44 / 53
番外編置き場
推しは誰?
しおりを挟む○ミラ、スピカ、ベラトリクスの女子会
○アークツルス視点
○時系列は卒業パーティー後、ミラとスピカは2年生のある日の週末
○深夜のテンションで書いたのでわちゃわちゃしてますが、折角なのであげておきます……_φ(・_・
ーーーーーーーーーーーー
『――ねえねえベラさん、実際のところ、推しキャラって誰だったんですか?』
『そういうスピカは誰が好みだったの?』
ここはロットナー侯爵家の1室。
中から聞こえて来た会話に、スピカを迎えに来たアークツルスはぴたりと足を止めた。
ここまで自らを案内してくれたメイドは下がらせ、ひとまず扉の前で深呼吸をする。
"推し"という意味は全く分からないが、"好み"の意味は分かる。
『わたしですかぁー』と呑気な声が部屋から聞こえてくる。それは確かに愛する婚約者のものだ。アークツルスはその先が気になって仕方がない。
突然迎えに来て驚かせようと思ったが、反対に驚かされているこの現状――とりあえず彼はこのまま息を潜めることにした。
『全員攻略しましたけど、一番萌えたのはベイド先生のシチュエーションですね。禁断の教師もの……最高でした! というか色気がすごかったです』
『そうなのね』
「っ!」
思わず扉をぎゅうと握りしめてしまったアークツルスは、声にならない声をあげて、スピカの回答に驚いた。婚約者は教師のベイドが好みだったらしい。
扉を1枚隔てた向こう側では、きゃいきゃいと楽しそうな声が上がっているのに、とても遠い世界のように感じる。
確か今日はスピカと共にミラもいるはずだ。気の置けない仲とも言えるこの3人組は、あけすけとこんな話をするようになっていたようだ。
「アーク、何をしているんだ、というか、どうしてここに……」
アークツルスが入室を躊躇っているところに、声がかかる。
怪訝そうな顔をした親友のアルデバランがそこに立っていて、彼の右手には赤い薔薇のミニブーケが握られている。
彼もまた、婚約者を驚かせようと来たらしい。
「……アラン、静かに……!」
口の前で人差し指を立て、ジェスチャーをしながら小声でそう伝えると、アルデバランは素直にそれに従い、アークツルスの隣へとやって来た。
『それでそれで、ベラさんの好みは? やっぱり歳上ですか? もしかしてイケオジ枠のジーク様⁉︎』
この話はまだ続くらしく、スピカは楽しそうにベラトリクスに話を振っている。
彼女たちは、まさかこうして男2人が扉の前で盗み聞きをしているとは夢にも思わないだろう。
アークツルスは、アルデバランが硬直したのを一瞥すると、さらに耳をそばだてた。
『わたくしは……わんこ枠のメラクがお気に入りだったわ』
『ええっ、ベラさままさかの歳下好きなんですか!』
『意外ですね……! あ、でも言われてみればお似合いのような』
『ふふ、わたくし、可愛いものが好きなのよねぇ』
ベラトリクス嬢は可愛い物好き、という情報を無意識にインプットしてしまう自身の癖に辟易しながらもアークツルスがアルデバランを見遣ると、彼はくるりと踵を返そうとしていた。
ショックだったらしい。
『それで、ミラはどうなの?』
ベラトリクスは今度はミラに話を振っている。
なんだか嫌な予感がしてアークツルスは後ろを振り返る。
「兄上、どちらに行かれるんですか?」
――やはり、レグルスもこの場に現れたようだった。
彼は虚な目でこの場を去ろうとする兄を引き留め、不思議そうな顔でアークツルスの近くへとやって来る。
『私ですか……私は乙女ゲームはやったことがないので……』
『そういえばそうだったわね。ほらでも、好みってあるじゃない』
『ミラは唯一既婚者なんだしねぇ』
「!?」
"既婚者"という単語に驚いたのはアークツルスだけではない。もちろんレグルスもしっかりと固まってしまっている。彼女はもちろん未婚だ。なのに何故既婚者という単語が飛び出してくるのだろう。
そろそろ突撃しなくては、こちらの心臓が持たないかもしれない。
『――あ。同い年の幼馴染……でしたね』
『なるほど~! 幼馴染、確かにミラにぴったり!』
『そういうことね。……さっきからなんだか廊下が騒がしい気がするわ。わたくし少し見てくるわね』
想像がつかない会話の応酬に耐えかねたアークツルスがそう思った矢先に、がちゃりと扉が開いてしまった。
「――あらまあ、皆さまお揃いで……」
ベラトリクスの手によって扉が開けられた時、なんとなく横並びに整列していた彼らは三者三様の様相でそれぞれの婚約者を眺める。
「べ、ベラ……君はその、やっぱり他に好きな男が」
「アラン。やっぱり、とはどういうことですの? 先ほどの会話を聞いていらしたのね」
慌てた様子のアルデバランは婚約者のベラトリクスに詰め寄るように迫っているが、逆に迫られているように見えるのはどうしてだろう。
「あ、レオ! 来てくれたの。ありがとう!」
「う……うん。さっきのは……いや、いいか」
「?」
ミラが笑顔でレグルスに駆け寄ったため、彼はもう聞くことをやめたらしい。既婚者という言葉はかなり衝撃的で、ある意味キャパオーバーしたのではないだろうか。
「アーク様、もしかして聞いてた……?」
「ーーううん。何も聞いてないよ」
恐る恐るといった顔で自分を見上げるスピカに、そういつもの笑顔で答えてしまうアークツルスは、初めて自分の二面性が疎ましく思えてしまったのだった。
「……ええっと、アークツルス君。君はもう卒業したよね……?」
「ええ。ですが、先生から学びたいことがありまして」
ーー数日後の学園では、既に卒業したはずのアークツルスが教師のベイドを訪ねていたという。
57
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。