生活魔法は万能です

浜柔

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352 残念だったな

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 宝箱から出たのは皮鎧だった。そう、ルキアスが望んでいた物だ。だが身に着ける物は身体に合わなければ使えない。ある程度のサイズの調整が出来るし、着方を工夫することでそれなりに融通を利かせることもできる。それでも致命的にサイズが合わなければどうにもならない。

「ルキアス、残念だったな」
「こう大きすぎたらね……」

 ルキアスは宝箱から皮鎧が出るのを三度見たが、二つは致命的にサイズが合わず、一つは予備にするのが精々の第一〇階層レベルの品だった。
 ただ、望みの品が出ないのはデナン達も似たようなものだ。彼らが望んでいるのは第五〇階層レベルの装備で、妥協しても第四〇階層レベル。しかし宝箱から出る殆どは第三〇階層レベル以下なのだ。その上、ボス討伐者を斟酌することもない。
 だからルキアスもがっかりしこそすれ、彼らを羨む気持ちさえ起きない。

「最後に出てくれりゃ、様になったんだがなぁ」
「しょうがないよ。宝箱っていつもこんな感じだから」

 ルキアスが今まで自力で当たりを引いたと言えるのは第三階層で出たアダマントくらいのものだろう。第五階層での座標表示の魔道具も物的には当たりだが、魔道具を買った後だったから気分的に外れだ。第三階層で神薬はヨーコに教えて貰ったので自力ではない。

(やっぱり集めても手間と見合わないかな)

 第七階層までは宝箱狙いをしていたルキアスだが、殆どが外れにしか思えない物ばかりだったせいで宝箱探しそのものへのワクワク感が薄れ、それに伴って自然と止めてしまっていた。ここでまた副産物的とは言え宝箱狙いを繰り返したのは、それが無為との印象を強めただけだった。

「まあな。で、ルキアスはこの一ヶ月が役に立ったか?」
「そうだね……、ぼちぼちかな……」

 デナン達との約束の一ヶ月は経った。パーティーでの連携に関しては、ルキアス自身は殆ど戦闘の始めに決まり決まった動きをするだけだった。皆の動きは見られても、自ら実践する機会は多くなかったのだ。体力作りの方が役に立ったかも知れない程だ。

「ぼちぼちか! でもそうかもな。俺らの方が得るものが多かったかも知れん」

 デナン達は結局四人で続けるらしい。『傘』を強化する方が人を入れるよりも確実との目算が立ったことが大きいと言う。
 それはそれとしてルキアスにも意味のある一ヶ月だったことに違いはない。

「今までありがとう」
「こっちこそだ」

 ルキアスはデナンと、そしてパーティーの皆と握手して第一〇階層の探索を終えた。
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