だな?」
「そう、その審判の天使が人類に鉄槌を振り下ろすと、世界が終わるらしい」
「そうならないように、注意しろ?」
はははとシリウスが笑う。
「はいはい、せいぜい品行方正に務めますよ」
シリウスの目がふっと傍の花瓶に向き、赤いスイートピーを一輪手に取った。
「花に興味が?」
「ティナが喜ぶかと」
「君の頭の中はいつだって彼女で一杯なんだな」
「ああ、私の全てだ」
ほころぶシリウスの顔は限りなく優しい。
「さて、失礼する。夕食は彼女と一緒に取りたい」
「花を用意させようか?」
「いや、結構。自分で用意する」
そう答えてシリウスは背を向けた。ティナの為にどんな花束を用意しようかと考えながら。
凄いわ、機密情報が次々引き出されて……シリウスに隠し事なんて無理ね。どんな防御もこうしてこじ開けてしまうもの。
ざわりと周囲が揺れた。
セレスティナが顔を上げれば、こちらへ向かって歩いてくるのはなんと、中央パネルに映し出されている授与者、バイロン・カーターである。肩までのバターブロンドにサングラスをかけた垂れ目の美男子だ。指輪に時計にネックレスと、そこここにキラキラ輝く装身具を身に着けているので、研究者というより、やっぱり人気歌手のよう。
「やあやあ、サインの希望は後にしてくれたまえ!」
周囲の視線を一身に集めつつ、バイロンが声高に言う。
「何しに来たのよ、バイロン!」
「はっ、はっ、はっ、今回は君に用はないよ」
軽い口調でバイロンが言う。
「君が僕の助手を辞退してしまったので、新たな助手を探しに来ただけさ。王立魔道学園はいいねぇ。人材の宝庫だ」
「新たな助手?」
「そう。オルモード公と同じ天才と言われているセレスティナ・オルモード公爵夫人を引き抜こうと思ってね。彼女に是非僕の助手をしてもらいたい、そう思って直談判に来たんだ」
バイロンはにっこり笑い、勝手にシリウスの隣に腰掛けた。
「こんにちは、オルモード公爵閣下。何度も面会を申し込んでも撥ね付けられるので、迷惑かとも思いましたが、こうして押しかけさせていただきました」
「迷惑だ」
「ははは、そうおっしゃらずに。あなたはどうして公爵夫人を狭い世界に閉じ込めようとするのですか? もったいないですよ。王立研究所で彼女の才を思う存分発揮させてやれば、巨万の富を得られると言うのに。宝の持ち腐れでは?」
バイロンは成り上がりの伯爵令息に過ぎない。なのに、こうして公爵であるシリウスを前にしても、バイロンはひるまなかった。チャラチャラとした軽薄さがあるのに、中々どうして図太い男である。国軍とのパイプラインが太いせいかもしれない。そこへ、エイダが食ってかかった。
「馬鹿言わないで! 彼女をあなたみたいなハイエナの餌食になんてさせるもんですか!」
バイロンがエイダの態度を鼻で笑う。
「焼きもちはみっともないよ?」
「焼いてなんかいないわよ! あんたにはとっくのとうに愛想が尽きているわ!」
セレスティナがちらりとシリウスに目を向けると、彼は指令機の操作に余念がない。ヒートアップするバイロンとエイダの争いなどそっちのけである。
動作がもの凄く早いわ……
シリウスの場合、怒れば怒るほど指令機を操作する動きが速くなる。これは、ええっと……相当怒っている? でも、一体何をしようとしているのかまでは分からない。
セレスティナがシリウスの動きに注目していると、ふっと王家から発信されている映像が切り替わった。授与式の筈が、エイダが研究開発する様子が流れ始め、ざわりと周囲が揺れる。
――やった、やったわ、成功よ!
――凄いじゃないか、エイダ! 新薬の完成だ!
エイダとバイロンのやり取りである。
「え? これ……」
消されたはずのデータじゃない、とエイダが呟き、バイロンがぽかんと口を開けた。流石に余裕の笑いは吹っ飛んでいる。新薬開発の様子が延々流れ、周囲のざわめきが更に大きくなる。なにせこれでは、新薬を開発したのがエイダだと丸わかりだ。
「な、なんでこれが!」
「王家を謀った罪は重いな?」
シリウスの声が響き、バイロンの肩がびくりと震える。
「い、いや、これは何かの間違い……」
「言い訳は結構。申し開きは陛下の御前でしろ」
シリウスの指示でハロルドが動き、彼の襟首をがっちりつかまえる。そのままずりずり引きずられ始めると、バイロンが焦った声を張り上げた。
「ま、待ってくれ、オルモード公! 私と手を組めば、莫大な利益が得られるぞ!」
「莫大な損失の間違いだろう?」
シリウスはそう言って取り合わない。にぃっと笑う顔はやはり嘲笑だ。ハロルドに引きずられ、「これは何かの間違いなんだぁああああああ!」というバイロンの叫び声が遠ざかっていく。
「えっと、何がどうなって……」
エイダがぼんやりと呟き、膝抱っこされているセレスティナはちらりとシリウスを見る。さらりと栗色の髪をすくシリウスの手つきは優しく、いつもと変わりない。
多分、シリウスの仕業、よね?
