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【本編】
風邪を引きました
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◇
『僕、先輩のことが好きです』
『先輩のこと食べちゃいたい……“抱きたい”ってことですよ』
会社の飲み会の日、恐らく襲ってしまったであろう後輩の小野くんに、食事に誘われ、そのまま飲みに誘われた後、抱きしめられて何度もキスをされた上で告白された。
可愛い可愛い会社の後輩で、現在営業も一緒に回ることが多い小野くん。
子犬のように従順にあたしの仕事についてきては、重い荷物を持ってくれたり取引先のお偉いさんに気に入られてお菓子をもらって喜んでいる小野くん。
そんな小野くんは、あたしより少しだけ身長が低いけど、スーツ越しではわからない空手で鍛え上げた逞しい身体で、あたしをかんたんに抱き寄せ何度も何度もキスをした。
しかも舌を絡める超ディープなやつだ。
しかもしかも、記憶にはないけどすでに身体の関係まで持ってしまっている…
なんかもう順序とか諸々おかしすぎて、どこをどうツッコめば良いのかわからない。
そんな小野くんとのアレコレに完全にキャパオーバーになったあたしは、最近いろいろやらかしすぎだと思う。
「……やってしまった…39度って……ケホッ」
昨日家に帰ってきた後、小野くんからの返信にしばらく呆然としていたあたしは、まだ少し肌寒い部屋の中、自分のくしゃみで我に返った。
階下が駐車場ということで、オールシーズン部屋が涼しいか寒いくらいのこの部屋は、冷え性のあたしにとっては結構堪える環境で、温かいルームソックスやもこもこカーディガンが常に必要な場所なのだ。
とりあえず身体を温めようと、ケトルでお湯を沸かし始めてから熱いシャワーを浴びようとしたら、お湯と水を間違えて冷水を浴びてしまった。
なんとか熱いシャワーに切り替えて体を温めるも、風呂上がりにホットゆず茶を飲んで湯冷めしないようにしようと思ったのに、実はケトルに水を入れただけでスイッチを入れてないことが判明。
そして、ケトルでお湯が沸くのを待っていたあたしは、髪を乾かしていない状態でうたた寝をしてしまい、見事に風邪をひいてしまったのである。
……なんとも情けない話だ。
「ありえな……ゲホッ、あー…なんか、喉も痛くなってきたかも……」
会社に連絡すると美鈴さんが出て、挨拶をした時点で状況を察知し「今日は会社に来なくて良し。そんで、週末もゆっくり休んで体調を整えること!」と言われ、電話を一方的に切られてしまった。
声を出すのも辛かったから、非常にありがたい限りである。
今日は金曜日。
土日は休みだから、ゆっくり休めば週明け普通に仕事に行けるだろう。
「風邪……いつぶりだろ。あ、薬……いいや、今は動くの辛いし、ちょっと寝てからにしよう……」
風邪だけのせいなのか、考え事をし過ぎた知恵熱も含まれているのか……
「小野、くん……今日は別の人に、仕事教えてもらうのかな……」
なんとなくもやもやした気持ちを抱きながらも、おでこに貼った冷えピタの心地良さに少しずつうとうとし始め、あたしは意識が遠のいていった。
◇
――――ポーン、ピンポーン……―――――
「……ん、ぁれ?」
……気のせいかな?玄関のチャイムの音が聞こえる?
―――ピンポン、ピンポーン……―――――
〈コンコン〉
『先輩、大丈夫ですか?』
「??!!……っ、小野くん??」
来客にも驚いたけど、その来客が予想外の人物でさらに驚く。
ずっと寝ていたせいか、まだ身体は熱いけどさっきよりは辛くない。
待たせてはいけないと慌てて玄関のドアを開けるも、開けてから自分がすっぴんで髪の毛も寝起きでぼさぼさであることを思い出し、一瞬小野くんと目が合ったけどそのままバタンっとドアを閉めてしまった。
『え?ちょっ、あの……先輩??』
「えっと、今すっぴんだし……寝起きで髪も…ケホッ」
『ふふっ、そんなことですか。僕は全然気にしませんよ?』
こっちは気にするんですよっ!!
『それに、先輩の寝起きの姿見るの、初めてじゃないし……』
「あ……」
そうだ。小野くんにはあのホテルの一件で寝起きもすっぴんもばっちり見られてるんだった。
一度見られるも二度見られるも、そう変わらないか……
自分にそう言い聞かせるように開き直り、おずおずと玄関のドアを開ける。
そこにはビニール袋を持ったスーツ姿の小野くんがいた。
「思ったより元気そうで良かったです。……中に入っても良いですか?栄養のあるモノ作ろうと思っていろいろ買ってきちゃいました」
買ってくるだけじゃなくて“作る”だと……??!!
相変わらずなんてデキ過ぎた男の子なんだっ!!
〈ぐぅぅ~~~~きゅるるるぅぅぅぅぅぅ~~~~〉
「……」
「……ふふっ、ちょうどお腹も空いてるみたいですね。ちょっと台所かりますよ。先輩はゆっくり休んでてください☆」
「……はい」
あたしはどこまで小野くんに恥ずかしい姿を見せれば気が済むんだろうか……
むしろ、小野くんには恥ずかしいトコロを全部見られてるから、これ以上恥ずかしがる必要ないんじゃないか??
