生活魔法は万能です

１７９ 久しぶりの

　翌日からルキアスは第二階層に通い始めた。銃を腰だめで撃つ練習と実益を兼ねてオークを狩ろうと言うのだ。練習に使うのはライフルのため、弾丸の調達に支障を来さないよう、できる限り少ない獲物で利益を上げたい。
　問題はどうやって見付けるか。それとこの森の中でゴブリンやコボルトの襲撃を如何に往なすか。必然的に『鏡』を使った警戒の練習も兼ねることになる。
　細長い『鏡』を張って森を進む。木の傍は歩かない。『鏡』が木にぶつかれば面倒だ。

（何だか静かだな……）

　久しぶりの独りでの探索がそう感じさせるのかも知れない。ザネクと一緒に探索していても会話は多くない。周囲を警戒しなければならないため、歩いている間は必要最小限を話すだけでほぼ皆無と言って良い。だから独りか二人かで違いがあるとするなら足音くらいのものだ。ところがその足音の差以上に静かに感じている。
　無自覚の心細さであった。

　不意に後で鳴子代わりの『鏡』が割れた。ルキアスは即座に振り向いて銃を向ける。ゴブリンだ。すかさず引き金を引く。弾丸は予め装填しているので引き金を引くだけで発射される。
　発射音と共に弾丸が飛んで行く。斜め上に外れた。ゴブリンから距離を取りながらリロード。銃の向きを感覚で微調整して引き金を引く。弾丸は至近距離まで迫っていたゴブリンの眉間を貫いた。
　ルキアスは倒れたゴブリンはひとまずそのままに、他のゴブリンが居ないか周囲を耳で探る。目だけでは森の木に遮られて判らない場所が多いのだ。それらしい物音はしない。どうやらこのゴブリンは単独だったようだ。

（ふぅ……）

　息を一つ吐いてからゴブリンの魔石を回収する。
　回収してから気付いた。ゴブリンの魔石を売っても弾丸の六発分くらいにしかならないのだ。今回は二発で片付いたから良かったものの、外す回数が多ければ赤字だ。
　そして第二階層はオークよりゴブリンやコボルトの方が圧倒的に多い。

（ん？　もしかしたらこれって収支が悪いんじゃ……）

　オークを倒せれば一発逆転とばかりに収益が上がるが、遭遇するのがゴブリンばかりだとかなり厳しい。

（無駄撃ちできないよ！）

　ルキアスはゴブリンと戦ったことで自分の見込みの甘さに戦慄した。