失声の歌

涼雅

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3日目

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真夜中の夜の色が広がっていた

仕事を終え、空を見上げれば昼間の青なんてどこにも無い

黒に限りなく近い色の空には大きな月が浮かんでいる

淡く光るそれは夜空に浮かんでいるのが不自然なくらいに、白かった

今日も月光に照らされた綺麗な茶髪の彼に会いに行く

今日で、最後なんだ

羊たちに励まされた昼間、考えはまとまっている

伝えたいことを上手く紡げるかは分からないけど。

白い月をまた見上げて駆け出す

いま、どんな歌を歌っているのだろうか

考えるだけでわくわくしてくる

だけど、自然と軽くなる足取りも、会場が近づくほどに重くなる

今日で最後だ

最後なんだと実感してしまうから

別れが、寂しくて苦しい

舞台がすぐそばまで見えてきた

不意に足が止まってしまう

なんだか、泣きそうだ

視界が滲み出した時、優しい歌声が空気をふるわせた

月が、輝いた

重い足も、進みたくないと思う弱い心も、また彼に救われる

会いに行くんだ。

白い月の下で、眩しいくらいに輝く彼に。
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