まだ少しぼーっとする思考で、“小野くんだから良いか”と開き直る。
こんな感じで、あたしは無意識に少しずつ小野くんがそばにいることを受け入れ始めていた。
『僕、先輩のことが好きです』
『先輩のこと食べちゃいたい……“抱きたい”ってことですよ』
会社の飲み会の日、恐らく襲ってしまったであろう後輩の小野くんに、食事に誘われ、そのまま飲みに誘われた後、抱きしめられて何度もキスをされた上で告白された。
可愛い可愛い会社の後輩で、現在営業も一緒に回ることが多い小野くん。
子犬のように従順にあたしの仕事についてきては、重い荷物を持ってくれたり取引先のお偉いさんに気に入られてお菓子をもらって喜んでいる小野くん。
そんな小野くんは、あたしより少しだけ身長が低いけど、スーツ越しではわからない空手で鍛え上げた逞しい身体で、あたしをかんたんに抱き寄せ何度も何度もキスをした。
しかも舌を絡める超ディープなやつだ。
しかもしかも、記憶にはないけどすでに身体の関係まで持ってしまっている…
なんかもう順序とか諸々おかしすぎて、どこをどうツッコめば良いのかわからない。
そんな小野くんとのアレコレに完全にキャパオーバーになったあたしは、最近いろいろやらかしすぎだと思う。
「……やってしまった…39度って……ケホッ」
昨日家に帰ってきた後、小野くんからの返信にしばらく呆然としていたあたしは、まだ少し肌寒い部屋の中、自分のくしゃみで我に返った。
階下が駐車場ということで、オールシーズン部屋が涼しいか寒いくらいのこの部屋は、冷え性のあたしにとっては結構堪える環境で、温かいルームソックスやもこもこカーディガンが常に必要な場所なのだ。
とりあえず身体を温めようと、ケトルでお湯を沸かし始めてから熱いシャワーを浴びようとしたら、お湯と水を間違えて冷水を浴びてしまった。
なんとか熱いシャワーに切り替えて体を温めるも、風呂上がりにホットゆず茶を飲んで湯冷めしないようにしようと思ったのに、実はケトルに水を入れただけでスイッチを入れてないことが判明。
そして、ケトルでお湯が沸くのを待っていたあたしは、髪を乾かしていない状態でうたた寝をしてしまい、見事に風邪をひいてしまったのである。
……なんとも情けない話だ。
「ありえな……ゲホッ、あー…なんか、喉も痛くなってきたかも……」
会社に連絡すると美鈴さんが出て、挨拶をした時点で状況を察知し「今日は会社に来なくて良し。そんで、週末もゆっくり休んで体調を整えること!」と言われ、電話を一方的に切られてしまった。
声を出すのも辛かったから、非常にありがたい限りである。
今日は金曜日。
土日は休みだから、ゆっくり休めば週明け普通に仕事に行けるだろう。
「風邪……いつぶりだろ。あ、薬……いいや、今は動くの辛いし、ちょっと寝てからにしよう……」
風邪だけのせいなのか、考え事をし過ぎた知恵熱も含まれているのか……
「小野、くん……今日は別の人に、仕事教えてもらうのかな……」
なんとなくもやもやした気持ちを抱きながらも、おでこに貼った冷えピタの心地良さに少しずつうとうとし始め、あたしは意識が遠のいていった。
◇
――――ポーン、ピンポーン……―――――
「……ん、ぁれ?」
……気のせいかな?玄関のチャイムの音が聞こえる?
―――ピンポン、ピンポーン……―――――
〈コンコン〉
『先輩、大丈夫ですか?』
「??!!……っ、小野くん??」
来客にも驚いたけど、その来客が予想外の人物でさらに驚く。
ずっと寝ていたせいか、まだ身体は熱いけどさっきよりは辛くない。
待たせてはいけないと慌てて玄関のドアを開けるも、開けてから自分がすっぴんで髪の毛も寝起きでぼさぼさであることを思い出し、一瞬小野くんと目が合ったけどそのままバタンっとドアを閉めてしまった。
『え?ちょっ、あの……先輩??』
「えっと、今すっぴんだし……寝起きで髪も…ケホッ」
『ふふっ、そんなことですか。僕は全然気にしませんよ?』
こっちは気にするんですよっ!!
『それに、先輩の寝起きの姿見るの、初めてじゃないし……』
「あ……」
そうだ。小野くんにはあのホテルの一件で寝起きもすっぴんもばっちり見られてるんだった。
一度見られるも二度見られるも、そう変わらないか……
自分にそう言い聞かせるように開き直り、おずおずと玄関のドアを開ける。
そこにはビニール袋を持ったスーツ姿の小野くんがいた。
「思ったより元気そうで良かったです。……中に入っても良いですか?栄養のあるモノ作ろうと思っていろいろ買ってきちゃいました」
買ってくるだけじゃなくて“作る”だと……??!!
相変わらずなんてデキ過ぎた男の子なんだっ!!
〈ぐぅぅ~~~~きゅるるるぅぅぅぅぅぅ~~~~〉
「……」
「……ふふっ、ちょうどお腹も空いてるみたいですね。ちょっと台所かりますよ。先輩はゆっくり休んでてください☆」
「……はい」
あたしはどこまで小野くんに恥ずかしい姿を見せれば気が済むんだろうか……
むしろ、小野くんには恥ずかしいトコロを全部見られてるから、これ以上恥ずかしがる必要ないんじゃないか??
まだ少しぼーっとする思考で、“小野くんだから良いか”と開き直る。
こんな感じで、あたしは無意識に少しずつ小野くんがそばにいることを受け入れ始めていた。
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