そろりとそんなことを考える。
王立研究所にあるデータバンクに侵入して、消去されたはずのデータをそこから引っ張りだし、なおかつ王家の放送システムを乗っ取って、彼の悪事を暴露した、ということかしら? けど、無断ハッキングも犯罪よ、シリウス?
心の中だけでセレスティナは突っ込んだ。口には出せない、言いたくない。どちらにせよ、証拠など欠片も残していないのだろうけれど……
「まぁ、悪事がおおっぴらになってめでたし、めでたし?」
その場を取り繕ったのがシャーロットだ。彼女も何となく何が起こったのか理解したようだが、やはり何も言わない。シリウスのやったことが犯罪だと分かっているからだろう。
「そーだな、うん。今度はアシュトン先生の授与式が流れるんじゃね?」
そう言ったのはイザークだ。
その言葉通り、エイダ・アシュトンの授与式が後日執り行われることとなる。どうしてこうなったのか、未だに理解出来ていない節があったが、彼女は自分の受賞を素直に喜んだ。王家の発信映像を乗っ取ってくれた方、ありがとう、とまで。
犯罪を暴いたのは表彰ものだが、その方法がいただけない。王家の放送システムを乗っ取ったハッカーを受賞者のエイダに称賛され、憲兵を含めた王室関係者は苦笑いだ。
「アシュトン先生は研究所には戻らないのね」
後日、シャーロットがそう口にする。焼きたてのアップルパイを美味しそうに頬張った。アンジェラもいて、こちらも何やら幸せそうだ。
「ええ、ここで教師の仕事を続けるそうよ」
「いいんじゃないかしら、貴族女性も働く時代が来ていると思うの」
アンジェラがふんわりと笑う。
「いやいや、俺は可愛いお嫁さんも良いと思うぞ、うん」
そう口を挟んだのは、ちゃっかり料理クラブに顔を出したジャン・ドラン辺境伯令息だ。アンジェラから焼きたてのアップルパイを振る舞われ、ご満悦である。
料理教室にギャースと鳴く怪鳥が現れてつつかれても、ヒーロースーツのカチコチ機能を利用し、へいっちゃらだった。妙なところで頭が回る。が、ジャンはこの後、怪鳥にがっしりつかまえられ、遠くの山に捨てられる運命であることを知らない。
◇◇◇
「先日、王家の放送システムを乗っ取ったのはシリウス、君かな?」
アルフレッド王太子がそう言った。茶を入れた侍女は下がらせ、王太子の執務室にはシリウスと二人っきりである。
「さあ、なんのことだ?」
茶を飲むシリウスは、いつものように優美でそつがない。
アルフレッドはため息をついた。
「もう少し自重してくれると嬉しいんだけどなぁ。王立研究所のデータバンクからデータを引っ張り出されたって、副所長のカーターが騒ぎまくって、結局、防衛システムの見直しになったよ。ま、システムを見直して、よりよいものになるのはいいことだけどさ」
「く、ふふ、見直し、ね……」
面白そうにシリウスが笑う。
「面倒だからいっそ、やりたいようにやらせて、放置してしまおうかと考える時もある」
「放置って……国軍の開発を野放しにするって事か?」
「そう。ははは、どんな結果になるか見物だな? おごり高ぶった人間の仕出かすことなど破滅と相場が決まっている。人類滅亡のスイッチを入れても、本当に全てを失うまで気が付かない。私は、そうだな……別次元へ逃げようか」
「おいおい……」
「子供達がいるから、ティナがいるから守っている。私からあれらを奪うな?」
「はいはい、肝に銘じておきますよ」
アルフレッドはふと思う。
子供の時は父親がいたから、父親への思慕があったからシリウスは踏み止まった。ハチャメチャな破壊魔なのに一線を越えないのは、引き止める存在があるから?
もし、シリウスが暴走したら……人類滅亡? ははは、まさかね。
アルフレッドは手にした紅茶を一口口に含み、ソファに腰掛けたシリウスをじっと見た。威風堂々とした体躯の貫禄ある美男子だ。
白銀の天使様、か……けれど、残念ながらシリウスには天使のような寛容さと包容力はないんだよなぁ。あえて例えるなら……
「時代の節目に審判の天使が現れるって本当かな」
つい、そんなことを口にし、シリウスの笑いを誘った。そう、人類を裁く審判の天使ならぴったりだと、そう思ったのだ。あれは恐ろしく不寛容だ。
「預言の書だな?」
「そう、その審判の天使が人類に鉄槌を振り下ろすと、世界が終わるらしい」
「そうならないように、注意しろ?」
はははとシリウスが笑う。
「はいはい、せいぜい品行方正に務めますよ」
シリウスの目がふっと傍の花瓶に向き、赤いスイートピーを一輪手に取った。
「花に興味が?」
「ティナが喜ぶかと」
「君の頭の中はいつだって彼女で一杯なんだな」
「ああ、私の全てだ」
ほころぶシリウスの顔は限りなく優しい。
「さて、失礼する。夕食は彼女と一緒に取りたい」
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「いや、結構。自分で用意する」
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