魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第84話 魔法少女と社長令嬢

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 「ひゃっはーですわ! 私は怪人ハルカ......と言いますわ! 異名はえっと......<社長令嬢>!! 私と戦いなさい!」


 平日の昼下がり。

 本日もとある平和な町の公園で、善と悪の壮絶な戦いが繰り広げられようとしていた。

 よくまぁ、夏の炎天下の中でもやるもんだ。


 本日の怪人は、やたらと身なりの良さを感じる美少女である。


 翡翠色の瞳は宝石のように光り輝いていて、美しい金色の髪は肩の辺りで編んでいる、所謂おさげという髪型であった。

 年の頃合いは女子中学生といったところ。白のワンピースに麦わら帽子。少女の白い肌は日焼け対策として、クリームが塗られている。

 線の細い両手両足はどう見ても怪人には見えない。海辺を駆ける元気な少女という印象が強い。


 「「イッー!!」」


 そんな少女の両サイドには、いつも通り、全身黒タイツ姿の下っ端戦闘員が二人居る。

 三人のポジション的に、その可憐な少女がセンターポジションなので、何かの見間違いということもありえない。

 この少女、マジで怪人らしい。


 「「「......。」」」


 さすがの魔法少女もすぐには名乗り口上を返せない。困惑するばかりだ。

 まだ下っ端戦闘員に人質的な役割でそこに居るのならわかる。

 でも目の前の美少女は縛られてないし、なんならこっちを威嚇するように構えている。

 意味がわからない。

 マジカルイエローが両手で“T”の字を作った。


 「タイム」


 とのことである。

 下っ端戦闘員のうち、説教する方の中年が「やっぱり駄目か」的な感じで、面倒くさそうに頭を掻いていたが、普通に駄目だ。

 マジカルピンクが中年タイツに説明を求める。


 「あの、これはどういうことです?」

 「その、なんだ、端的に話すとだな、この子は社長の娘で、魔法少女と戦うことに憧れていたんだよ。で、今日、戦いに来たってわけだ」

 「全然説明になってません。なんで疑問が増えてくのですか」

 「か、怪人って......どう見ても普通の女の子じゃない」

 「というか、社長の娘さんってマジ?」


 中年タイツは隣に立っているワンピースを纏った美少女を見やる。

 その美少女は両手でワンピースの端を掴んで軽くお辞儀しながら自己紹介する。


 「はじめまして。王上おうかみ 春香と申しますわ。父は第二怪位のワーストキングの娘ですわ。異名は<社長令嬢>ですわ」

 「「「マジすか......」」」


 まさか秘密結社<ジョーカーズ>の第二怪位の怪人ワーストキングに娘が居たとは。

 というか、苗字。まさかこんなことで第二怪位の苗字を知ることになるとは。

 また異名もツッコミたい。社長令嬢は異名というか肩書だ。

 春香は続ける。


 「以前より、あなた方魔法少女に憧れておりまして......。ファンクラブにも所属しておりますわ」

 「おい、仮にも怪人と言い張る令嬢が魔法少女のファンクラブに入っているって言ったぞ」


 言ってること滅茶苦茶な自称怪人に、魔法少女たちは戸惑いを隠せない。

 ちなみに魔法少女<マジカラーズ>にはファンクラブがある。勝手に民間人の間で立ち上げられたもので、魔法少女たちには何の益ももたらしていない。

 マジカルピンクが苦笑しながら言う。


 「え、えっと、王上さん?」

 「ハルカと呼んでくださいまし」


 「あ、はい。ハルカさん、なぜ私たちと戦いたいのですか? その、どう見てもハルカさんは普通の女子中学生にしか見えないのですが......」

 「ふふ、よくぞ聞いてくださいました。下っ端」

 「あ、はい」


 “下っ端”と呼ばれて反応したのは若手タイツの方。

 若手タイツはどこからかタブレット取り出して、それを自身の胸の前で持ち上げて、そこに映された画面を魔法少女たちに見せる。

 そこに映されたのは、“王上 春香の功績”のタイトルを持つ表紙である。

 ハルカは画面をスライドさせながら説明する。


 「こちらを見てくださいまし。私、王上 春香はこれまでに乗馬、フェンシング、陸上、水泳、剣道、ライフル射撃、アーチェリーなど数多くの競技を総嘗めしておりますの」


 タブレットの画面には、ハルカが金メダルを取って表彰台の上に立っている写真が次々と映し出されていった。

 魔法少女は自分たちは何を見せつけられているのだろうと思った。


 「もちろん、王上家は文武両道を掲げておりまして、成績も優秀だと自負しておりますわ。全国模試は常に一位。IQは180を超えておりますわ。ちなみに扱える言語は八カ国。今はポルトガル語を勉強中ですわ」


 タブレットの画面には、ハルカが外国で外国人と楽しげに会話している写真が映し出されていた。

 魔法少女は自分たちは何を見せつけられているのだろうと思った。


 ハルカは一通り説明を終えた後、結論を言い放った。


 「このように、優秀な私は魔法少女の相手も務まるのではないか、と考えておりまして」

 「いや務まらねぇーよ」


 マジカルイエロー、もう黙っていられずにツッコむ。


 「さっきからなんなの?! 高スペックなのはわかったけど、怪人として魔法少女と戦いたい?! 馬鹿にしてんのか?!」

 「ま、まぁまぁ。落ち着こうよ」

 「あのね、あなたが憧れるほど良いものじゃないのよ? 私たちは毎回戦っては負けて説教食らってるの」

 「......。」


 中年タイツ、マジカルイブルーの物言いにツッコもうか迷ったが、このままでは埒が明かないので無視する。

 好きで説教している訳ではないのに云々言いたかったが、グッと堪えた中年である。

 ハルカは胸の前に両手を組んで、瞳を輝かせながら言う。


 「何を仰るのですか! あなたたちは戦って負けても、この町の平和を守るため、敵に頭を下げている立派な方たちではないですか! 私、感動しましたわ!」

 「よし、喧嘩売ってるのはよくわかったわ!」

 「ちょ、イエロー! 落ち着いて! 相手一般人!」

 「な、なんかやりにくいわね、今日の怪人」

 「先輩、どうします?」

 「う、うーん、社長ワーストキングの命令だからなぁ。戦わずに帰るってのも報告しづらいし......」


 これは善と悪の壮絶な戦いを記す物語。

 時として、怪人の娘が魔法少女と戦うことを記す物語でもあった。

 「ごっほん! では気を取り直して......私は怪人ハルカと言いますわ! 異名は<社長令嬢>!! 私と戦いなさい!」

 「できるかー!!」

 続く。
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