モブなのに巻き込まれています ~王子の胃袋を掴んだらしい~

ミズメ

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番外編置き場

裏庭のシャウラ その3【お知らせあり】

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「年が明けたら卒業かあ~……」

 裏庭にひとり佇むシャウラは、いつも根元に腰かけていた木に触れながら、白い吐息と共にそう呟いた。

 今日は年末最後の登校日。
 長めの冬季休暇が終わると、その後はもう卒業だ。

 冬になり、外で過ごすことは格段に減った。
 その事を物足りなく思うのは、きっとこの寂しい景色のせいだ。

 実っていた野菜も、華やかに咲き誇っていた花々も、鮮やかな芝生も、冬になれば、その全てが色を失う。
 モノトーンの世界が、寂しいだけだ。

「……最近、カストルさんとお話してないなあ」

 同じクラスなのだから、教室で話せばいいだけなのが、この裏庭でふたりで過ごす時間は、シャウラにとってなんだか特別だったのだ。

 カストルは寡黙で、言葉は少ないけれど。
 喋り続けるシャウラの話はしっかりと聞いていて、たまに相槌を打ってくれたりもして。

 彼の領地がぶどうの名産地だという話も聞き、ぶどうやワインの話で盛り上がったりもした。
 ただ、寒くなって外に出る機会が減ると、全くと言っていいほど接点がなくなってしまったのだ。

(……盛り上がったって思っていたのは私だけなのかも。あああ、よく考えたら、勝手にすごく盛り上がって、領地に遊びに行きたいなんて口走っちゃったかも……! もしかして、それで避けられてる……? 厚かましかったから?)

 そう思い至ると、途端に心臓が騒がしいほどに痛くなった。
 そういえば、彼の態度が変になったのはそれからだったかもしれない。

 末端の男爵令嬢の私なんかが、軽率にも由緒正しい伯爵家にお邪魔したいだなんて、馬鹿なことを言ったから。

 シャウラがその話をしたのは秋頃だった。でもそれ以降、そのことが話題になる事はなく、季節がひとつ終わってしまった。

 そう考え始めると、シャウラの思考は止まらなくなった。
 嫌われてしまったかもと思うと、苦しくなる。

「うう~っ、何これ……!」

 たまらなくなって、シャウラは木に抱きついた。
 こうしていると、幾分か落ち着く気がする。

 木にくっついて深呼吸を繰り返すシャウラの耳に届いたのは、聞き焦がれていた、低い声だった。

「……何をしているんだ? 虫の真似か?」

 目を閉じていたシャウラは、その声を聞いてびくりと身を震わせた。
 ーーカストルさんだ。
 戸惑っているように聞こえるその声の主は、振り向かずとも分かる。

(あああ、どうしてよりによってこんな所を見られちゃうんだろ……! ますます嫌われちゃう)

「シャウラ? どうかしたのか?」
「ひっっ……! どうもしてません……自然の息吹を感じていました」

 名前を呼ばれたシャウラは、観念して振り向いた。
 どうしようもない言い訳をしながら顔をあげると、予想外に優しく微笑むカストルの姿がそこにある。

「ははっ、相変わらず訳が分からないな」
「うう……。カ、カストルさんはどうしてここに? 寒いですし、皆さんもう出発しているのでは?」

 ぱたぱたと制服のスカートを払いながら、シャウラは急いで話を変えることにした。
 授業は終わり、沢山の馬車が校門の前に並んでいる。

 その混雑が終わったら、辻馬車でも拾って領地に戻ろうと思っていたシャウラは、ここで時間を潰していたのだ。

「君を探していたんだ。教室に姿が無かったから」
「え……?」
「話があって……その、うちの領地に来たいと言っていただろう? 冬季休暇中は俺も領地に戻るから、それで……遊びに、来ないかと誘おうと思って」

 カストルの空色の瞳は、真っ直ぐにシャウラを捉えている。
 じわりと頬が赤い気がするが、冬の冷気のせいかもしれない。

「えっ、あの、私、てっきり変なことを言ったから嫌われたのかと……」
「領地のぶどう畑が見たい、だったか。確かにそんな事を言われたのは初めてだったが……嫌いになんてなっていない」

 ぱくぱくとしながら、シャウラは何とか言葉を紡ぐ。
 顔が熱い。さっきまであんなに寒かったのに。今は身体の真ん中から沸き起こる熱が、爆発しそうだ。

「い、行きます! ぶどう畑の土も調べたいし、特産のジュースも飲みたいです。何より、ぶどう畑が並ぶ様子を見たいです……!」

 カストルに駆け寄ったシャウラは、彼を見上げてそう熱弁した。また変な事を言っているかもしれないが、それでもいいのだ。

「分かった。休暇中にシャウラの領地まで迎えに行くから、準備をしておいてくれ」
「は、はい……! 待ってます!」

 殺風景だった裏庭の風景が、2人の周囲だけ色付いたように、シャウラには見えた。



ーーーーーーーーーーーーーー
あれ、シャウラの話まだ終わらなかった……_(:3」z)_

おはようございます、ミズメです。
番外編更新と共に、お知らせです。

この度、この作品の小さな街編から王都編が、書籍化検討中となりました。
正式決定後は該当部分を11/23ごろに非公開にします。
読み直すなら今です……!
連載中から沢山の感想と応援ありがとうございました。皆様のおかげです*\(^o^)/*

ついでにお知らせですが、「義妹に婚約者を奪われた~」や「追放された悪役令嬢は~」などなど他作品もお暇なときに覗いてみてくださいませ。
ではまた、詳細は近況ボードでお知らせします!


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