突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ

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第三章 めざすは運動会!

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ぐっすり寝た次の日の朝。
 早起きしたわたしはいつもより早く家を出ることにした。
「えと……蒼太くんも学校に用事があるの?」
「いや別に。俺も早く準備終わったし、もう出ようかなと思って」
「そうなんだ。へへ」
 偶然にも蒼太くんももう学校に行くというので、わたしは蒼太くんとマンションの廊下を歩いている。
 いつもより二十分くらい早い。
 それだけなのに、なんだかとても爽やかで朝がキラキラと感じる。
「……」
「……」
 二人でエレベーターに乗ると、また妙な沈黙になった。
 そういえば。
 わたし前に蒼太くんに聞かれた事にまだ答えてなかったんだった。
「あ、あの、蒼太くん」
 わたしは今あるだけの勇気をかき集めて、蒼太くんに声をかける。
 蒼太くんの方を見ることは出来ないけど、「なに?」といういつもの声が聞こえた。
「わ、わたしの身長のことなんだけど、えっと、実は百六十センチですっっ!」
 思い切りすぎて、エレベーターの室内で変な宣言をしてしまった。
 まだドキドキしてる。
――でも、言えた……!
 今さら急に身長の話をされても、蒼太くんだって困るはずだ。
 あのときは身体測定の次の日だったから、その話をしてくれただけだも思うし……!
 それでも、すごくスッキリした。
 そうすると、今度は蒼太くんの反応が気になる。
「俺は百五十三センチだから、あと七センチか。来年には追いつけるな」
 蒼太くんは真剣な顔で頷いている。
「で、でも、来年になったらわたしもまた大きくなってるかも……」
「それよりも伸びればいいだろ。兄ちゃんは小六の時に伸びたっていってたし。見てろよ、市山。来年は抜くからな」
「蒼太くん……」
 ポーンという音がして、エレベーターはエントランスについた。
 身長の話、前はあんなにイヤだと思っていたのに、蒼太くんが明るくそう言ってくれただけで、楽になった気がする。
 まだ恥ずかしい気持ちはある。きっと学校の誰よりも高いから。
「市山。早く歩かないと遅れるぞ。深緑(みろく)が待ってるんだろ」
「あ、うん、急ぐ!」
 蒼太くんに言われて、私はハッとして駆け出した。
 そうだ、委員長が先にいるかもしれない。
 早朝の通学路はやっぱり朝露でどこかキラキラしていて、空気もずっと綺麗。
 胸のつかえも取れた気がして、足もずっと軽い。
……あれ、そういえば蒼太くんって、委員長さんと知り合いなのかな。
 今、『深緑(みろく)』って名前で呼んでたよね……?
 不思議に思いながら、わたしは急ぐ。時間に遅れちゃう!

「えっと確か、こっちの方……」
 蒼太くんと玄関の近くで別れたわたしは、校舎をぐるりと回って花壇のある場所を目指していた。
 角を曲がると、先の方に深緑色のランドセルを背負った男の子が見える。
 あの後ろ姿は委員長さんだ。
「おはようございます……!」
 朝の空気をいっぱいに吸い込みながら、わたしはあいさつをした。
「ああ、おはようございます。ええと、市山さんでしたよね。はやいですね」
 わたしよりも早く来ていたのに、委員長さんはそう言って柔らかく笑っている。
 とっても優しそうな人とペアで本当に良かった。
 同じクラスからももうひとり園芸委員になった子がいるけど、喋ったことのない男の子だったからどうしようかと思っていたのだ。
 結愛ちゃんと一緒の保健委員になりたかったのにジャンケンで負けたらしく、その事をずっと言っていた。
「水やりの時は、このホースを使います。ジョウロでもいいですが、時間がかかってしまうので」
「なるほど……」
「水のやりすぎにも注意です。今日のように晴れた日は乾くのも早いので、たっぷりあげて大丈夫。はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
 わたしは委員長さんからシャワーノズルがついたホースを受け取り、新緑がキレイな花壇から水をあげていく。
 赤、白、黄色にそれからピンク。縁だけが白くてギザギザした赤いものもある。
 大きな花びらがかわいいチューリップはハラハラと花びらが落ち始めて、もうすぐ見頃は終わりそうだ。
「チューリップの色って綺麗だなあ」
 わたしはお水をあげながら、あらためてその花をじっと観察する。
 こんなにカラフルでかわいいのに、季節が終わると散ってしまうのは寂しいな。
「チューリップはその色ごとに花言葉があるんですよ」
「花言葉ですか?」
「はい。赤だと『家族への感謝』。ピンクは『誠実な愛』、それから黄色は『失恋』といった意味があります」
「へえ、そうなんですね……!」
 同じように咲いているのに、正反対の意味があったりするんだなあ。
 花言葉を知ったことで、前よりもチューリップが身近な存在に思えてきた気がする。
 まだもう少しだけ、長く咲いていられますように。
 そう願いを込めて、わたしはチューリップたちにお水をあげた。
「ええと、こっちはヘチマかな」
 今度は隣の青々とした葉に水をあげる。
「はい。四年生の学習用とは別に余った種をここにもまいています」
 委員長さんはひとつひとつ教えてくれる。
 まだ小さな苗や花のない花壇も多いけど、これがここから花になると思うと楽しみ……!
「キレイな花が咲きますように」
 そう祈りながら一生懸命水やりをして、なんとか一面の花壇とプランターの分は終わった。
「市山さん、ありがとうございます」
 委員長はなぜかとても嬉しそうだ。
「園芸委員の仕事、イヤイヤやる人も多くて……雑な水やりをされるとこの子たちが弱ってしまうので、市山さんのような人が委員になってくれて嬉しいです」
「そ、そんな……こちらこそ……?」
 急にお礼を言われて、気が動転して変な返しをしてしまった。
 そんな風に言ってもらえると思っていなくて、変にむずがゆい。
 ……委員長さん、本当に植物が好きなんだなぁ。
 花壇を見て嬉しそうにしている委員長さんを見て、わたしはそんなことを思う。
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